第48話 悪役貴族、秘密結社の首領に会う

 俺はその後、無理やりシンシアを離してお望み通り魔法の的にしていると、遂に正午になり、太陽が真上になって来た。


「はぁはぁはぁ……ししょーの魔法を沢山見れて最高でした……」

「やはり弟子にしたくないな」


 俺は魔法の的になったのに喜んでいるシンシアにドン引きしながらしみじみと呟く。

 やはりゲームでも有数な狂人なだけある。


 だがコイツの面倒を見るのも後少し。

 後少しすればコイツが居なくなり、メアとめいいっぱいイチャイチャ出来ると考えれば自ずとテンションも上がってくるってもんだ。


「なぁメア、アフタヌーンティーの準備は出来る?」

「勿論です。ジン様に貰った空間拡張袋のお陰で全て持ってこれました」


 俺は無言でガッツポーズ。

 メアの使ったサンドウィッチやケーキは絶品だからな。

 紅茶もメアのお陰で好きになったし。


 俺がウキウキで時間が待つのをメアに膝枕をしてもらって待っていた時———


 ———ドンッッ!!


 突如少し離れた花畑に何か落ちて来た。

 俺は何事かと思い、嫌々ながらメアの膝枕から頭を上げると、少しイライラしながら落ちて来たモノの方に近付く。


「何だよ折角邪魔物が消えてメアと2人きりになれるっていう時に……」

「ふぅぅぅ……痛かった」


 砂埃が晴れ、そこから首をコキコキ鳴らしながら1人の男が現れた。

 その男は俺よりも2回りくらい大きな体をしているが、ムキムキと言うわけでもない。

 しかし服の上からでも筋肉があることが分かるくらいに鍛えられていた。


 しかし俺はこの男をよく知っている。

 

「一体何の様だ———ブレイン・クロノゲート」

「……? 俺のことを知っているのか? まだお前とは会った事もないはずなんだが?」


 勿論知っているよ。


 ブレイン・クロノゲート。

 秘密結社『神人創生会』の首領にして、世界有数の時空魔法使い。

 つまり俺と同じ魔法系の悪役だ。


 因みに俺はコイツが大嫌いである。

 秘密結社の名前からも分かる様に、完全に頭のおかしい奴で、悪役なのにやっている事に悪意がない。

 自分が間違っている事をしているなんて微塵も思っておらず、自分が正義だと頑なに信じている所が嫌いだ。

 それに何か口調も雰囲気も似てるのがキャラ被るからムカつく。


 俺が目に見えて不機嫌になっていると、ブレインがシンシアを見つけてニヤリと笑う。


「丁度いい所に燃料・・も居るじゃないか」

「チッ……【転移】」

「おっと、そうはさせないぞ———【空間歪曲】」


 俺がシンシアとメアを転移させようとすると、ブレインが空間を捻じ曲げて転移を阻害しやがった。

 そのせいで突然景色が歪み、澱んで周りと隔絶させられてしまう。

 これでコイツから逃げる事は不可能となってしまった。


 それにしても……何故コイツは此処にきたんだ?

 ゲームでは学園に来ていたはず……それに幹部たち総出で侵略しに来たような……。


「……何故貴様が此処に居る? お前は学園に居るはずだが……?」


 俺がそう言うと、ブレインの顔色が変わる。

 顔が能面の様に感情が消え、殺気とも威圧とも言える気が俺を襲う。


「……ジン・ディヴァインソード、どうして貴様が俺達の計画を知っている? 確かに今俺の幹部達が学園に侵略しに行っているが、この事は幹部以外に知る者はいない。———貴様、何者だ?」


 ブレインが有無も合わせぬ様に俺に訊いてくる。

 その巨体からは濃密な殺気が溢れ出て、俺を殺さんと疑いの籠った瞳が俺を突き刺していた。


 ふむ……確かに強い。

 さすが悪役の中でも強者に分類されるだけあるな。

 多分軍隊女よりは強い。

 何より、時空魔法が厄介だ。

 コイツの時空魔法は今の俺と同等の熟練度はあるだろう。


 だが、そんな事どうでもいい。


 きっと此処で俺が戦えば、更にゲームのストーリーは変化していくだろう。

 そうすれば俺の原作知識は殆ど役に立たなくなる。


 だがそんな事はどうでもいい。


 俺はブレインの問いを鼻で笑う。


「ふんっ、俺の問いに答えない奴に誰が言うか。それと最初に言っておこう。俺は貴様が嫌いだ。だが……まぁそれもどうでもいい。ただ———」


 全ての魔力器官を解放。

 更には『災厄の杖』も召喚し、ブレインの殺気に対抗する様に———いやそれ以上の殺気をぶつける。

 そして全属性の槍を何重も展開し、俺の周りに停滞させ、告げる。




「———今、このタイミングで此処に現れた事を後悔するんだな。貴様のその野望諸共俺が踏み潰してやる」




 やっと俺に来たメアとのイチャイチャタイムを邪魔した罪は重い。



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 次回は悪役貴族VS悪役首領。


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