第40話 まさかのメイド登場

「それでは今から生徒は転移ゲートをゆっくりと通ってくれ。通れば直ぐに精霊の森だ。一応何人かの教師は向こうにいるが……何があるか分からないので注意して行くように」


 軍隊女の言葉を皮切りに、生徒達が気を引き締めてどんどんとゲートの中に消えていく。

 正直俺は自分で転移門作って行けばいいけど、折角無料で通らせてもらえるなら魔力の温存と思ってありがたく使わせて貰おう。

 この先何が起こるかは不明になってしまったからな。


「さて……主人公の穴はどうやって埋めようか……」


 しかしその心配はこの後直ぐに考える必要はなくなる事をまだ知らない。














 俺は今、物凄く驚愕していた。

 別にモンスターが思った以上に強かった、弱かったと言うわけではない。

 ストーリーが……とかそう言った事でもない。

 そう―――


「彼女は今日皆と一緒に参加してくれる、メアさんだ。彼女はこの精霊の森の生まれで結構この森には詳しく、何より強い。私よりも強いから決して馬鹿な事はしないようにな」

「ご紹介に預かりました、メアと申します。この度は皆様の案内役兼護衛を担当します。よろしくおねがいしますね」


 ―――何故かメアがこの場所に居るのだ。

 それも非常講師みたいな立ち位置で。


 俺は驚きのあまり開いた口が塞がらずぼーっとメアを眺めていると、メアが俺を見つけたのか、少し広角を上げて手を小さく振った。

 その姿はたいへんお美しい。

 もうこの世の全女性がゴミ以下に思えてしまうほどの美しさを孕んでいた。


 更には現在メアの服装はメイド服ではなく、動きやすい戦闘用の服で、メアの戦闘スタイルがスピード特化なので、メイド服よりも遥かに露出が多い。

 その証拠にメアに男子諸君の目が釘付けになっていた。


「…………」


 おい、メアを視界にいれるな野郎ども。

 後1秒でも見てたら殺すぞ。


 俺が1秒経ったので皆を物理的に殺そうと魔力を操作しようとして、


「止めろジン。どうせ彼奴等はメアさんになんにも出来ないんだから気にするだけ無駄だ」


 ガシッとルドに腕を掴まれて止められてしまった。

 シンシアは俺の魔力の動きを感知していたようだが、見たいのか止まる気配はない。


「ルド……貴様の婚約者がもし数多の男にジロジロと不躾な目線を向けられたらどうする?」

「速攻で目玉を潰す」

「そう言う事だ」


 ルドは真顔で物騒な事を呟く。

 だが、俺も同じ事をするだろう……と言うか現在進行形でやってやろう。


 俺が再び魔法を発動しようと男子生徒全員に向かって手を向けようとして———


「それ以上はダメですよジン様」

「メア!?」


 いつの間にか隣に居たメアがそう言われ、俺は素っ頓狂な声を上げる。

 それと同時にいきなりだったこともあり、心の準備が出来ていなかったことで心臓が暴れ出した。


 やばいやばいやばい!

 今のその服で近くに……それも息が掛かるほど近くにいられたら困る!

 俺の心臓がああああああああああああ!!


「め、メア……す、少し、ち、近いんだけど……」

「はい? ……あっ…………も、申し訳ありませんっ!」


 俺が顔を真っ赤にしながら指摘すると、メアは一瞬キョトンとした顔を晒した後、意味が分かったのか、少し頬を染めて少し離れた。


「「…………」」

 

 お互いに流れる気まずい雰囲気を壊すように、俺は一度咳払いをした後、訊きたかった事を訊いてみる。


「なぁ……どうしてメアが此処にいるんだ?」


 正直今日のことは突然に決まったことのはずだから来れないどころか知らないとも思っていたんだけど。


「理由は2つあります」

「2つ?」

「はい。まず1つ目は———ジン様が心配だったからです……」


 ———はうあっ!?


 相変わらず表情は殆ど変わっていないものの、上気した頬は艶やかで色っぽく、俺よりも少し身長が低いため必然的に上目遣いなり……的確に俺のハートを撃ち抜いて爆発させた。

 

 俺はそんな健気な事を言ってくれるメアに胸を押さえてよろめく。


 さ、さっきからいきなりの事が多くないですか……?

 もう既に俺のライフはゼロに近いんですけど。

 でも超嬉しい。今すぐに此処で小躍りしたくなるほどに。

 

「ふ、2つ目は……?」


 俺は若干息絶え絶えにならながらも聞いてみる。

 すると、メアの口から出たのは意外な言葉だった。


「…………学園長からの依頼を受けたのと、お金が足りないからです」

「…………え?」


 俺は本日2度目の素っ頓狂な声を上げてしまった。

 しかしこれはしょうがないと思う。

 

 だってついこの前両親からお金をふんだくって来たばかりだからだ。

 そのため3年間は余裕で暮らせる程のお金があったはず……。


「……ジン様、覚えていらっしゃらないのですか? この前の買い物でルド様達に『早めの結婚祝いだ!』とか言って沢山高級な家具を買っていらっしゃったではありませんか」

「あ、あー……」


 ごめんなさいめちゃくちゃ覚えています。

 そう言えばお金が貰えたのが嬉しくて遂に財布の口が緩くなってしまったんだったわ。


 ……ってことは此処にメアが来たのって俺のせい……?


 俺はその考えまで辿り着くと、一度目を閉じてゆっくりと開く。



「…………モンスターは全て俺のモノだ……!」



 今回の授業は本気でモンスターを狩る事を決めた。



—————————————————————————————

 次回ジンの無双(必死)回です。

 お楽しみに!

 

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