第57話 メアの両親に挨拶を②
———1週間後。
「———準備出来た?」
メアがひょっこりと扉から顔を覗かせた。
何だか少し子供っぽくて可愛い。
準備とは、これからメアの故郷であるエルフの里に戻る為の旅の道具のことだ。
俺達の王国の精霊の森の入り口から相当離れており、そこらかしこにモンスターがいるため何日も掛かる。
手ぶらでなんてとてもじゃ無いけど無理だ。
普通に俺でも苦戦するモンスターが住んでいるしな。
「ああ。それにちゃんとルド達にやる事も伝えて来たよ」
俺はメアの仕草に癒されながらも答える。
因みにルド達のやる事とは、俺たちの代わりにストーリーの補助してもらうことだ。
既に学校が再開するのが後2週間に迫っており、俺はもしかしたら2週間で帰れないかもしれない。
なので念の為にルドにお願いしておいたのだ。
今回は人間よりも遥かに強い『魔族』と言う生き物が一体学園に潜入し、陰ながら才能のある人間を暗殺していく。
それは生徒教師関係ない。
本当は学園長に任せたい所だが、あのジジイは現在次のストーリーイベントに関わる所にいるため不在なのだ。
「———まぁ2人に押し付ける様な形になったけどな」
「いいの? 魔族が侵入するんでしょ?」
「ああ。でもヤバそうな時用にルド達には『転移石』を持たせてるから大丈夫だ。他の奴らは多分教師が守ってくれるよ」
「大丈夫ならいいけど……」
メアは全く関係ないのに、他人の心配をするなんて優しいなぁ。
俺なんて正直ルドとサーシャ以外別に死んでもいいとか思っているのに。
しかし不安な点もある。
それは……1年分ストーリーが早く進んでいる事だ。
もしかしたら魔族も一体じゃなくて何体も現れるがしれないし、それと同時に次のストーリーも始まるかもしれない。
正直だんだん原作知識は当てにならなくなっている。
まぁそれ以外は全然使えるんだけど。
だからこの1週間はルド達の強化に費やしていた。
そのお陰で今では俺が本気を出さなければそれなりに戦える様になっている。
「ルド達も強くなったんだから心配しなくても大丈夫だって。俺達はまずエルフの里にどうやって入るかを考えよう」
「……ん、そうだね」
そう———メアは現在半追放状態のため、入れてもらえるか全くの不明。
更には人間の俺までいる。
人間嫌いのエルフがどんな事をして来るかが分からない。
「仁は私が絶対に、皆に認めさせてみせる」
そう言って胸の前でぎゅっと拳を握るメア。
それはそうと、いよいよメアの家族に挨拶しに行くと思うと少し緊張してきたな。
一体何で言えばいいんだろう?
「それじゃあ行こっか」
メアが笑顔で、考える俺の手を引いて玄関を開けた。
▽▲▽
「———【風刃】」
「ガッ———!?」
俺は行く手を阻むゴブリンキングを真っ二つに切り裂く。
精霊の森に入って2時間もすると、だんだん『モンスター避け』と言うアイテムが効かない強いモンスターが現れる様になって来た。
今目の前にはゴブリンジェネラルとキングの群れがいる。
ただ、正直俺やメアの相手では無い。
「仁に近付かせない———!」
メアは高速でゴブリンジェネラル達の首を、柄以外の刃が魔力で出来た不思議な短剣
で斬り飛ばしていく。
正直俺が魔法で倒しているのよりも速い。
「流石だなメア」
「森の中での戦闘でエルフに敵うものは居ない」
それはそうだ。
エルフは何百年も森の中でモンスターの狩をするんだから。
俺は頼もしいメアの後ろ姿を追いかけた。
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