第25話 イライラする魔法授業と親友ですよ

 中庭から戻った俺は、いつも通りボッチの最強ポジに腰を下ろし、次の授業の開始を待つ。

 序列が決まって、俺が最下位のせいかクラスメイト達の見下す様な視線が鬱陶しい。


 本気でやったらお前ら全員束になっても勝てるっての!

 

 なんて意味もないことを考えていると、ユージン、王女さん、アリア、軍隊女と主要メンバーが勢ぞろいで教室に入ってきた。

 皆仲睦まじく話しており、絆の強さをありありと感じれるせいで、男は嫉妬の嵐だ。


「おい、あのイケメンやっぱりウチのクラスの最上級美少女を全て攻略してやがるぞ」

「くそぉ……羨ましすぎるだろ……」

「遂には教師にまで手を出したのか!? まぁ……ルシア先生は俺は遠慮するけど……」

「それは俺も。どうせならヒーラーのエル先生がいいな」

「あーあのロリ巨乳のポワポワした先生か。確かにあの先生はマジで女神」


 因みにエル先生もメインヒロインのキャラであるため、残念ながら主人公に攻略される運命である。

 どんまい男子、きっとその内いい人に出会えるさ。


 俺が嫉妬に狂う男子生徒に合掌していると、軍隊女が教壇に立つと同時にチャイムが鳴る。


「よし、これから魔法授業を始める。私のことは皆知っていると思うので自己紹介はしない。では早速始めるぞ。まず魔道書の3ページを―――」


 こうして俺にとって初めての魔法授業が始まった。









 ―――20分後―――


 今魔法授業の真っ最中だが、一言で言うと―――全部習得済みで草。


 俺は授業の……と言うよりは生徒たちのレベルの低さに驚いていた。

 魔法としては初期中の初期である無属性魔法―――【魔力弾】【身体強化】を両方使うことすら出来ない生徒がいるのだ。

 因みに俺はこの2つを習得してほぼ完璧に使えるようになるまで5〜10分しか掛からなかった。

 幾ら俺の才能があろうが、流石にレベルが低すぎではないだろうか?


 例え剣士志望でも、この2つくらいは使えていないと冒険者として活動することすら出来ない。

 一体この15年間何をしていたのだろうか?

 これだから主人公たちが余計な負担を担うことになるんだ……ほんと迷惑だな。

 

 俺が頭が痛くなって頭を押さえていると、軍隊女が俺の方を見る。

 勿論バッチリ目も合ったぞ。

 あー物凄く嫌な予感が―――

 

「よし、ジン・ディヴァインソード、【身体強化】と【魔力弾】を使ってみろ」

「……は? 何故俺なのだ?」

「私がそう決めたからだ」


 ―――的中したね。

 いやほんと何で俺なの?

 俺には魔法の才を隠すと言うメアからのめいがあるんですが?


 しかし相手は理不尽の根源の様な奴だ。

 きっと俺が何を言った所で無駄だろう……と言うかイライラするだけなので無いも言わない。


「チッ……―――我が手に魔力の弾を―――【魔力弾】」


 俺は取り敢えず言われた通り魔力弾を軍隊女に放つ。

 因みに軍隊女に放った理由は、それが一番安全だからだ。

 決して俺を当てたことへの仕返しではないぞ?

 無いったら無い。


 しかし俺の超手加減した魔力弾程度では、軍隊女に魔法を使わせるどころか、肌に当たることなくかき消された。

 大方魔力で俺の魔法をかき消したのだろう。俺もよく使う。


「ふむ……まぁこれと言って長所の無い平均の精度だな。次は【身体強化】をしろ」


 やらせといてひどい言い草だなおい。


「……―――【身体強化】」

「無詠唱か。まぁディヴァインソード家ならこの程度は当たり前だよな」

「当たり前だ。それで、もう良いか? 俺は見世物ではないのだぞ」

「ああ、特に良いところも無いしとっとと座っていいぞ。―――じゃあユージンもやってくれ。いつも通りな・・・・・・?」

「あはは……分かったよルシア姉さん―――【身体強化】【魔力弾:待機】」

「おお! やはり何方も無詠唱だけでなく、魔法の操作もできるのか! お前は昔から才能あるな!」


 軍隊女は俺には興味がないと言う風におざなりな態度を取ると、直ぐにユージンにやらせ、べた褒めする。

 明らかに気を引きたいようにしか見えないのは俺だけだろうか?


 俺がぐるっと周りを見渡すと、面白くなさそうな―――何処か呆れを孕んだ瞳で主人公たちのやり取りを見ている奴がいた。

 ソイツの名前は……確かルドだった気がする。

 生まれは伯爵家で、魔法の才が結構あるとかゲームで言われていたが、所詮背景モブである。

 しかし珍しく俺を見下すことなどせず、こまめに挨拶とかしてくれる良い奴だ。

 俺とルドはお互いに目が合うと―――


(お前……何か可哀想だな)

(ああ。彼奴等完全に俺を踏み台にしやがった)

(……今度一緒に魔法の修練でもしような。ついでに何か奢ってやるよ)

(……ああ感謝する……)


 ―――そんなアイコンタクトで会話を成立させ、お互いに頷き合う。

 ……案外、この世界に来て初めて話しが合うかもしれない。

 

 俺はもしかしたら友達が出来るのでは? と少しワクワクしながら茶番の様な授業を聞き流した。


 因みに途中で五月蝿くなたりすぎたのでユージンの魔法を強制解除させた。

 その時の困惑ぶりに俺達2人が大爆笑したのは言うまでもないだろう。

 そして放課後にはちゃんと一緒に修練した。

 






 ―――ルド・アサシン。

 後にジンの最強の懐刀と呼ばれ、誰からも恐れられる最強の暗殺者になる者。

 今回がそんな2人の最初の出会いだった。



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 今回の話はこのキャラを出すためだけの話でした。


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