第51話 その後

 ———次の日———


 俺は再び学園長室に来ていた。

 だが前回とは違い、俺だけでなくメアとシンシアもだが。


「カッカッカッ! こんな短期間で此処に2回もくる奴はお主が初めてじゃ、ジン・ディヴァインソード君」

「俺は2度と来る予定はなかったんだがな」

「そうカッカするでないぞ。メアちゃんも久しぶりじゃの。相変わらず綺麗で羨ましいわい」

「お久しぶりですアルド様。その説は大変お世話になりました」


 メアが綺麗な礼をすると、アルドは珍しく少し慌てたように言う。


「止めんかメアちゃん! 儂程度に頭を下げてはならぬぞ。そなたは儂の命の恩人なのだからな」


 へーそうだったのか、それは初耳だな。

 前回の話し合いから何かしらメアと関わりありそうだったが、まさかメアが学園長の命の恩人だったとは……。


 俺はいきなりの衝撃情報に少し目を見開く。

 横ではシンシアが俺以上に目を見開いて、メアと学園長を何度も見比べて驚いていた。


 まぁ学園長は元人類最強だし、その武勇伝も数多く残っており、小さな子どもでも知っているくらいだからな。

 そんな人を助けたと知ったら誰でもこんな反応になるだろう。


 だが―――


「話しはそこらで止めろ。そんなことより早く呼んだ用件を言え」


 いい加減俺のメアと楽しく話すのは止めろクソジジイ。

 2人しか分からない話をするんじゃない。


 俺は不機嫌になりながら話を止める。

 すると俺の顔を見たクソジジイがニヤニヤと笑う。


「ん? こんなヨボヨボの爺に嫉妬しているのか? ん?」

「…………ぶっ殺す」

「―――ジン様、魔法を放とうとするのは止めてください。それにアルド様もジン様をからかわないでください」

「…………ふっ」

「―――【風の―――」

「やめてくださいと言いましたが?」

「「…………すいません……」」


 俺と学園長はメアの感情の籠もっていない無機質な声の圧力に負けて素直に謝罪する。

 学園長はごほんッと一度咳払いをした後、やっと真剣な表情に変わった。


「メアちゃんにも怒られたし茶番はこれ位にして……3人に聞きたいのは1つじゃ。今回学園を襲撃した『神人創生会』の首領である、ブレインがどうなったのかが聞きたいのじゃ」

「何故俺達に?」

「幹部たちが口を揃えて『ジン・ディヴァインソードの下に向かった』と証言したからじゃな」


 チッ……彼奴等余計な事を話しやがって。


 俺は内心を悟られないように意識しながら毒づく。

 やはり彼奴等も一緒に殺したほうが良かったのかもしれない。


「……知らん」

「知りませんね」

わたくしも最後は知りません」


 俺達3人揃って同じ回答をする。

 まぁメアとシンシアは本当に知らないのだが。


「ふむ……ジン君程の実力者でも分からないのかのぅ?」

「ああ。相手はあの時空魔法使いだったからな」

「時空魔法使いか……それならジン君でも無理じゃな。一瞬でも隙を作ればあやつらは直ぐに【転移】で消えおるからのぅ……」


 学園長は時空魔法使いと聞いた途端に顔を歪めた。

 そしてそれと同時に俺達が知らない事に微塵も疑いを掛けなくなった。


 しかし時空魔法使いは学園長が言うように、同じ時空魔法使いでも対処が難しい。

 まずいきなり先制攻撃をされれば防ぎようがないし、熟練の者となれば、何も唱えずに【転移】を使うため、追いかけることも難しいのだ。


「ふむ……敵が時空魔法使いならまだ生きとる線が濃厚じゃな……一先ず1ヶ月は学園を休みにせねば」

「何故だ?」

「時空魔法使いがもう一度攻めてくるかもしれんと言うのもそうじゃが、シンプルに校舎が直らないんじゃ……」

「「「あ、ああ……」」」


 学園長が若干遠い目をしながらもう跡形もなく倒壊した校舎に目を向ける。

 その横顔からは哀愁が漂っており、きっとこの国の王に色々と言われたんだろうなぁと思うと、途端に可哀想になってきた。


「全部儂のポケットマネー…………」

「「「…………」」」


 こうして学園長が痛手を食らうことにより、俺達は1ヶ月の休業を得た。

 

 

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