第30話 悪役貴族、キレる
目の前のユージンを見ながら、俺は非常に面倒だなと思いながらも真実を答える。
「―――知らん」
「……何だって?」
「だから知らんと言ったんだ。何故俺がそんな馬鹿な事をしなければならない?」
そもそも俺は腐っても公爵家の子息だ。
正直女なら幾らでも手に入る。
それなのに俺だと思うのがおかしいのだ。
「それに俺は昨日ルドと一緒だった。その犯人とやらは1人ではなかったのか?」
「だ、だけど……ジンも図書室に居たんだろう!?」
「ああ居た。だが俺が居た間に女子生徒どころか誰も来なかった。それなのにどうやって俺が図書室で強姦するんだ? 貴様は俺に本を強姦しろと言いたいのか?」
「ブフッ……ほ、本を強姦……ブフッ!!」
俺が半笑いでそう言うと、俺の言葉にルドが噴き出す。
まぁ本は生きてないから強姦なんて絶対に出来ないからな。
俺達が笑っていると、ユージンが口を開く。
「……ジンは本当にやっていないと?」
「ふっ……愚問だ。俺にメリットがない。その生徒たちが誰か知らないが、ウチのメイドよりも綺麗でない奴を襲う理由がない」
「まぁ確かにメアさんは超美人だよなぁ……」
「貴様……サーシャにシバかれるぞ」
「おっと、これは内緒にしてくれジン」
俺達が軽口を言い合うと共にユージンの額に青筋が立ってきた。
「君は今の状況が分かっていないのかい?」
「分かっている。だが、俺はやっていないと言っているだろう?」
「はぁ……素直に白状してくれればよかったけど……こうなれば本人に確認してもらうしかないね」
ユージンがそう言うと、教室に1人の女子生徒が入ってきた。
そう―――俺の元婚約者のユフィである。
「君も知っているだろう? 君の婚約者なんだから」
「ユージン様、彼とは元ですわ」
「婚約破棄は何方から?」
「勿論私ですわ。悪い噂の多いジン様と一緒に居ることなんて出来ませんもの」
「因みに王室にもその様に報告を受けています」
ずっと黙っていた王女さんが言う。
その言葉で俺は、ディヴァインソード家が落ちこぼれの俺ではなく、ケール侯爵家との関係を選んだ事を悟った。
まぁ俺は公爵家から見たら邪魔以外の何者ではないので仕方ないと言えば仕方ないが。
「なるほどね……それよりユフィさん、君が撃退したのは彼だったかい?」
ユージンがそう問うと、ユフィは俺に向けて邪悪な笑みを浮かべ―――
「―――そうですわ!! 私が攻撃したときに一瞬だけ彼の顔がみえたんですもの!!」
嘘100%の爆弾発言を繰り出した。
その言葉にクラスメイト達がざわざわとしだし、ユフィは更に笑みを深める。
「どうだいジン? 本人がそう言っているんだけど?」
ユージンが此処ぞとばかりに自分の推理(笑)を話し出す。
「ジンはユフィさんとの婚約破棄を快く思っておらず、図書室に居た取り巻き2人を腹いせに暴行して犯行に及んだ……どうだい?」
そのユージンの言葉に、王女さんだけでなく、話を聞いていたクラスメイト達も納得の表情を見せていた。
これだと本格的に俺が犯人に仕立て上げられるだろう。
俺の発言力はこの2人に遠く及ばないので、幾ら俺が反論しようがどうにも出来ない。
俺が黙り込んでいると、ユージンがこんな事を言ってきた。
「はぁ……これでも認めないんだね……ならその決闘だ。真実を言うことを条件として決闘をしよう」
俺の言葉に教室が今日1番のざわめきを見せる。
だがこの中で笑みを浮かべている奴が1人。
それは勿論ユフィだ。
一見いきなりの様なユージンの決闘の宣言だが、ユージンが俺に決闘を申し込んだ瞬間に2人して笑みを浮かべていたので、コイツら実は手を組んでいる気がする。
大方ユージンは俺が中々決闘を挑んでこなかったから焦ったのでろう。
ゲームのストーリーと違う……と。
そしてユフィは……多分婚約破棄のことだろうな。
その証拠に俺の耳元に口を近づけてボソッと言ってきた。
「親に捨てられて……無様ですわねジン様? ですが、貴方が私との婚約破棄をしたのが悪いのですわ。あっそう言えば、貴方に仕えているメイドが居ましたわよね。確か……名前はメアでしたわね」
「……何が言いたい?」
俺の体に自然と力が籠もり、歯をギリッと噛む。
そんな俺を見てユフィが面白そうに「ふふっ」と笑うと、絶対に言ってはならないことを口にした。
「彼女にも……私のお友達と同じ苦痛を味わってもらうのはいかかでしょうか? 貴方の目の前で」
……………。
俺の中で何かが切れる音がした。
「―――貴様ら」
正直分からない事は沢山ある。
何故、主人公と悪役令嬢が手を組んでいるのかなんて特に意味が分からない。
ユージンは転生者なんだから、悪役令嬢の性格は知っているはずなのに。
だが、そんな事どうでもいい。
どうせ―――俺に負けるのだから。
「―――いいだろう。だがその代わり……ユフィ、貴様もだ。貴様ら2人、まとめて相手をしてやる」
もう力を隠すのは止めだ。
メアに危害を加えようとする奴は、誰であろうと絶対に―――
―――ユルサナイ。
—————————————————————————————
次回、主人公&悪役令嬢VS悪役貴族。
今までのイライラは此処でおさらば!
ぜってー見てくれよな。
……運営さんに怒られないかな?
下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくださると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます