第59話 取り敢えず処す事にしよう

「「「「「「———ラウラ様!?」」」」」」


 あのクソエルフの仲間達が顔を引き攣らせて、吹き飛んだクソエルフの落下地点に向かう。

 クソエルフは俺のアッパーを食らった事により、顔面がぐちゃぐちゃになっていた。

 正直言ってめちゃくちゃグロい。


 流石にエルフを殺すわけにはいかないので、即座に蘇生魔法で蘇生させる。


「———はっ!? 私は一体どうなっ———ギァアアアアア!?」


 俺は意識を取り戻し、混乱しているクソエルフの大事な所を取り敢えず潰した。

 どれだけ泣き叫ぼうが、此処は治すつもりは一切ない。

 俺の妻に手を出そうとする奴は去勢だ。


「五月蝿いクソエルフ。とっとと黙れ。また殺すぞ」

「ひ———ッ!? す、すいませんでしたッッ!」

「黙れと言ったはずだが?」


 俺がそう言うと、顔面を蒼白にさせて、滝の様に汗をかく体をガタガタと震わせながらクソエルフが何度も無言で頻りに頷く。

 俺はクソエルフから視線を切ると、後ろに立っているエルフたちに、得意な悪役の様な笑み問いかける。


「で、貴様らは? コイツみたいになりたいか?」

「「「「「「遠慮します!!」」」」」」


 皆が同タイミングで首をブンブン横に振る。

 

 非常に残念だ。


 俺がやっぱり少しお話教育してやろうかと考えていると、メアが俺の前に立ち、頭を下げる。


「ジン様、これ以上はおやめください。エルフの里に入れなくなってしまいます」

「……メアに感謝するんだな貴様ら」

「「「「「「「はい勿論ですッッ! ありがとうございますメア様ッッ!!」」」」」」」


 皆がメアに向かって土下座する勢い……と言うかモロ土下座しながら感謝の言葉を伝えている間に、メアはそいつらのことを無視して俺に近寄ると———


「———ありがと仁。とっても嬉しかった。惚れ直したよ」


 そう言ってふわっと優しくて暖かい笑顔を俺だけに浮かべた。


 …………反則ですメアさん。


 俺は少しの間、メアの可愛さと、照れでまともに目を合わせることが出来なかった。







「それで……俺達は入れてくれるのか?」


 クソエルフの手を紐で結んで、お仲間にさながら罪人の様に連れて行かせながら里への案内をしてくれているエルフに聞いてみる。

 すると案内をしているエルフはブンブン首を縦に振った。


「も、勿論です! メア様の伴侶となれば入れないわけはありません!」

「メアは追放されたんじゃなかったのか?」


 俺は先程からずっと疑問に思っていたことを訊いてみる。

 イメージだと、追放された人は基本忌諱されるか何らかの負の感情を向けられるはずなのだが、エルフ達から向けられるメアへの感情は、尊敬や憧れと言ったものが多い。

 

 先程はあのクソエルフのせいで大して気にも止めていなかったが、冷静になった今思えばおかしな事だよな。

 

「…………メア様を追放したのは一部のエルフです。理由は分かりませんが……」


 何だが色々と訳がありそうだな。

 メアなら何か知っているか?


 俺はそんな意図を込めてメアに視線を向けるも、メアは首を横に振る。

 どうやらメアも知らないらしい。

 それなら一度エルフの里のお偉い奴に会いに行ってみるか。


 俺がそんなことを考えていると、目の前に下手したら10000メートル行ってそうな1つの巨大な樹木と、その下に100メートルほどの木の壁が見えた。

 木の壁と言うより、何十もの木の根が重なって出来た様な感じだな。


「……流石に世界樹はデカいな」

「せ、世界樹をご存知なのですか? 人間の世界では既に噂すら無いと思われますが……」

「……あまり詮索するな」

「は、はい! 申し訳ありません! ご存知なら特に説明は要らないですね。世界樹の下にあるのが私達のエルフの里です。外からでは見えませんが、中はそれなりに広いですよ」


 勿論知っている。

 だってゲームで何度も行ったからな。

 

 エルフの里は、完全にタイトル詐欺である。

 里なんて言う規模では無い。

 そもそも此処以外にエルフは殆ど居ないし、珍しくこのゲームはダークエルフとエルフの仲も悪く無いので、人口は1000万はいる。

 更に国土も俺たちの王国が東京都くらいの大きさだとしたら、エルフの里は千葉県と同じ程の大きさだ。

 これで如何に圧倒的な国土を所持しているかお分かり頂けるだろう。

 まぁその3分の1ほどは世界樹や森が占めているが。


 俺はメアの家は一体何処にあるのだろうと考えていると、ふと先程からやけにメアが静かな事に気付く。


「メア?」

「…………なんで……」


 メアは立ち止まり、少し顔色を悪くして、何処か呆然とした様に呟いていた。

 しかし俺が再び「メア」と呼ぶと、メアは直ぐに表情を元に戻して取り繕った様に笑みを浮かべる。


「大丈夫か?」

「はい。少し感傷に浸っていただけですので」


 本当に大丈夫、と小さな声で言うメアに俺は、酷く違和感を抱いた。

 しかしメアが言いたく無いのなら、無理に言わせようとは思わない。

 俺は彼女のことを世界で1番信用しているし、彼女も俺に心を許してくれている。

 これから何もなさそうならそれでいい。

 

 でも、もしどうしようもなくなった時は———


「いつでも頼ってくれてもいいからな」

「……ありがと仁」


 ———俺がどんな事でも解決して見せよう。

 それが、この世界に転生した俺の存在意義だと思うから。

 


————————————————————————————

 是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る