第25話 双子の神⑤
「そういうことなのですね」
不意に瞳が呟いた。どういうことだ?
「瞳君、そういうこと、とは?」
「ロイガーさんはロイガーさんであってツァールさんでもある、ということです」
「もうちょっと判り易く説明してくれないか?」
「ロイガーさんはツァールさんでもある、としか言いようがありません」
「それは人間でいう二重人格とかそういうことなのか?」
「いいえ、全然違います。ロイガーさんとツァールさんは双子の神なのです。ロイガーさんとツァールさんは重なって存在している、と言うべきでしょうか」
「重なって存在しいている?」
「そうです。見えているのは確かにロイガーさんなのですが、そこに同時にツァールさんも存在している、ということです」
双子の神とはそういうことなのか。二重人格との差異が判らない。同時に存在するだけで、例えば別次元にあるものが重なっている、というようなものなのかも知れない。
「それで、いずれにしてもそのロイガーやツァールとはコンタクトできたのか?」
焦った口調で早瀬が問う。
「コンタクトというか、ロイガーさんとツァールさんの意志はなんとなくですが伝わってきました」
「何を問うたんだ?」
「お二方の存在の意義と地球における人間の存在の意義です。なぜお二方はここに封印されているのか、それを今どう考えているのか、どう感じているのか、というようなことと、人間についてどう思っているのか、どう感じているのか、というようなことを取り留めもなくお聞きしたのですが、応えは有りませんでした」
「一つも答えてくれなかっただと?」
「そうですね、いくつかの答えは伝わってきましたが、明確なものではありません」
「それを判る範囲で話してくれないか」
瞳は少し考えてから、
「判りました、私の言葉で伝えられるかどうかは判りませんが、私が感じたことでよければお話ししましょう、いいですよね、火野さん」
「瞳がよければ、俺が許すも許さないもない。自分の判断を信じればいい」
「私もお聞きしたいので、ぜひ」
エ=ポウも重ねて言う。自分以外にロイガーとコンタクトできた初めての人間なのだ、自らの特権を奪われた気になっているのだろうか、少し表情が硬い。数千年生きていても人間のような嫉妬心は消えないのだろうか。
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