チョコエッグ

鈴音

貰えるだけありがたいと思え

今日は2月14日…そう!バレンタインである。


私は今日この日を楽しみにしてきた。仲のいい友人との非恋愛宣言を裏切って彼女を作り、順調に仲を深め、今日、この日を迎えた!あの人とはとても仲のいい親友のような関係だが、きっとチョコはくれる!


そう思いながらいつも通り授業は終わっていった。周りの奴らは、やれ俺は何個貰っただ彼女が手作りしてくれたさだなんてゴミみてーな話をしている。俺が裏切ったあいつも何でか学校で1番の美人と付き合ってなんか急にイケメンになったしモテモテでチョコ貰いまくりだし。どこで差がついたんだろう。


俺はそっと涙を拭いながら、放課後の風に当たろうと屋上に向かった。


屋上で吹く風は、少し冷たくて、俺の涙を乾かしてくれた。ぼおっともう傾き始めている夕日を眺め、明日は晴れるかなー。雪積もったらやだなー。なんて考えていると、屋上のドアが勢いよくあいた。


振り返ると、彼女がいた。


探したよ。なんて、言いながら近づき、見事な包装のチョコを手渡してくれた。


…俺はこの時、生まれてきた意味を知った。大量の涙と共に、母に、父に、世界に、そして彼女に感謝をした。


開けて、食べていいかを聞いて、彼女が頷いてくれたところで、ゆっくりと包みを開いていく。


中に入っていたのは、市販の〇みっこぐらしのチョコエッグだった。


彼女の顔を見ようと、ゆっくり首を持ち上げる。すると、彼女はいたずらそうな顔で笑い、あっかんべーをしながら走り去っていった。


だが、これでも彼女がくれたチョコなんだ。そう思いながら、1口齧って、中のおまけを確認する。


何かなー、ぺんぎんがいいなー。


軽い現実逃避をしながら、少ししょっぱくて、やけに美味しいチョコを味わいつつ、中身を確認すると、そこには紙切れが入っていた。


4つ折りにされたそれの本文には


「ドッキリ大成功!そのチョコエッグは私の自作だよ!美味しく食べてね!」


なんて、書いてあった。


俺は、どんどんしょっぱくなるチョコを最後のひとかけらまで味わって、冷たい2月の風を浴びていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チョコエッグ 鈴音 @mesolem

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ