第38話 悪役ヒロインと悪役貴族
総合週間9位&ジャンル別週間6位ありがとうございます!!
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俺は現在、停学明けなのにとても疲れていた。
原因は勿論俺とルドの間に座っているシンシア第2王女殿下である。
正直言ってむちゃくちゃ何処かに行って欲しい。
コイツが居るせいで、折角皆から無視されていたのにまた注目を集めてしまっているのだ。
理由は殆ど察しが付くが……違うことを祈って嫌々ながら訊いてみる。
「……何故此処に居られるのですか、シンシア王女殿下? 自分で言うのもアレですが、私の噂は知っているでしょう?」
「はい勿論です。しかし、私は自分で見たものしか信用しないので、これから貴方の事を知っていこうと思います」
「お断りしま―――いえ、何でもありません」
俺が速攻で断ろうとすると、ソフィア王女の方から鬼のような睨みを向けられたので言葉を取り消す。
しかし……本当に面倒な奴がやってきやがったな……。
―――シンシア・フォン・ブリリアント・プルーフ。
長ったらしい名前からも分かるように、ソフィアの妹にしてこの国の第2王女である。
性格は純粋無垢な少女に見えるが―――いや、純粋無垢なのは間違いないが―――えげつないほど生粋の魔法バカで、その技量、知識共にそこらの天才などよりも遥かに優秀だった。
しかし自身には人並みの才能しか無いため、どうしても限界が訪れ、圧倒的な才能を持つ姉に追いつけないもどかしさから、密かに嫉妬していて、打倒姉を目標に掲げていると言った設定だったはずだ。
だが、その性格のせいで後に主人公たちの敵となってしまう、謂わば俺と同じ悪役。
何度も登場する俺と違って、彼女は一度きりでそのまま死亡エンドが確定する―――
―――そんな地雷ばっかの奴に目を付けられるとか俺も運がないな……。
まぁ大方国王が俺を他国に行かないように引き止めておく為のストッパーの様な感じで此処に送られたのだと思うが……それって主人公であるユージンがされることなんだよね。
それに選ばれるのはソフィアでシンシアではない。
シンシアがやって来るのは1年後の入学式で、普通に1年生として入ってくるはずだ。
しかしそんな彼女がこの時期にやって来たと言うことは……
「……完全に俺達が好き勝手やったからだよな……これ」
ユージンがストーリー開始前に王女を助けたのと、俺が決闘に勝った事が大きな原因だろう。
要は自業自得ってわけだ。
俺は、今この瞬間もニコニコと楽しそうに魔法授業を聞いているシンシアをチラリと見ては、大きくため息を吐いた。
「―――ジン様! 私に魔法を見せてくださいっ!!」
時は少し流れて昼休憩。
そんな面倒極まりないお願いをしてきたシンシアに、俺は超嫌々ながらメア特製のお弁当(等級:神級以上)を食べるのを一旦止める。
「シンシア王女殿下……今は昼休憩中です。シンシア王女殿下も少しは食事をなさってはどうですか?」
「いいえ大丈夫ですっ! そんな事よりも魔法が見たいのです! ―――あっ私の事はシンシアとお呼びください。敬語も不要です……と言うか敬語を使われると距離を感じるので嫌いなんです」
よし、なら敬語は無しにしよう。
ずっと敬語で会話するとか普通に堅苦しくて死ぬ。
「なら……ごほんッ……あーシンシア、取り敢えず今後俺に【念話】を使うは止めろ」
『この様にですか?』
そう言っていたずらっ子の様な笑みを浮かべて【念話】を使ってきたので、俺は無視して弁当を貪る。
「あ、あの―――」
「……」
あーメア特製の唐揚げうめぇ……相変わらずメアは料理が上手いなぁ。
「ジン様……あ、あれ? ど、どうして【念話】が―――」
「……」
今度は炒飯でも作って貰おうかな?
絶対メアなら上手く出来ると思うんだよ。
「―――無視しないでくださいっ!!」
俺の耳元で叫ぶシンシアに、俺は我慢の限界を迎えキレる。
「―――分かったから耳元で叫ぶな!!」
「あいたっ!?」
俺は弁当を優しくベンチに置いて、シンシアの頭を軽く小突く。
「お前には今俺が弁当を食べているのが見えないのか!?」
「見えていますよっ!! ですが無視しなくてもいいじゃないですかっ!!」
頬を膨らませながら俺に食って掛かるシンシア。
その姿は年相応に見え、状況に置いては可愛く見えるのだろう。
しかし、今この時には物凄く面倒極まりない。
もう、適当に魔法見せてとっととその好奇心を満たしてもらおう。
「シンシアは俺の魔法が見たいんだったな?」
「そうですっ! ついでにさっき
そう言ってキラキラとした目を向ける。
その食い気味なシンシアに若干引きながらも、適当な魔法を発動させた。
「―――【多重展開:水球・光球】【破裂】―――」
直径30センチ程の水の球と光の球が何十個も現れ、シンシアの周りをぐるぐると回る。
しかし直ぐに俺達の上に全ての球が移動すると、ぶつかって破裂。
辺りに細かな水飛沫が舞い、光に反射して擬似的な虹ができる。
「うわぁぁぁぁぁ……ふぁぁぁぁぁぁぁ……凄すぎます……これ程一気に魔法を発動できる人は王国の魔法士にも居ませんよっ!!」
虹を見ながら終始飛び跳ねて喜んでいたシンシアだったが、1分ほどで虹が消えると突如静かになる。
だが、俺的には静かに飯を食べたかったので特に気にせず食べていると―――
「―――ジン様……いえ、ししょー! どうか私に魔法を教えて下さいっ!!」
「だから耳元で叫ぶなッ!!」
「あいたっ!?」
そんな馬鹿な事を俺の耳元で言ってきたシンシアの頭を再び小突いた。
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