第26話 双子の神⑥
「ロイガーさんは昔大きな戦いに巻き込まれたのだそうです。詳しくは判りませんが、意に沿わない戦いだったと。そもそも戦うべきではなかったという意味でもあるみたいです」
太古、旧神と旧支配者の覇権を掛けた戦いがありも旧支配者側は破れて様々な場所や次元に封印されたと言われている。ロイガーとツァールがこの場所から動けないのは、その所為だと。しかし、ロイガーは戦いたくなかったというのか。旧支配者側も一枚岩ではなかったという事だろうか。
「ハスターという方の元で戦って敗れたのだと。それは壮絶な長い長い戦いだったと。戦況は拮抗していたけれど最終的には破れてしまったのだそうです。但し、それは元々そう決まっていたとも」
最初から勝敗が決まっていたのなら、なぜ戦わなければならなかったのか。神々の考えは人間には理解できないのかも知れない。
「そんな話はどうでもいい。結局ロイガーとコンタクトが取れて、その力の一端でも借りることが可能なのか?」
早瀬課長が焦れだして結論を急ごうとする。彼の立場では、その一点のみが大切なのだ。
「そんなことは無理だと思います。ロイガーさんたちは自分を信望している方たちに気まぐれに手を貸すようなことはあっても、逆に誰かがロイガーさんたちを利用しようとしても手は貸していただけないかと」
「それでは意味が無いじゃないか」
「早瀬さん、あなた達の都合だけで世の中は回ってはいないのですよ」
火野に窘められて早瀬は黙り込む。
「それで、他には何かなかったのか」
早瀬が瞳に続きを促す。
「はい。ロイガーさんはツァールさんと一緒に封印されてからずっとここに居るらしいのですが、やはりここから出て宇宙を飛び回りたいのだそうです。宇宙の隅々まで自由に飛び回るのが本来の姿なのだと。もう長くここに封印されているので飛び方を忘れそうだと」
意に沿わない戦いに敗れて自由に飛び回ることが出来なくなった、という意味では被害者だとでもいうのだろうか。
「ただ、ここからが問題なのですが、封印が解かれる日が近い、とも」
そこにいた全員が「えっ?」という顔になった。その中にはエ=ポウも含まれている。
「なんだと、ロイガーとツァールの封印が近々に解かれると言うのか?」
真っ先に立ち直った早瀬が問う。
「多分そんなことを。ただ近い、という感覚が人間のそれと同じかどうかが判りません」
なるほど人間にとっては数千年でもロイガーたちにとっては近いと感じている、というようなことか。
「それは近いと言えるのか?」
「判りません。そのあたりはどうしても理解できない感覚なのだと思います」
トウチョ=トウチョ人の悲願はロイガーとツァールの封印を解くことだ。その結果が何を齎すのかは判らないが眷属としての使命なのだろう。それが近い、となると悲願の成就が近いということだ。エ=ポウは黙って聞いているが、内心はほくそ笑んでいる。
「いつか解かれるにしてもロイガーたちの『近い』が人間にとっては遠い未来だということを祈るしかないな」
「それにしてもロイガーたちは人間に対して友好的なのですか?」
いままで黙って聞いていた岡本浩太が問う。浩太にとってロイガーやツァールの封印が解かれることは避けたいし寧ろ封印を強化したいくらいだ。ただ人間に対して友好的なのであれば少しは話が変わってくる可能性もある。綾野祐介からはその辺りを見極められたらいいいね、と言われていた。
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