第42話 大量発生の原因

「……モンスターの死骸ばっかりだな……」

「しかも黒焦げ……」


 俺とルドは先程からずっと続く、黒焦げ死体に辟易としていた。

 黒焦げだと全く買い取ってくれないので、1円の価値にもならない。

 更に、


「……感知が使えん」


 ある一定の場所まで行くと、いきなりモンスターを感知できなくなったのだ。

 理由は俺達が【阻害結界】の中に入ったからだろうが、そもそも2年前にはそんな物無かった。

 いや、ゲームではあったにはあったのだが、それは今ではないはず……。


「……さっぱり分からん。今すぐ精霊達に会って色々と訊かないとな……」

「ジン様……この惨状はきっと火の上位精霊様の仕業だと思われますので、近くにいるのではないでしょうか?」

「だろうな。アイツなら大雑把だから適当に倒しそうだ」


 俺は2年前に会った精霊達の顔を思い浮かべる。

 最近は全く会っていなかったが、まぁ特に変わりなく過ごしているだろう。


 そんな事を考えていたその時———


 ———ドカンッッ!!

 

 突如森の奥から爆発音が聞こえた。


 その瞬間に俺とメアは走り出す。

 何故なら大体誰の仕業か分かったからだ。


 爆心地は思ったより近く、僅か30秒ほどで到着した。

 そこには今まで見てきた時とは違い、地面に1メートルくらいのクレーターは出来ているものの、同じ様な黒焦げの死体が転がっている。

 そしてその近くには顔馴染みで話題に上がっていた火の上位精霊の姿が。


『ん? おお……この前ぶりだなジン。また来たのか』

「俺的には2年だから久しぶりなんだがな。それはそうと……この辺りでモンスターが現れていると聞いたんだが……」

 

 相変わらず精霊は時間にルーズだと思いながら訊いてみると、火の上位精霊が神妙な顔で応えてくれた。


『……そうだな。最近はよくモンスターを見かける。見つけ次第倒してはいるが、一向に減らないどころかどんどん増えている。恐らく原因は———』

「原因は?」




『———精霊王様の聖域だ』




 その言葉は俺にとって最悪とも言える非情な宣告だった。

 俺がショックを受けると共に同じ精霊王であるシェイドが俺の中から勝手に出てきて驚きの声を上げる。

 

『何があったの!? 僕のお兄ちゃんとお姉ちゃん達は!?』

『これは闇の精霊王様……しかし言った通りです。私たち上位精霊では聖域に近付けませんが、聖域から瘴気が漏れています』


 俺は上位精霊の言葉に1つ心当たりがあった。


 ゲームで言う所の中盤の終わりに、同じく精霊の森で再びモンスターの大量発生が起こるのだが……原因は聖域から溢れる瘴気だった。

 原因はとある秘密結社の実験で、人工的に瘴気を発生させる事に成功したのだ。

 しかしその代わりに膨大な魔力が必要で、人間から奪うのでは効率が悪い事に気付いたそいつらは、精霊の———それも精霊王の魔力を利用しようとした。


 だが、精霊王の魔力が膨大すぎたため、瘴気を制御することが出来ず、精霊の森にモンスターが大量発生してしまった……と言うシナリオだった気がする。


 でもそれは最低でも後1年は猶予があったはず……いや、俺のせいでシンシアが早く学園に入学したから時期が早まったのか?  

 それならこの状態になってしまったのにも納得出来る。

 くそッ……こう言う時に限って主人公が居ないとかツイてないな……。

 

『———ジン? 聞こえてるか?』

「ん? すまん、少しぼーっとしていた。それで何だって?」

『ジンさまっ! 今から聖域に行こうよっ! 皆が心配だよ!』

『俺からも頼むジン。どうか我らの王を救ってくれないか?』


 シェイドと火の上位精霊にそう頼まれるが……正直言っていきたくない。

 もう既にたんまりとお金は稼げているので行く意味もない。


 しかし、シナリオが早く進んだのは俺のせいでもある。

 いやまぁ俺に楯突いた主人公達が悪いのだが。


「…………分かった。今から行くぞ。だが、シンシアとルド、メアも来るな」

「「「!?」」」


 俺の言葉に3人が驚いた様に目を見開くも、シンシアとルドは自分の実力不足だと思ったのか特に反論はなかったが、メアだけは違った。


「ジン様、私はジン様のメイドですので、お守りするのも仕事の内です。それに私は簡単にやられる様ではありません」

「いや、ダメだ」


 俺は即座にメアの言葉を否定する。


 と言うか普通に危ないから来てほしくない。

 出来れば今日もこの森にも来て欲しくなかった。

 だってメアが怪我でもしたら俺、壊れるぞ?

 

「メアは俺の代わりに2人を安全に森から出してくれ。これは主人としての命令だ」

「…………分かりました。———ご武運を」


 メアはそれだけ言うと、2人を担いで物凄いスピードで森の外へと消えていった。


「さて、俺達は森の真ん中に向かうとするか」

『うんっ!』

『了解だ』


 俺とシェイド、火の上位精霊は聖域へと足を運んだ。


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