第39話 主人公不在での校外授業
「今日は全ての授業を中断して、校外授業を行うことにする」
担任の軍隊女が教室に入ってくると同時にそう宣う。
いきなりの事で生徒達はザワザワとしていたが、俺だけは別であった。
……やっぱり来るのか……校外授業……。
そう、遂にやって来てしまったのだ。
主人公の第1覚醒イベントが。
もう一度言おう―――
大事なことだから2回言ったが、問題はその主役であるユージンが不在な事である。
アイツは俺を貶めようとした件で1ヶ月の停学を言い渡されているため、現在もまだ学園に来ていない。
これを逃せば、ゲームよりも大分実力が落ちるだろう。
まぁ自業自得なので全く可哀想とは思わないが……ボスは主人公に倒してもらわないと困る。
そんな面倒なことを誰が進んでやると言うのか。
「ししょー! 校外授業ということは……沢山の魔法を見せてくださるのですね!?」
「おいジン……いつの間に王女殿下と師弟関係を結んだんだ?」
沢山考えないといけないことがあると言うのに、コイツらが五月蝿くて集中できない。
「五月蝿いぞお前ら。ルドには後で詳しく説明するから今は黙っていてくれ。それに俺はシンシアの師匠にはならんと言っているだろうが」
俺がそう言うと、シンシアはぷくっと頬を膨らましてご機嫌斜めになり、ルドは仕方無いと言った表情をしていた。
全く……周りに人がいるのも考えものだな。と考えていると、軍隊女がゲームと同じ様に校外授業の詳細を話し出す。
「校外授業は本来1ヶ月後にあるはずだったものだが……最近その校外授業の舞台である『精霊の森』の魔物が森から出てきて被害に合っている村が多発している。理由は不明だが、現在騎士団も魔法師団も別件があるため手が空いていない……と言う事で私達がやることになった。勿論拒否権はないぞ」
そんな馬鹿げた事を言う軍隊女には、流石に生徒達から不満や、心配の声が上がる。
「どうして私達なんですか!?」
「そうですよ! せめて上級生がやればいいじゃないですか!!」
「俺達じゃ行った所で大して戦力になりませんよ!」
生徒達の言うことは最もである。
俺もゲームの時に、流石にそれは学園としてどうなんだよ……まぁそれはゲームだからしょうがないか、と割り切っていたが……いざそれが現実になると理不尽以外の何者でもないな。
生徒達に死ねと言っているようなもんだもん。
だが、幾ら俺達が文句や不満を垂れた所で学園側の決定は覆らない。
「諸君の言いたいことも分かるが……どうせ卒業後には魔物と戦うのだから、このくらいで文句を言うな。それにこのクラスの生徒は優秀な者達ばかりだ。強い魔物は私達教師が戦うから、諸君は弱い魔物の駆除を頼むぞ」
それじゃあまた転移ゲートで。と言い残して軍隊女は教室から出ていった。
それと同時に教室が一気に五月蝿くなる。
「ししょー! 早く行きましょう! そして早く魔法を見せてくださいっ!!」
「さて……色々と説明してもらおうか?」
勿論俺の周りも。
2人同時に話されても俺は当時に受け答えは出来ないので、一先ず魔法バカのシンシアの頭を小突いてからルドの方を向く。
「あいたっ!?」と毎度お馴染みのうめき声を上げて頭を押さえながら睨んでくるシンシアは無視しておこう。
「えっとだな……簡単に言うと、シンシアは生粋の魔法バカなんだが……俺が魔法を見せたら自分の師匠になってくれって言い出した」
「はいっその通りですっ。ですが、ししょーは全然私のししょーになってくれないのです……」
「……おい、どうして師匠になってやらないんだよ」
シンシアに聞こえないほどの声量で訊いてくるルド。
「……俺が師匠になったら休日まで侵蝕してくるかもしれんだろうが。それだけはダメだ。メアとの時間は俺にとって何よりも大切なモノだからな」
メアの時間を邪魔しようとする奴は例え神だろうが許さん。
「あー……確かにあのテンションなら『来ちゃいましたっ!』とか言って普通に休みの日に来そうだもんな」
俺の言葉を聞いて納得顔のルド。
この数日で的確に相手の性格を把握するとは流石暗殺者と言った所か。
「よし、なら俺も支障になるのを諦めて貰えるように手伝ってやるよ」
そんな頼もしい事を言ってくるルドには期待大。
俺は期待の眼差しで、シンシアに話し掛けるルドを見る。
「王女殿下? ジンも何かと忙しいので師匠になるのはちょっと厳しいかも……」
「えっ……ダメなのですか?」
「い、いや……それがな……」
あれ? なんか雲行きが怪しくなってきたんだけど……。
「ルド様……私と一緒にお願いしてくださいませんか……? 貴方様だけが頼りなんです……」
そう言ってウルウルと目を潤ませて上目遣いを繰り出すシンシア。
その姿を見たルドは―――
「―――王女殿下。このルド・アサシンが必ずやジンを説得してみせましょう!」
「ありがとうございますっ!」
―――あっさりと掌を返して裏切りやがった。
俺は2人の頭を無言で叩く。
「貴様ら……いい加減にしろ。兎に角俺は師匠などやら……な……」
俺は自分の言葉が尻すぼみになって居るのを自覚するも、今はそんな事を気にしている余裕など無かった。
いつの間に静かになったと思ったら、皆が俺達を見ている。
それどころか、
「王女殿下の頭を叩くとか……ありえないだろ……」
「しかも年下で女の子なのにね」
「控えめに言って最低ね」
と批判を受ける始末。
「……チッ……」
俺は非常に居た堪れなくなったのと、もう一人の王女殿下からの怒りの視線から逃れるために、逃げるように教室を出た。
だが、あまりにも理不尽だと少しイライラしたので、教室を出る瞬間に音魔法で爆音を響かせてやった。
皆驚いた様に椅子から転げ落ちたり、ずっこけたりしていたのはとても面白かったとだけ言っておこう。
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最近この作品の応援コメントが掲示板みたいで草。
まぁ見てるこっちは楽しいだけだけど。
メア派とシンシア派の争いもそれ以外も殆ど全てちゃんと見てますww
下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくださると嬉しいです。
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