第45話 校外授業の終わり

 遅れて申し訳ありません。

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「あああああああああ―――ッッ!!」

『こ、小癪な……ッ!』

『人間にこの魔法が使えるはずがありません!!』

『貴様ら、そんな事どうでも良いから集中しろ!!』


 お互いの【侵食】がまるで陣地を奪うかのようにぶつかり合う。

 その余波で聖域の結界が徐々にポロポロと破片を溢しながら崩壊していく。


 禁術魔法―――【侵食】。

 それは瘴気を操る魔法で、将来的に開発されるも直ぐに禁術扱いにされて使用を禁じられる魔法である。

 

 理由は簡単で、兎に角発動すれば周りが再生不可能なほどに消滅してしまうのと、発動者自身の体が魔法の反動に耐えられないからだ。

 そもそも魔法を発動させるのに膨大な魔力は必要なので、普通の人間ならば自身の体の崩壊を食い止めることが不可能。


「ぐっ、ぐぅぅぅぅぅぅ……ッッ!!」


 俺の体も例に漏れず崩壊し始める。

 しかし、俺と他の奴らの違う所があるとしたら―――


「―――【再生リカバリー】ッ!!」


 発動中でも魔法が使えることくらいだ。

 

 俺の体が崩壊すると同時に、時間が巻き戻っているかの様に再生する。

 【再生】は時空魔法と治癒魔法の複合魔法で、消滅して1秒以内ならどんな傷でも治せる優れ物だ。


 まぁその代わり1秒過ぎれば永遠に治らない傷となってしまうが、その程度は誤差だろ。

 俺は絶対に失敗しないので。


 それにしても。


「痛いなクソッタレが……」


 破壊と再生を繰り返しているので痛くないわけが無い。

 正直今すぐにでも泣き出したいのを我慢している俺を誰か褒めて欲しい。

 ほんと、1度死んでいなければ耐えられなかったぞ。


「は、早くしてくれ……シェイド……ッッ!!」


 俺は歯を食いしばって耐える。

 しかしそろそろ、尽きるなんて思いもしなかった膨大な俺の魔力が尽きそうだ。

 尽きれば俺の命は終わり。


 だが限界が来る事はなかった。

 

 突然ビクンッと精霊王達が体を震わしたかと思うと、突然糸が切れたかの様に姿を消した。

 それと同時に聖域を侵食していた瘴気も収まったため、俺もすぐに魔法を解除。


「————ぷはっ!? はぁ……はぁはぁ……キ、キツ過ぎ……」


 俺はその場に倒れ込み、大きく息を吸い込む。

 体が動かない。もう指一本すらも動かせない。

 魔力も底をついており、回復させる事も出来ないので、誰かが助けてくれなければこのまま此処に置いてけぼりになってしまうだろう。


「助けてくれ、シェイド〜〜」

『壊したよジンさまっ! それと今から魔力あげるからね!』


 シェイドが俺の体に触れると、膨大で綺麗な魔力が俺の体に入ってくる。

 契約しているので魔力の親和性も高いのか、異物が入ってくる様な感覚はない。

 

 ある程度魔力が回復したら、俺は即座に回復魔法を使って体を完全に治す。


「よっと。ふぅ……今回は結構ヤバかったな……」

『凄いねジンさまっ! お兄ちゃん達を相手に生きてるなんて!!』


 シェイドが目をキラキラと輝かせ、手をパチパチと叩いて俺を褒める。

 そんなシェイドを俺は抱き締めて声を掛ける。


「俺の方こそありがとう。お前のお陰で死なずに済んだ」

『ううん。ボクが頼んだんだから当たり前だよ。それよりもうお兄ちゃん達大丈夫そうだから、ボク達も戻ろ?』


 シェイドが影から頭だけを出して言ってくる。

 俺はその姿に少し肩をすくめると、同じく魔法を発動させて影の中に潜った。








「———ジン様! お怪我はありませんか!? 森の中央から物凄い魔力を感じました!」


 俺が皆の所に戻ると、1番にメアが心配そうな顔から一気に安堵の表情に変えて近寄って来た。


「森の中央に向かったのですが、結界のせいで中に入れず……」

「大丈夫だぞ。ギリギリ死にそうだったけどなんとかなったし」


 俺がそう言った瞬間、メアが固まった。

 そして俺も自分が言った事を思い出して固まった。

 しかし直ぐに、ギギギ……とメアが首を動かして俺を見る。


「……死にかけた、ですか……?」

「あ、ああまぁ……今回はしょうがなかったんだよ」


 俺がそう言ってみるも、メアは眉を少し顰めるのみ。

 完全にこれは怒られるな……と思っていた俺に、まさかの出来事が起きた。


「———よく頑張りましたね。私達を守っていただきありがとうございます。……今日はゆっくりお休みください」


 俺の顔を自身の胸に抱き締めて頭を撫でながら、優しく、それでいて愛おしい者を思う様な声色で言ってきた。

 いつもの俺なら驚きと興奮と羞恥でどうなからなりそうになるだろう。

 しかし今は疲れ過ぎていたせいか心地よいと言うこと以外感じなかった。


「……ああ……そうさせて貰おうかな……」


 俺は幸せな気持ちになりながら、心地よい眠気に身を任せた。


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