第43話 VS精霊王(火・水・地・風)①
『―――此処だ』
メア達と別れてあるき続けること1時間。
火の上位精霊が突然立ち止まり、霧に包まれて先の見えない所を指さして言った。
『此処から先が精霊王様達が住んでおられる場所だ。この霧は一種の結界で、精霊王様とその契約者しか入れなくなっているが……ジンは闇の精霊王様の契約者だし問題ないだろう』
火の上位精霊の言葉で、ゲームでも主人公とアリア以外聖域に入れなかったことを思い出す。
成程な……精霊王の契約者じゃないと入れなかったからあの2人だけだったのか。
ゲームでは《入場条件:
俺は1つの謎が解けたことにより、少し気分が良くなるも、この後のことを思い出して物凄く気分が落ち込む……が行くしかない。
と言うか折角なけなしの体力を使って此処まで来たのに、目の前で回れ右する事など無駄でしか無いので、引き返すと言う選択肢はないのだが。
「行くぞシェイド」
『うんっ! 久しぶりのお家だねっ!!』
俺はテンションを上げるシェイドと共に霧の中へと姿を消した。
―――辺り一面霧ばかりで何も見えない。
俺が結界の中に入って1番に思ったことはそれだった。
あまりの霧の濃さに、前方1メートルすらも視界がぼやけて見えないし、自分の真下の地面も霧で鮮明に見ることが出来ない。
更には感知系の魔法どころか、普通の魔法すらもこの場所で使用するのは難しくなっている。
正に俺にとって最も相性の悪いフィールドと言えるだろう。
「……やっぱり来るんじゃなかったか……?」
俺は此処に来たことを若干後悔しながらも、シェイドの道案内で先へと進んでいく。
シェイドにはどうやら霧など写っていないらしく、何時も通りとの事。
それから歩くこと僅か10分程で一気に視界の霧が晴れる。
『ジンさまっ! 此処が僕達のお家―――聖域だよ!』
シェイドが嬉しそうに飛び回りながら言ってくる。
しかし直ぐに顔を顰め、俺の肩に飛び降りた。
『……何か此処気持ち悪い……』
どうやらシェイドも瘴気を早くも感知したようだ。
まぁ精霊は魔力の塊みたいなものなので、俺達生き物よりも遥かに魔力に敏感だからな。
「シェイド、それが今回のモンスターが大量発生している原因の瘴気だ」
『瘴気……僕瘴気嫌いっ!! とっととなくしちゃおうよ!』
「勿論そのつもり―――ッ!?」
俺は即座に【身体強化】を発動してその場を離れる。
すると俺達が元いた場所に、見た感じ上級程度の威力がありそうな炎や水の大玉が落ちてきた。
ふと上空を見上げると、ゲームで何度も見た、シェイド以外の精霊王達の姿がある。
お互い見つめ合うこと数秒、特に何も起きない事を祈っていたが、残念ながらそれだけで終わりはしなかった。
更に危険を感じて俺が後退すると、俺の前と後ろを挟むように地面が割れて風の竜巻が俺に襲い掛かる。
「―――シェイドッッ!!」
『う、うんっ! ―――【影走り】―――』
俺の言葉に呆然としていたシェイドの魔法が発動し、俺ごと影の中に間一髪で吸い込まれる。
そのお陰で魔法には当たらなかった。
俺たちは影の中で一度その場に座り込む。(地面などないが)
「はぁ……はぁ……あぶねぇ……」
『じ、ジンさま……ど、どうして……皆、僕を攻撃するの……?』
「瘴気の元力になっているからだな。恐らく装置があるはずだ。それを壊せば彼奴等は正気を取り戻す」
俺はゲームでの精霊王達の止め方を教える。
理由は簡単。
「シェイド―――お前が装置を止めろ。俺が時間を稼ぐ」
『で、でも……ジンさまが殺されちゃうよ……』
シュンとするシェイドに、俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「大丈夫だ。10分程度なら4対1でも負けはしない」
俺がそう言うと、シェイドは少し重巡した後、覚悟を決めた様に顔を引き締め、影の中を泳いでいった。
「さて、俺は良い加減出るか―――【影走り】」
俺はシェイドと同じ魔法を発動して影の外に出る。
外では四大精霊王が魔法を発動して待ち構えていた。
『―――【
『―――【
『―――【
『―――【
どれも名前からわかる様に精霊王の最強魔法である。
火の精霊王からは巨人の様な炎が俺に襲い掛かる。
水の精霊王からは女性とその女性を周りを取り巻く水竜が咆哮を上げた。
地の精霊王からは地面が自由自在に動いて俺を拘束せんと追いかけてくる。
風の精霊王からは小さな妖精達が集まって黒い暴嵐が空も地も壊しながら俺を巻き込まんと迫る。
側から見ればまさに絶対絶命だろう。
相手は世界最強の4角。
対して俺はまだ15歳のひよっこ。
しかし俺には異世界の、それこそ一つの世界では収まりきらない程の力を知っている。
「――― それは光すらも呑み込む深淵。空の頂にて光り輝く星をも壊す破壊の象徴。掌握せしその名は―――【
その瞬間に俺の前方に小さな小さな、それこそ精霊王達の魔法とは比べ物にならない程に小さな黒い空間の歪みが発生する。
かつて俺がこの森で一度使った魔法だ。
それを更に改良して進化させた。
―――ズッ――――――ッッ!!
黒い歪みは俺以外の半径100メートル内にある物全てを吸い込む。
精霊王達の魔法は見る見る内に吸い込まれ、僅か10秒ほどで綺麗さっぱり無くなってしまった。
俺は敵意を全開にして魔力を高めている精霊王達に、悪役貴族にお似合いの不気味な笑みを浮かべる。
「貴様らと俺……悪役同士で仲良く遊ぼうぜ」
その瞬間にお互いの魔法が衝突した。
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