第32話 悪役貴族の本気
遅れて申し訳ありません。
それと前話の【地獄形成】を【地獄創造】に変更しました。
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―――【地獄創造】。
それは空間、時間、重力、火、水、地、風、光、闇の全てを複合した、最上級の魔法を超えた人類の扱える中で最強の超越級の魔法である。
7年前に俺があの変なモンスターを呼び込んだ自空間の超魔改造版と言った所か。
あの時は時間と空間を発動するのが限界だったが、この7年で何とか完成させた。
根本的な作りは昔と変わらないので、あちらの世界ではいきなり俺達3人が消えたと大騒ぎしているだろう。
しかし此処でないとあの軍隊女とかそれよりも強い奴に邪魔されそうだったので、仕方がない。
この世界の見た目は誰もが想像するような地獄そのものである。
流石にケルベロスや鬼はいないが。
「な、何なんだよ此処……」
「と、とても暑いですわ……」
【水の鎖】から開放された2人が呆然と呟く。
そんな2人に俺は軽快な声で話しかける。
「よく来たな2人とも。此処は俺の世界―――
「ふ、巫山戯るな!! 早く僕を此処から出せ!!」
「そうですわ!!」
「あーはいはい、ちゃんと出してやるから少し話を聞け」
俺は1つの指を立てる。
「此処から出る条件は唯一つ―――俺に勝つ事だ。何をしても良いぞ? 俺に勝てるのであればな」
俺がそう言うと、2人が真っ青な顔を赤く染めて叫ぶ。
「そんなの無理に決まっているだろうが!!」
「その通りですわ!! そんな事しないでさっさと返してくださいまし!!」
俺が空に手をかざすと空が一気に暗くなり、『ゴロゴロッ!!』と言う音と共に雷が落ちて2人の近くの地面を破壊する。
「ヒッ―――!?」
「い、いやあああああ!!」
「お前らに選択肢はないんだよ。戦うか此処で死ぬか。2つに1つだ。 来ないのなら―――俺が行く」
俺は《災厄の杖》を指輪から杖に戻し、魔法を唱える。
「―――【
その瞬間に地面から青い炎が噴き出し、幾つもの纏まりに散らばって一直線に2人の下に接近する。
その威力は余裕で最上級に届くだろう。
2人程度なら、これに当たればひとたまりもない。
それにいち早く気付いたユージンが全力で魔法を行使する。
「クソッ―――【
光輝が光速で光り輝く剣を振るうと、その剣から斬撃が生まれ、何十もの炎を切り裂く。
これは確かユージンのとっておきの技で、ゲームでは何度も助けになったが、実際に見てみても相当な強さを誇る技だと痛感させられるが……まぁそこまで脅威ではないな。
一方で気付くのに遅れたユフィはと言うと―――
「ギャア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”…………」
抵抗することなど出来ず青い炎に包まれ、叫び声を上げていた。
しかし直ぐに叫び声は止み、青い炎が消える。
この青い炎には対象が死ぬまで燃え続けると言う能力があり、その青い炎が消えたとなると―――
「ユフィ先輩ッッ!!」
ユージンがユフィに近付くが言葉は返ってこない。
それどころか体が原型を保てずサラサラと灰になって消えていった。
それを見届けた俺は、少し残念に思いながら呟く。
「あーあ、もう死んじゃったか……まぁ悪役令嬢程度だったらこんなもんか」
「巫山戯るな!! お前は人を殺したんだぞ!? 何故そんなに正気でいれる!?」
ユージンが激昂して剣を振るってくるが、俺は【身体強化】を発動して、まるで止まっているかのような遅い攻撃を避けて後ろから蹴り飛ばす。
「ガハッ!?」
「そもそも今回の決闘で貴様は俺を殺す予定だったんだろ? ならお前も人のことを言えないんじゃないか? それに―――【完全蘇生】」
魔法を唱えると、先程ユフィが居た所に魔法陣が現れ、光と共に殺される前のユフィがそこに座っていた。
ユフィは自分の体がある事に気づいた途端―――
「いやああああああああああああああああああ!! いたいいいいいいいいいああああああああああああ!?」
狂った様に泣き叫び出した。
体を血が出るほどに掻き毟り、最後には魔力暴走を起こして爆発。
その姿を見たユージンは顔を恐怖に歪めて固まっている。
「い、いま何が……」
「いや、ただ自分が死んだ記憶を思い出してフラッシュバックを起こしているだけだ」
人は死んだら普通は記憶は無くなる。
しかし俺の蘇生は死ぬその瞬間までの記憶を引き継いで復活するのだ。
普通に即死ならまだしも、焼死となると相当なトラウマを抱えることになったとしてもおかしくない。
俺は完全に壊れてしまったユフィに適当に完全蘇生のループを施すと、ユージンに向き直る。
「流石にお前は殺しはしない。だってこれからのストーリーも頑張ってほしいからな」
「―――えっ……?」
俺の言葉にユージンの動きが止まった。
そしてその顔には、「嘘だ……信じたくない」といったような表情が浮かんでおり、現実逃避している。
「う、嘘だ……そんな……僕の他に転生者だと……?」
「お前がしているんだから他にも居るのは当たり前だろ。自分だけが特別だとでも思っていたのか?」
俺がそう言うと絶望の表情を浮かべた。
しかし直ぐに顔を真っ赤に染めると―――
「ふ、巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るなあああああああ!! 僕こそが特別なんだ!! 僕は主人公だぞ!? 僕が―――」
「―――【
黒い嵐がユージンを包み込む。
「あああああああああ!?!?」
「五月蝿い。そもそもお前が特別かなんてどうでもいい。俺はただメアに危害を加えようとした貴様を壊そうと思った……それだけだ」
黒い嵐が止むと共に、ボロボロのユージンが地面に投げ出される。
「あ、ああ……そ、そんな……」
「―――【
「ちょ、待っ―――」
地が割れ、そこから現れた大量の水のドラゴンがユージンを呑み込んだ。
3人が消えてから10分後。
決闘場は未だしんと静まり返っていた。
そんな中で突如舞台の真ん中に転移のゲートが現れる。
そこから現れたのは―――
「ふぅ……魔力がもう殆どないな……おい、さっさと屑を運べ」
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません」
「………………」
大して変わりのないジンと、泣きながらずっと謝っているユージン、もう何も話すことも動くこともしない完全な廃人となったユフィの姿だった。
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