第28話 神級アイテム《災厄の杖》ですよ(改)
俺はルドを抱えたまま、再び廊下をひたすら歩く。
まぁ歩くと言っても軽く前世の人類最速よりも速いが。
実はこの廊下にも様々なトラップが仕掛けられている。
例えばありがちな落とし穴や矢のトラップは勿論な事、魔法が封じられたトラップやモンスターが出現するトラップなどなど……。
しかしそんな誰もが引くであろう凶悪なトラップは―――
「―――【多重結界】【
ルドが気絶しているのをいい事に、俺が結界魔法や時間魔法、破壊魔法を何重にも掛けてゴリ押ししている。
どれだけ斧が降ってこようが、炎魔法が吹き荒れようが全て俺の結界の前に敗れていた。
「ふぅ……やっぱり誰かを担ぎながら動くのはキツイな……でもこっちの方が何かと都合がいいから起こさないけど」
流石に俺が異常なほど魔法が使えることをまだルドは知らないので、気絶している時程気にせず使える時は無い。
まぁ10年間全く剣術の鍛錬をしていないため、体力はそこらの魔法使いよりはあると思うが剣士と比べればクソ雑魚なので、正直走りたくないが。
「これ一体どれ位あるんだよ……」
俺はまだまだ終わりの見えない事に辟易するが、その後に待ち構えている報酬のことを考えて気を紛らわせながら先へと進んだ。
「―――おい、起きろルド! 貴様何時まで寝ているつもりだ!?」
「――――はっ!?」
俺はあれから2時間程歩き続けた後、目的地にやっと着いたのでルドを起こす。
この野郎……ついぞ2時間起きることはなかった。
それどころか揺れていたはずなのに一向に起きないため、わざわざもう一度シェイドを呼んで魔法が掛けられていないか調べたほどだ。
「いいご身分だなルド? 公爵家の俺に2時間ぶっ通しで担がせるとは」
「い、いやぁー…………申し訳ありませんジン様」
ルドは始めどうにかして誤魔化そうとしていたが、俺のジト目と雰囲気に耐えきれなかったのか素直に謝罪してきた。
「まぁいい……その代わり今度2人分の荷物を持てよ」
「なっ!? それはなしだろ!? あんなの物理的に持ちきれねぇよ!」
因みに俺達が言っているのは、俺、メア、ルド、サーシャの4人で買い物に行く時の荷物持ちの話である。
ルドの言う通り、メアとサーシャ―――特にサーシャがめちゃくちゃ色んな物を買う。
まぁその殆どが自分の物じゃなくてルドや将来の2人の物だが。
どうやらルドとサーシャは親が親友らしく、平民と貴族でありながら結婚を約束しているんだとか。
まぁその代わりルドは貴族を辞めて平民として生きていくらしい。
そのための準備を今から始めているんだとか。
正直言ってめちゃくちゃ羨ましい。
だって俺の元婚約者はあんな感じの屑だぜ?
それとは比べ物にならないくらいいい人じゃんか。
「殆どが貴様の嫁の物なのだから大して変わらん」
「いやまぁそうなんだけどさ……はぁ分かったよ。次だけな」
ルドはガックリと肩を落として頷いた。
「そう言えばさ……何で此処に来たんだ? 何かあるんだろ?」
ルドが目的地である小部屋を見渡して首を傾げる。
まぁ此処は見た感じ、家具も何もないただ薄暗いだけの部屋だもんな。
此処に来た理由がわからないのも無理はない……が、此処にはジン専用と言っていい武器があるのだ。
「俺の武器が此処に眠っている」
「ジンの武器? でも此処って何百年も前に作られたんだろ? なら何でお前の武器になるんだよ。と言うかそもそも武器なんて見当たらないし」
ルドが俺のことを可哀想な子を見る目で見てきた。
その視線に少々イラッと来たので、無言で魔力を放出する。
しかし放出された俺の魔力は、即座に部屋の真ん中にある小さな穴に吸い込まれた。
「……何してんだ? いきなり魔力を放出し―――!?」
ルドの話している途中で、いきなり部屋が『ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!』と言う音をと共に大きく半回転する。
「うわっ―――ってジン! やるならやると言ってくれよ!」
「五月蝿い。貴様が俺に可哀想な子を見るような目を向けるのが悪い」
と軽口を言い合っているものの、俺達の視線は1つに固定されていた。
半回転したことにより出現した小さな部屋の奥の地面に突き刺さり、鎖が幾つも繋がっている1つの杖。
長さは大体2メートル程で、全てが漆黒に染まっている。
そしてその杖と鎖からは禍々しい赤黒い魔力が漏れ出ていた。
その武器の名は―――『災厄の杖』。
レアリティーはゲーム中に10個もない神級。
嘗て世界を災厄に巻き込んだとされる1人の魔法使いが愛用していたとされる武器で、ゲームでは魔法系武器の中でも群を抜いて強かった。
能力は全部で3つあり、その中で1番弱い能力でも、魔法威力2倍だ。
もはやぶっ壊れである。
だがプレイヤーは使うことが出来ず、後にジンの手に渡る―――正しく俺に相応しい武器というわけだ。
「今日から俺が新たな主だ。来い―――『災厄の杖』」
俺が魔力を更に込めると、鎖がボロボロと朽ちて行き、地面に突き刺さっていた杖が宙に浮く。
更には膨大な魔力が渦巻き、周りの物を消して行く。
しかし俺が近付くと、俺の下に一直線に飛んできた。
「おいあぶっ―――」
「大丈夫だ」
ルドが心配そうに声を上げたので、それを制し、手を前にかざす。
するきれいに俺の持ちやすい様に止まり、その姿が小さな指輪へと変化していく。
そしてその指輪は俺の人差し指へと嵌った。
「よし、これで契約完了だ―――どうしたルド?」
ポカンと口を半開きにして呆けていたルドは、俺の声で意識を取り戻し、鼓膜が破れそうなほどの声量で叫んだ。
「いや、全然ついていけないんだが!? ちゃんと説明しろよジンッッ!?」
……ですよねー。
俺はそれから1時間ほど必死に説明を行った。
途中途中で危ない所が多々あったのは言うまでもないだろう。
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