第55話 家を建てよう

 次期お隣さんのトルデォンと少しの間雑談を興じた後、俺達は取り敢えず一旦宿に戻った。

 しかし宿に戻った俺達は軽く頭を抱えていた。


「……メアって建築出来る……?」

「……私は戦闘しかしてなかったからやってない。ごめんね」

「いや、俺も全く分からんしお互い様だって」


 実は雑談の一環で、NGな事を幾つか聞いていたのだ。

 その1つに、今から挙げれる信用できる者以外はこの森に侵入させない、と言ったものだった。


 なのでルドとサーシャ、メアの家族以外はの森に入れない。

 そのため建築士を入れる事も出来ないのだ。

 

「まぁお邪魔させてもらう俺達が文句は言えんしなぁ」


 一体どうしたものか……。


 結局その日は何も思い付かないまま、メアと同じベッドで眠りに着いた。








 ———翌日。


「何で俺も連れて来られたんだ?」

「雑用だ。それとお隣さんに紹介」

「お隣さんに紹介? こんな森の中に人がいるのか?」


 俺はルドと森に来ていた。

 メアにはサーシャと一緒に必要な家具やその他諸々を買い集めてもらっている。


 俺だと余計な物を買って散財しそうだし、もう荷物持ちはゴリゴリだからな。

 ルドもその点に関しては心から俺に感謝していた。

 相当応えたんだろうなぁ。


「まぁお隣さんの正体は対面してからのお楽しみだ」

「何だよそれ……余計に心配になるんだけど……」


 若干逃げ腰のルドを連れて昨日と同じ大きな岩のある森の中心に行く。


『来たか……』

「ああ。コイツ———ルドと後メアと一緒に1人の女が来る。そいつの名前はサーシャ。2人は婚約者だ」

「は、は、初めましてルドです!」


 ルドは誰が見ても緊張している様に見え、その証拠に足が少しガクガクしている。

 コイツ暗殺者のくせに意外とビビリだよな。


『……最近の人間はこうも番になる者が多いのか?』

「今も昔も大して変わらないぞ。結婚する奴もしない奴もいる。俺達は偶々どちらも結婚するだけだ」

「ち、ちょっと、おいジン、こっち来い」


 俺はルドに引っ張られて少し離れた所に移動する。


「……何だ?」

「『……何だ?』じゃない! どう言う事だよ! 普通にモンスターじゃ無いか! いや普通のモンスターの方がマシだよ! 『名前持ちネームド』はマジでヤバいって!」

「別に危害を加えられないのなら何でもいい」

「いやそう言う問題じゃ———まぁお前は強いから問題ないのか? メアさんもあのモンスターより強そうだし」

「そう言う事だ」


 さて、これでお隣さんにルドは紹介したし、そろそろ家を建てるとしよう。


「ルド、お前は【身体強化】は使えるよな?」

「それぐらいは当たり前だ。まぁジンほどではないけど」


 ルドは俺の目の前で【身体強化】を発動させると、ルドの周りを薄い光が包み込んだ。

 なるほど……あれからもずっと修行していた様だな。


 身体強化は倍率が高いほど体を包む魔力量が増えるため、その分光が強くなる。

 前回のルドは本当に薄らとしか見えなかったが、今はしっかりと遠目でも確認できる程まで強くなっていた。

 これは戦力になりそうだ。


「じゃあこれ」


 俺はルドにとある物を渡す。


「お、斧? ま、まさか———」


 驚きとやめてくれと言う感情がない混ぜになった様な顔をしたルドに、ニヤッと笑いかけて告げる。


「そのまさかだ。これからお前にはこの森の一角の木を切ってもらう。馬鹿でかいし太いから相当力がいると思うぞ。そして根本から切れよ? そこに家を建てるからな」


 ルドは俺の言葉を聞くと、ぶるぶると体を震わせ、顔を真っ赤にして叫んだ。



「クソッタレがああああああ!! 後で絶対にボコす!!」


 

 無料の木こりゲットだぜ。



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