第26話 学園の隠し部屋ですよ
悪役貴族である俺に、ルドと言う親友が出来てから2週間。
最近では授業を一緒に受けるようになっただけでなく、放課後にメアとルドの彼女であり、平民のサーシャと遊びに行ったりしている。
そんなに親しくして良いのかって?
俺も始めは警戒していたので、最初の1週間は常に心を読んでいた。
読心系の魔法は既に失伝しているらしいので、対処のしようも無いだろう。
それで一度も俺に危害を加えようとしなかったので、メアにも合わせたと言うわけだ。
「なぁジン……お前何してんの?」
放課後になって、学園の魔導図書館に来た俺達だったが、本棚を執拗に触る俺にルドが半目で訊いてくる。
「見て分からないのか? 今スイッチを探してるんだ」
「いや誰が見ても分からんだろ! と言うか何のスイッチを探してんだよ」
「勿論隠し部屋だ」
「隠し部屋!?」
今日わざわざ此処に来た理由は今言った様に隠し部屋に入るための隠し扉を探すためだ。
ゲームでは大体の位置は分かったのだが、詳しい情報が無かったので、こうやって地道に触りながら探しているというわけである。
「……何で新入生のお前が知ってんだよ……」
「家の権力だ」
本当は前世のゲームの記憶なのだが。
流石にそんなこと言っても信じてもらえないだろうし、そもそも言う気もないので適当にはぐらかす。
それにしても中々見つからないな……ゲームでは近くに行けばマークが出てたからなぁ。
「なぁこれって何だと―――」
ルドが俺を見ながら全く違う場所の1つの窪みを少し押した瞬間―――
―――ガガガガガ……ッ!!
突然本棚が地面に吸い込まれる様に消えるとともに、目の前に頑丈な鍵の掛かった扉が現れる。
「「…………」」
その光景を2人で無言で見ていた。
俺はいくら探しても見つからなかった物をほんの数分で見つけたルドに驚いて固まり、ルドは扉がいきなり出てきた事により驚いて固まっていたためだ。
「……おい、どうしてあそこにあるんだ?」
「いや知らんわ! ジンがそもそも言い出したんだろ!? と言うか鍵掛かってるから開けられないじゃないか」
「まぁ見ていろ―――【
俺が扉の錠に解除魔法を掛けると、ガチャッ! と言う音を上げて錠が地面に落ちる。
今は丁度教師が居ない時間帯なので、特に音を気にする必要はない。
更に図書館に来る生徒は放課後には1人も居ないのはここ2週間で確認済み。
「お前……前から思ってたけど意外と魔法使うの上手だよな」
「この程度は余裕だ」
「全然この程度じゃないんだよな解除魔法は……」
俺達はそんな軽口を叩き合いながら扉の中に入った。
扉の中はひたすら廊下が続いていた。
勿論明かりなどなく、魔導ランプで照らさなければ5メートル先すら見えない。
まぁこの学園が作られたのは数百年前なので、火などとうの昔に消えてしまったからだろう。
「うわっ……学園にこんな所あったんだな……」
「まぁこの部屋の鍵は既に紛失しているから、誰も……それこそ学園長すら知らんだろうがな」
「なら何でお前が知ってんだよ……」
「……よし先に行くぞ」
「はぐらかすなよおい!!」
あぶねぇ……自分で墓穴を掘ってしまってたわ……。
コイツめちゃくちゃ頭いいからその内俺の転生もバレそうで少し怖い。
俺がルドの目敏さに戦々恐々していると、遂に廊下ゾーンが終わり、広くて天井の高い部屋に着いた。
その部屋には5メートルから10メートル程の騎士の石像が何体も立っており、ゲームと同じく魔導ランプに近しい何かのおかげで部屋の中は大分明るい。
「あーやっと明るい所にたどり着い―――グエッ」
「迂闊に近づくな! 貴様は此処がどんな所か知らんだろう!?」
俺は部屋に入ろうとするルドを焦りながら止める。
ルドはいきなり止められたことにより首が絞まったのか情けない声が出ていたが……まぁ死ぬよりはマシだろう。
「ゲホッゲホッ……いきなり引っ張んなよジン……」
「なら勝手に入ろうとするな! 貴様死にたいのか!?」
「え? でも此処に人間どころかモンスターの気配すらないぞ?」
そう言って部屋を覗き込むルド。
コイツ……命が惜しくないのか……?
「……これを見てから同じことが言えるのか見ものだな」
俺はルドに見せつける様に持ってきた大きめの石を部屋の中に投げ込むと―――
《侵入者を発見―――直ちに排除します》
そんな機械音と共に石像の騎士たちに魔力が宿り動き出す。
そして俺が投げた石を、手に持った大剣で明らかなオーバーキルだと思うくらいの威力で粉々に砕く。
俺がルドの方を向いて「どうだ?」と言った意志を込めた目を向けると―――
「……俺が悪かったわ……ありがとうジン」
そう言って顔を真っ青にしていた。
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明日は1話になりそうです。
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