第5話 僻地への誘い⑤
「手詰まりなのは確かなんだから、やっぱり綾野さんを頼ってみる?」
瞳は嬉しそうに言う。将兵を揶揄っているのだ。
「なんだ、アラオザルは見つからないんだ。じゃあ直接探しに出てみたら?」
二人の提案に火野は決断しあぐねていた。ただ綾野を頼るかどうかは火野の気持ち次第だった。闇雲に探しに出ても徒労に終わる可能性は高い。誰か情報を持っている可能性がある人でも探せないだろうか、とも思っていたが、なかなか行き当たらないでいた。
「わかった、綾野先生を頼ろう。」
火野はデメリットの少ない、というか殆ど無い方策を選んだ。綾野の協力が瞳たちにどんな影響を与えるのかは考えても仕方ない。それも含めて人類というものだ、ということで火野は自分を納得させた。
綾野は東京に戻っていたので直ぐに連絡が取れた。瞳にズームを繋いでもらう。
「お久しぶりです、綾野先生。」
「ああ、久しぶりだね火野君。どうだい、彩木君や桜井君は元気かい?」
「私は元気ですよ~。」
横から瞳が顔を出す。亮太はこういう時は出てこない。
「うんうん、元気そうで良かった。それでセイン教授には会えたのかい?」
「ええ、マンダレーに着いて直ぐにヤダナボン大学の教授を訪ねました。そこで色々と手配をしていただいて今はタウンジー大学のお世話になっています。」
「なるほど、それで私に連絡をしてきた、ということはアラオザルを探す目途が立たない、ということかな。」
綾野は全部お見通しだった。火野としても最初から綾野の情報をもらって現地入りした方がいいことは判っている。ただ出来得る限り自分たちの力で、という当初の方針も変える気が無かった。それが瞳の判断に影響を与えないようにする配慮だと火野は考えていたからだ。ただ、どうも進展がなさそうであり、打開策も見当たらなかった。
「お察しの通りです。先生は何かアラオザルの場所について情報をお持ちですか?」
「そうだね。私も行ったことはないんだ。北米や南米、ヨーロッパや南極は各地を回っているんだがアジアは今の所後回しになっていてね。今後はアジアもと思っているんだが、どうだい、私も同行しようか?」
「先生、それは。」
「判っている、判っている。でも情報だけ、というのも心苦しいんじゃないかい?」
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