第62話 悪役貴族、エルフの戦士達と戦う①
「———それではこれより英雄ディヴァインソードの息子ジン・ディヴァインソードVSエルフの最上級戦士50人との対戦を始める!! また、ジン・ディヴァインソードが勝利した場合は俺の娘のメアを嫁がせることにする!! 既に里長は了承済みだ!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」」
メアの父親の掛け声と共に大歓声が上がるが、確かにこのエルフの里の英雄の息子がこの里の力自慢と戦うとなれば盛り上がるのも当たり前か。
それに俺が勝てばエルフ一の神童が嫁ぐわけだし。
里長が表に出ないのはちゃんと理由があるが、それは後でいいだろう。
そんなことより———俺はメアへと視線を向ける。
父親の隣りにいるメアは珍しくこのテンションについて行けていないのかオロオロとしていた。
俺はメアの珍しい姿を心のメモリーに数百枚収めた後、眼前にいる50人のエルフの戦士へと視線を巡らせる。
皆、あの不良品の主人公とは比べ物にならない程強い気配を放っていた。
また、殆どの者は弓を所持しているが、一部の者は剣や槍などの近接武器を持っている。
「其方があの英雄の子のジン・ディヴァインソードか……素晴らしい力を持っているな」
「お前こそ、な」
「ははっ、これでも隠していたつもりなんだが……」
そう言って頭を掻くのはエルフの里最強の戦士———ユミエルだ。
ユミエルはゲームでも登場しており、エルフの里に来た主人公達に入る資格を与える試験を担当する時の相手で、その強さはゲームでも最上位と言っても過言ではないだろう。
彼はエルフにしては珍しく弓は全く使えないが、その代わりに物凄い槍の才能を持っている。
「それじゃあ準備はいいか————!? 試合———開始ィィィ!!」
完全にノリに乗っているメアの父親の合図と共に試合が始まった。
———開始から1分。
俺達は誰1人としてその場から動いていなかった。
流石に洗練された戦士なだけあり、迂闊に攻撃は仕掛けて来ず、俺の力を見極めようとしている。
俺も相手の力を見てから攻撃を始めようと思ったが……このままでは埒が開かないので先手は貰うことにした。
「行くぞ———」
俺は即座に炎と雷などの炎系以外の属性の槍を無数に生み出すと共に撃ち出す。
「なっ!? この量は……!!」
「こんなの常人じゃあ不可能だぞ!?」
「流石英雄の息子というわけか……」
「———落ち着け。皆で対処すればどうといったことはないだろう?」
そう言いながらユミエルが俺の槍を見ずに撃ち落としていた。
そんな勇敢で勇猛なユミエルの姿にエルフの戦士達は冷静さを取り戻し、僅か数十秒の間に数百もあった槍の魔法が跡形もなく消えてしまっていた。
「さて……今度は我らの攻撃だ。弓兵———撃てぇぇぇぇ!!」
そういった瞬間に俺へと魔力の籠った威力も速度も前世のものとは比べものにならない程の矢が俺を射殺そうと迫る。
俺が対処しようと魔法を発動しようとしたその時———矢の合間を縫ってユミエルが接近してきた。
「我も忘れてもらっては困るッ!!」
ユミエルが槍を器用に振り回して俺へと連撃を繰り出してきた。
その事に少し驚くものの、即座に結界を張ってガードしながら攻撃の合間を縫って反撃してみるもあまり芳しくない。
特にチクチクと矢が飛んでくるのが少しイラっとくる。
「どうだ、中々厳しいだろう?」
「まぁ……そうだな。だが———この程度じゃ俺は止められない」
俺は一気に魔力を噴き出して爆発させるようにしてユミエル諸共矢を吹き飛ばす。
そしてその一瞬の隙を突いて俺は新たな魔法を発動させる。
「———【風神の一太刀】」
———瞬間、俺の背後に風の巨人が現れ、風の太刀を一振り。
「う、うわあああああああああああ!?」
「ぐぁあああああっっ!?」
「これは無理———ッ!!」
エルフの戦士達が魔法や弓を引くが、それを諸共せず風の太刀がエルフを吹き飛ばした。
本来この魔法は触れたものを鋭利な風で切り刻む技だが、手を加えて吹き飛ばすだけに抑えている。
そのお陰で受けたエルフの誰もが落下した時以外のダメージは受けていない。
流石にメアの故郷で殺人沙汰を起こすわけには行かないからな。
まぁあのクソ野郎だけは別だが。
まぁそれはいいとして———
「あとはお前だけだ」
「……そうだな」
俺は警戒心剥き出しのユミエルへと向き直した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます