第20話 学園入学ですよ

 ―――1週間後―――


 1週間前の入学試験で、俺は無事模擬戦に負けたことになり、魔力測定もやり直して平均より少し上の4000位にし直した。

 それから3日程で合格通知が来て、それと同日に制服や教材などの学園に必要な物が送られてきた。


 そして今日。

 

 遂に【ブリリアント・プルーフ】のメインストーリーの開始である―――学園入学の日がやって来た。 


「ジン様、用意は出来て……いらっしゃいますね」

「ああ、楽しみ過ぎて寝られなくてな」


 メアが宿の俺の部屋に入ってきて、俺の姿を見え、珍しそうに言った。


 まぁ本当はこれからが心配すぎて寝られなかっただけだが、それを言ってはメアに余計な心配をかけさせることになるので黙っておく。


「どうだメア? 俺の制服姿は?」

「大変似合っていると思いますよ。噂がなければさぞかしおモテになったでしょうね」

「噂がなければね……まぁ俺はメアさえ居ればいい・・・・・・・・し、そもそも学園の女子など微塵も興味がないのだが……」


 俺は何時いつまでもメア一筋だからな!

 メア最高! メアしか勝たん!!


「そ、そうですか……」

「おう! ……ってどうしたんだメア? 顔を赤くして……もしかして何か俺恥ずかしいこと言った?」


 正直全く身に覚えがないのだが……メアが顔を赤くするくらいだし、相当恥ずかしい事を言ったんだろうな。


「いえ……何でも無いです」

「ならその大変可愛らしいお顔は何なのでしょうか?」


 メアはほんの少し頬を膨らまして可愛く膨れている。

 最近は結構感情が表に出てきているので、様々な顔が見られて嬉しいのだが……


 え、なに、あの天使の様な表情。

 いや可愛すぎでは? 

 何時もクールな美人がやったら、ギャップ萌え効果も相まってめちゃくちゃキュンキュンするんだけど。

 やっぱりジンに生まれてきて良かったああああああ!!


 俺は心の中で狂喜乱舞する。

 流石に表に出したらメアに引かれそうで怖いからな。

 

「かわっ!? ……本当に分からないのですか?」


 今度は少しジト目で訊いてくるメア。

 これもこれでめため―――(割愛)。


 だが、俺には特に心当たりもないので素直に首を縦に振ると、メアは更に顔を赤くして俺ですら聞こえない小さな声で何か呟いていた。


「(……これでは私だけが意識していたみたいではないですか……。私の方が遥かに年上なのに……大人の女性を誑かした罪をいつか必ず償わせてやります)」


 最後にメアがキッと此方を睨んだ―――全く怖くないが―――後、メアは1つため息を付いて何時ものクールな表情に戻ってしまった。

 

「……はぁもう良いです。それより―――忘れ物はありませんか? 初日から忘れ物など絶対にしてはいけませんよ」

「勿論大丈夫だって。何回も確認したし、そもそも初日に持ってくモノなんてないでしょ?」


 俺がそう言うと、メアが「はい?」と言った感じの目で俺を見てきた。

 そして恐る恐る訊いてくる。


「もしかして……知らないのですか?」

「え? 何が?」

「あの学園では、初日に序列決めの模擬戦がありますよ?」

「はい? またまた〜〜そんな事言って俺を慌てさせような……ん……て…………序列決め? ―――あああああああああああああああああ!!」


 そうだった! 

 確かに序列決めって初日だったな……そこで初めてジンと主人公が合うんだっけ。

 ……ならめちゃくちゃ今後の人生においてのターニングポイントじゃん!!


 ゲームでは、そこで主人公の人望と実力を見たジンが嫉妬して、決闘と言う名の序列戦を行う。

 これが所謂『チュートリアル』とまで呼ばれていた圧倒的イージーモードな戦闘だ。

 絶対に主人公は負けないので、数多のプレイヤーがそこで操作のコツを覚えたり、コンボの繋ぎ方を覚えていた。

 

 しかし、それはジンにとって破滅の第一歩となる決定的な瞬間だ。

 何としても回避しなければ……って普通に俺が挑まなければいい話では?

 いやでもこう言ったゲーム世界転生って、大体ストーリーを改変させないように強制力が働くからどうなるか分からないんだよな……。

 まぁ入学したての主人公ならワンパン出来る力は持っているので問題はないが……いっそのこと―――


「―――初日から休んでしまうのは……流石にダメだよな?」

「絶対に駄目ですね。余計に悪い噂が増えます。私はそんな事にはなって欲しくないですが……何かあるのですか?」


 そう言って心配そうに眉尻を下げるメア。

 その表情を見てしまえば、メアLOVEな俺には欠席などとてもじゃないが出来ない。

 

「ううん何もない。ただ力隠すの面倒だなって思っただけだから!」

「ですが、ジン様の力は人知を超えた力。他の者に知られれば何をされるか分かりません。絶対に誰にもバレないでください」


 実は既に少し後の悪役にバレてますなんて絶対に言えない。

 

「う、うん分かった。が、頑張ってみるよ……」


 俺は終始不安な気持ちを表に出さない様にしながら学園へと向かった。



———————————————————————————— 

 ジン君は基本記憶力ゴミです。

 まぁそのお陰でより努力して強くなったのですが。

 

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