第33話 決闘後ですよ

 ☆1000&日間総合8位、ジャンル別日間5位感謝です。

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 ―――2日後。


「ジン・ディヴァインソード君」

「はい」

「君には決闘での事はすべて不問とする。だから儂がケール侯爵家からの損害賠償なども全部突っぱねておいたぞ。感謝せぇよ?」

「ありがとうございます」

「じゃが……観客達に魔法を向けたのは儂の力を持ってしても無理じゃ。じゃから―――1週間の休暇を言い渡す。しっかり遊んでくるんじゃぞ」


 俺は学園長に呼ばれて学園長室に来たのだが、開門1番にそんな事を言われた。

 どうやらあの決闘には王女さんの両親―――この国の国王も居たらしいが、その人にも魔法を向けたのでお咎めなしとはいかないらしい。


 まぁ普通なら魔法を向けた時点で死刑にされても文句は言えないのだが、今回は王女さんも決闘に少し関わってしまったのと、軍隊女が介入したのが原因なのでこの程度の処罰で済んだ。


 と言うか、教師ともあろう者が、処罰の停学を休暇なんて言っても良いんだろうか?

 なんて思ったが、それよりも訊いておきたいことがある。


「学園長、強姦の犯人は俺ではない……と言うので認めてもらえましたか?」

「おお勿論じゃ。まぁあれほど証拠が揃っておいて、今更君を犯人になど出来んじゃろ」


 学園長の言うことは最もである。

 決闘の条件は負けた方が真実を語ると言うもので、負けたユージンが全て話した。

 

 やはり計画を考えたのはユージンらしく、実行したのがユフィとその取り巻きたち。

 ユフィは廃人となってしまったので記憶を見られたが、ユージンの証言と同様のことを行っていた為、俺の無罪は確定と言うわけだ。

 因みに取り巻きの2人は強姦どころか図書室にも行っていなかった。

 休んでいた日は仲良く街で遊んでいたと言う目撃情報もある。


 散々振り回されておいて何だが、蓋を開けてみれば杜撰としか言いようのないものだったな……。

 まぁ俺の冤罪が晴れてよかったとでも思っておこう。

 

 俺が無理やりそう納得していると、学園長が突然無詠唱のノーモーションで魔法を放ってきた。

 しかし特に強い魔法でも無かったため簡易結界で防ぐ。

 そして自然の魔力を使って学園長の周りに何十もの魔法を展開する。


「……どう言うつもりだ、学園長? 回答によっては全ての魔法を撃つ」


 俺が殺気を纏って魔力を操作しながら睨むが、学園長はヘラヘラと飄々とした雰囲気で頭を下げる。


「すまんすまん。いやぁのぉ……あの時は儂は居なかったからどれほどの腕前か見たかったんじゃ許してくれ」

「……チッ……次やったら問答無用で潰します」

「おおー怖い怖い。じゃがお主ではちと実力不足ではないかのぉ?」

「……チッ……」


 眼の前のクソジジイがそう言う言葉に俺は反論できない。

 

 学園長―――アルド・ミラクル。

 ゲームの所謂お助けキャラ的な立ち位置で、主人公のピンチに駆けつける実力不明の猛者だったが、ゲーム終了後の設定集にはこう書いてあった。


 軍隊女ルシアの師匠であり、前人類最強と。


 そして今相対して分かったが、間違いなく強い。

 負けはしないかもしれないが、勝てもしない。

 正直あの軍隊女とは比べ物にならないくらいの強さをひしひしと感じる。 

 これでも全盛期よりも衰えたらしいが、未だ人類最強の名は伊達ではないということか。


 此処で敵対するのは得策ではない。

 それに俺の罪を軽くしてくれたのはこの人のお陰らしいし。


 俺は取り敢えず展開していた魔法を消し、肩の力を抜く。


「はぁ……まだ俺にはアンタは荷が重いらしい。だが……俺とメアの邪魔はしないでくれ」

「分かっておるわい。今回の決闘もメアちゃんに危害が加わるからと訊いておるしのぉ」

「そう言う事だ。じゃあもう行っていいか?」

「うむ。もう行って良いぞ」


 俺はその言葉を聞いて、精神的な疲れを感じながらメアの元へと戻った。







 

 ジンが学園長室を出た後、1人の男が入ってきた。

 その者はこの国の国王であるレオンハルトである。

 

「やぁアルド。さっきまで例の子と話していたのかい?」

「おお来たかレオンハルト。そうじゃ、ジンとか言うディヴァインソード家の次男と話しておった」


 2人は幼馴染と言った関係で、何十年たった今でもこうして会うほどに仲が良かった。

 しかし今回は和やかな話をするために集まったのではない。


 穏やかな雰囲気は直ぐに鳴りを潜め、ピリつくような緊張感が漂う。


「……それでどうだった? ジン・ディヴァインソードは?」


 業務の時の口調に変わったレオンハルトに、アルドは先程相対して感じたことを嘘偽り無く言う。


「一言で言うと―――アレは儂以上の才能の持ち主じゃ。正直後数年で儂の全盛期の力をも抜かされるであろうな。才能だけで言えば、ルシアやソフィアよりも上じゃ」


 その言葉にレオンハルトは大きくため息をついた。


「そうか……なら絶対にこの国から出ていってもらっては困るな。よし―――ソフィア……はあの坊主に夢中だからシンシアを向かわせるとしよう。ソフィアよりも魔法の才はないが、美貌と知略はソフィアをも超えるからな」

「まぁ妥当であろうな。じゃが……多分籠絡は出来んじゃろうな」 


 アルドの確信した様な口調にレオンハルトは眉をひそめる。


「何故だ……?」

「まぁそれは後からのお楽しみと言う事にしておこうかのぉ」


 アルドは1人、ジンが面倒がる姿を想像してカッカッカッと笑い声を上げた。


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