第16話 アラオザル⑥

 次の日。五人は昨日と同じ道中を東に向かった。昨日停めた場所で今日も車を停める。そして、本来行くべき方向とは逆に向かう。道中、数台の車が付いてきていたが、向かう方向から来ている車は無い。それはそのはずだ、戻る道が行く道なのだから。この違和感を感じられた者だけがアラオザルに辿り着けるのだ。


 五人は昨日と同じようにアラオザルへの入り口に着いた。昨日居た見張りとは別の二人が立っている。こちらを見付けると笑顔で話しかけてきた。どうやら昨日の見張りに色々と聞いているようだ。


 今日の見張りにもキラキラと綺麗なイミテーションの宝石を差し出すと、すごく嬉しそうにして五人を通してくれた。今のところ後ろから付いてきている者たちは居ない。もしここまで来れたとしても通してもらえないだろう。だが見張りのトウチョ=トウチョ人を排除してまでも入り込んでくる輩は居るかもしれない。五人は前にも後ろにも注意を払いながら森の中を進む。


 入り口から後は分かれ道の連続だった。曲がりくねっている上に行っても行っても同じような森が続いているので正確に奥へと進めているのかが判らない。いくつか行き止まりの道を引き返しているとトウチョ=トウチョ人が現れた。昨日の見張りの一人だ。どうやら今日来ると言っていたので迎えに来てくれたらしい。お礼にイミテーションを渡すと喜んでいた。そこからは迷うことなく奥へ奥へと進めた。


 真知子が辛うじて通じるタイ語崩れのような言語で話をすると、長老の所まで連れて行ってくれるらしい。話が上手く行きすぎる気もするがトウチョ=トウチョ人が騙すようなことはしないだろうとついて行くことにした。


 森の中を1時間か2時間、但し時間の感覚が無くなっているのと携帯や時計などが止ってしまっている状況なので正確な時間は判らなかったが、やっと森を抜けることが出来た。


 そこにはかなり広い空間が広がっていた。木々が天井の代わりに全体的に広がっているので太陽はあまり差し込まないのだが灯が付いている。当然電気などあるはずがないので何かの魔法だろうか。目が慣れないと少し薄暗く感じるのだが、ずっと森の中を歩いてきたのでなんとか普通に歩くことができた。


 アラオザルの街はすり鉢状になった火山の火口の斜面のようなところに広がっている。街の中に入って居ることは坂を降っていくことなのだ。螺旋状に道が降っていて下の方はかなりの深さまで続いているようだ。


 下の方を見るとぼぉっと柔らかい光で包まれている。逆のその所為で底がどこまであるのか判らなかった。


 案内してくれるトウチョ=トウチョ人について降る。どうやら長老の屋敷は相当下層にあるようだ。高齢な者ほど下に住むらしい。


「どこまで続いているんだろうね。」


「下の方は霧か何かで全然見えないわ。」


「そうだな。でも降るしかない。用心して降ろう。」


 五人は下へ下へと降ることに不安を覚えながら付いて行く。騙されて捕まってしまう危険もあるので、本当はあまり下へは行きたくないのだが仕方がない。降らないと長老に会えないのだ。


 どんどん下に降りて行くが明るさはあまり変わらなかった。やはり何かの魔法の様だかシステムは判らなかった。


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