第56話 メアの両親に挨拶を①
「「———お、終わったぁ……」」
俺達は出来上がった家の床に大の字で寝そべって声を漏らす。
木を切り倒すのに、ルドは頑張ってくれたが……自分でやった方が断然速い事に気付いたのだ。
だから俺が木を切りながら、切った木を乾燥させ、その木を予め作ってもらっていた家の設計図を見ながら組み立てる———と言うのを並行して魔法で行っていた。
「ジン……今どれくらい経った……?」
「ざっと7時間だ……」
今思えば建築初心者が家を建てようとしたせいでこんなに時間が掛かったのだ。
この世界の本業は、長くても2、3時間で終わらせるらしい。
「ふぅ……取り敢えずメア達と合流するか」
俺達は転移でメア達の元に移動した。
「お疲れ様ですジン様、ルド様」
「あっ、お疲れ様ですねジン君、ルド」
「ああそっちもお疲れ様」
「疲れたぁぁぁぁ……」
俺が宿に転移すると、椅子で優雅に紅茶を飲んでいるメアと、その対面のソファーに座ってお菓子をたくさん食べて頬を膨らませながら笑みを浮かべているサーシャが居た。
2人は俺達に気付くと労いの言葉をかけてくれる。
今は2人がいるからかメアの口調はいつものような敬語に変わっていた。
「さて……まだまだお菓子を食べておきたいけど、ルドも帰ってきたし、私達はここら辺でお暇しますね」
「じゃあな……ジン……メアさん……」
そう言うとサーシャがルドを担ぎながら帰って行った。
2人になった部屋で、俺達は次の事に取り掛かった。
「それじゃあ買ってきた物全部家に移すか」
「うん。沢山買ってきたから時間が掛かるかも」
見た感じ荷物は何も無いが、恐らく空間魔法か何かで仕舞っているのだろう。
どんな物を買ったのか少し楽しみだ。
「じゃあ行くか」
「楽しみ」
「見て腰抜かすなよ?」
そんな辛口を言い合いながら再び家へと転移した。
「……」
「せめて何か反応しようよメア」
俺は家を見て言葉を失っているメアに話しかけてみるも、目を見開いたまま固まっていた。
「———メア!」
「っ! ……中に入ろう」
そう言って少し恥ずかしかったのか頬を赤らめて足早に家へと足を進めるメア。
その姿に癒されながらメアを追いかけた。
「中もすごいね。2人で住むのに丁度いい」
「大きすぎても管理が面倒だしな。さ、さっさと整理しようぜ」
「ん。《アイテムボックス》」
メアがそう言うと共に、虚空から幾つもの家具や食器、果てには風呂など、本当に沢山のものが出てきた。
正直値段がどれほどかかったのか知りたく無い。
俺は気を紛らわせることも兼ねて、早速取り掛かる。
魔法を使かって物を浮遊させ、メアの指示に従って置いていく。
意外と繊細な魔力操作が必要になるが、先程の家を作る事に比べればだいぶん楽だ。
結局僅か十数分で整理が終わり、2人してソファーに倒れる様に座る。
「今日は疲れたなぁ……」
「私はいつもとやる事は変わらないからそこまで」
メアはそう言うと、俺の頭を膝に乗せて優しい手つきで撫でてくれる。
あー癒されるわぁ……永遠にこうしておきたい。
もう正直ストーリーに関わるのは真っ平ごめんだ。
だが冒険者にならないと生活出来ないので、冒険者の資格が手に入る卒業までは行かないといけない。
俺が未来の事を憂いていると、メアが唐突に俺の頬を指の腹で撫でるように触れてきた。
そしてクスッと笑うと、
「緩んだ仁の顔かわいい」
「ほっぺをすりすり擦るのやめて。くすぐったい」
「ふふっ……やだ」
俺の静止の言葉に小悪魔の様な笑みを浮かべて拒否の言葉を言った。
もう疲れて居たのと、別に嫌でも無いのでそのままゆっくりと目を閉じた。
……ああ、そう言えばメアの両親に挨拶に行かないとなぁ……。
俺はぼんやりとした意識の中でそんな事を思った。
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『乙女ゲーの悪役令嬢の執事に転生した。「死にたくなければ体を鍛えろ」と女神に言われたので、死に戻りスキルで死にながら鍛えてみた』
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