第41話 悪役貴族の狩り無双

 どうも悪役貴族のジンです。

 現在俺は自分とメアの生活費のために血眼になってモンスターを探しています。


「……何処だモンスター……! ———【魔力感知】———見つけたぞッ!」

「いや早っ。まだ始まって30秒しか経ってないんだが?」


 ルドの言う通り、モンスターの狩りが始まってまだ30秒しか経っていない。

 しかし早急に見つける必要があるのだ。


「全ては生活費のために、誰にも取られる訳にはいかないんだ……!」

「切実だなおい。しかし……この姿だけ見たら、ジンが公爵家の子息だとは誰も思わないだろうな」

「ふんっ。周りの目など気にしても無駄だ。そんなことしても1円にもならん」

「ししょー! 私が王城から宝石を何個か貰ってきましょうか? そうすれば一生遊んで暮らせるくらいのお金になるはずです!」

「良い案だなシンシア。是非採用しよう。後、俺はお前の師匠ではない」

「えへへへ……ありがとうございますっ! それでは1週間程お待ちください! 必ずや高い宝石を貰ってきます! ……それとししょーは私のししょーです」


 そう言ってピシッと敬礼のポーズを取るシンシア。

 この世界にも敬礼があるのは不思議だが、まぁ子供っぽくて可愛いので良いか。


 俺とルドがシンシアの姿に和んでいると、メアが深刻そうな顔で言う。


「ジン様……非常に申し上げにくいのですが……1週間も持ちません」

「…………よし、なら今すぐ行くか」


 俺は思った以上にヤバかった事に気付き、急いで感知した方向へと歩を進めた。










 


 精霊の森内を歩く事15分。

 遂に俺はモンスターと邂逅した。


「「「「「ガルルルル……!」」」」」

「「「「「「「「「「ゴブ、ゴブッッ!!」」」」」」」」」」


 目の前にはグレーターウルフとそれに騎乗したゴブリンライダーに棍棒を持ったゴブリンジェネラル。


 どれも危険度B級に位置するモンスターである。

 レベルで言えば50程で、ゲームではこの時期に出て来ないはずの強さだ。

 その証拠に、


「な、なんだよコイツら……こんなの教師でも指折りの実力者じゃないと勝ち目がないじゃないか……」

「ししょー! 流石に私ではこのモンスター達には勝てませんっ! なので、やっちゃってください、ししょー!」


 ルドもシンシアもコイツらの強さを分かっているのか早々に戦闘は諦めている。

 シンシアはどちらかと言うと俺の魔法が見たいと言う願望がダダ漏れであるが。

 まぁだがシンシアの要望通り、魔法を見せてやろう。


「メア、今回は手を出さないでくれ。この程度なら問題ない」

「……承知致しました。では私はお2人の護衛を請け負う事にします」


 メアはそう言うと、2人の近くへと移動した。


 よし、これでメアを危険に合わせないで尚且つ全部俺の取り分にできるぜ。


 俺はモンスターの前に立つ。

 ゴブリン達は1人で挑んできた俺を嘲笑うかの様に醜い笑みを浮かべていた。

 グレーターウルフは……うん、分からん。

 

 俺は念話を使えるわけではないし、そもそも使おうと思った事がないので流石に犬の思考は分からんよ。

 ゴブリンとかなら人型だし、悪意には結構敏感なので意外と気づくのだが。


「まぁ良いや。さぁ———始めよう」


 俺は一気に2つの魔力器官を解放して魔力を練る。

 此処は森だし派手な威力のある物は使えないが、この7年でしっかりそれに対応する魔法を編み出した。


「お披露目の時間だぞ———【死神の一刈】」 


 その瞬間に俺の体から死の力———【死気】に変換された魔力が具現化する。


 ボロボロのローブとフードを被り、黒いモヤの様な手には禍々しい大鎌が握られていた。

 そしてその死神に似た何かが、ふっと消えると、その瞬間にウルフに乗っていないゴブリンジェネラルが突然、糸が切れたかの様に崩れ落ちる。


 よし、5匹ゲット。


「「「!?」」」

「「「「「ゴブッ!?」」」」」


 突然の事に驚き動きを止めるモンスター達。

 その表情からは困惑と恐怖が見え隠れしていた。

 

 そんなモンスター達に俺はニヤリと笑いかける。


「おいどうした……? まだまだこれからだぞ。———【極小魔力弾】」


 ヒュッ———!


 小さな風切り音と共に、反応すら出来なかったグレーターウルフとゴブリンライダーの眉間に4cmほどの穴が空いて、ゆっくりと倒れていった。

 

 しかしまだまだ目の前には沢山のモンスターが居る。


「———【多重展開:極小魔力弾】【死神達の楽園】———」


 俺の周りには無色透明な魔力弾が何百発分も漂い、前には大鎌を持った死神達が何十と現れる。


「さぁ掛かって来い俺の生活費どもッッ!!」


 俺は嬉々としてモンスターの大群に飛び込んだ。


 

 


 



「……お前……やっぱり化け物だな……」


 ルドが目の前の光景に呆然と呟く。


 そこには何百ものモンスターが折り重なるように死んでいた。

 しかし殆ど血は出ていないので見た目は綺麗だ。

 これなら結構高く売れるのではないだろうか。


 メアの方を見ると、嬉々としてモンスターを空間魔法にしまっていた。

 シンシアは俺の魔法を見て大興奮だったが、途中で興奮しすぎて気絶してしまい、現在は木に寄りかかられている。


「ふんっ……この程度造作もない。ククッ……どのくらいで売れるか楽しみだ」


 俺はニヤッと笑みを浮かべる。

 その時にルドが「可哀想なモンスター……」と呟いていた様に感じたのは、きっと空耳だろう。


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