第13話 森の化け物を倒す様ですよ②

 転移が終わると化け物が俺と大きく距離を取り、怒号を上げる。


「アアアアアアアアアアアアッッ!!」

「まぁまぁそんなに怒るなって。ただ俺の空間・・・・に招待しただけじゃんか」


 俺と化け物がやってきたのは、俺がつい最近時空魔法で作った俺だけの亜空間だ。

 此処では時間の概念が曖昧で、メアのいる世界の時間軸とは完全に独立しているため―――


「此処でなら周りを気にせず何時までも闘えるんだぞ」


 と言うか此処なら俺が全力を出せると言った方が良いかもな。 

 勿論全力で魔法を使いたいと言う気持ちもあるが……何よりメアの森を破壊する様な行動を取っていた化け物を簡単に死なせるわけにはいかない。

 メアに歯向かった事を後悔させてやる。

 それにコイツはストーリーに出てくるボスではない筈なので、気にせず殺せるのは素直に有り難い。


「じゃあまずは―――【業火の鎖】」


 メアの前では隠していた上級炎魔法――【業火の鎖】を無詠唱で発動。

 俺の周りに魔法陣が現れ、そこから飛び出した何十本もの炎の鎖が逃げる化け物を縛り上げて大炎上。

 蒼炎が化け物を包み込み、奴の再生速度と同等の速度で燃やしていく。

 すると、焼かれている化け物が苦しそうに呻きジタバタとどうにか逃げようとしていた。


「ア、アア……アアアアアアアアアアアア!!」

「ふむ……やはり炎は効果的と。どうやらラノベの知識もあながち間違いないようだな」


 さて……これでは多分倒せないし、この程度で死んでもらわれては困るので魔法を解除。

 先程まで燃えていたはずの炎が一瞬にして掻き消える。


 1年前までは出来なかったが、今では最上級の魔法でさえ途中でキャンセルすることも出来る様になった。

 それに少し集中すれば、相手の魔法も消去することも可能だ。

 相手の魔法を消去キャンセルする技術———【魔法消去マジックキャンセラー】は最高難易度らしいが、規格外の才能と前世の記憶のお陰で5ヶ月程必死で練習すれば何とかなった。

 因みに普通の人間は才能があっても何十年、天才と呼ばれる者でも最低数年は掛かるらしいので、如何に才能が飛び抜けているかが分かるだろう。


「さて……次は何にしようか……」

「アアア、アアアアアアアアア!!」


 俺が違う魔法を発動させようとしていると、自由になった化け物が襲いかかってきた。

 しかし俺は焦らず無詠唱で【物魔結界】を発動させて己の身を護る。


「おっと、危ない危ない」

「アアア、アアア」

「さっきは壊せたのに……とでも思ってるのか? 残念だな。さっきのは足止め用だからわざと弱くしてあるんだよ」


 結界を破壊できないことに困惑しているような化け物に、こんな事を言っても、そもそも言葉が通じるのか分からないが、時間稼ぎとしては悪くない。


 俺は試すチャンスとばかりに様々な魔法を発動させていく。


「―――【水牢】【暴風】【落雷】」


 水の牢獄が化け物を閉じ込め、その水の牢獄ごと暴風が巻き込み、その暴風に轟音を轟かせて雷が落ちる。


 しかしこれで終わりではない。

 メアの故郷を荒らした罪は重いんだ。


「さぁまだまだ行くぞ―――【極光波】【闇の棺】」


 嵐が吹き荒れ雷が落ちていたのが嘘のように消え去り、その代わりに疑似太陽の様なものが発生して、そこからまるで映画で見るような極光が極太のビームとなって化け物を完全に消し去ろうと降り注ぐ。

 そしてビームによってボロボロとなった化け物を突如地面が闇で覆われて、そこより発生した闇の手が捕まえ、いつの間にか現れていた黒色の棺に閉じ込める。


 その棺はガタガタと震えるが、一向に開く気配はない。

 それもそのはず。

 この棺はそもそも開ける蓋など無いのだから。

 開けるなら俺以上の魔力を注ぎ込まなければならない。

 しかし今の俺の魔力は半分以上無くなっているとはいえ、まだまだ有り余っている。

 そしてアイツの魔力総量よりも余裕で多いので絶対に壊さない。


「ふぅ……やっぱり思いっ切り魔法をぶっ放せるのは気持ちいいな。だけど……そろそろ終わらないと。メアに会いたくなって来た」


 俺は残りの魔力の殆どを使い、1つの魔法を発動させる。

 これまで使っていた魔法は全て既存のもの。

 しかし今回のは前世の知識がある俺にしか使えない魔法だ。


 この世界で最も威力が高い魔法は、流星群を生み出す【流星群シューティングスター】と言う魔法だが、俺にはそれが酷く弱く見えてしまった。

 見た目は派手だが、実際には見た目程の威力ではない。

 

 だから本当に威力の高い魔法を作り出す事にした。

 今まで一度も使った事がないが、一応完成している。

 コイツは丁度いい実験体と言うわけだ。


 俺の残りの9割の魔力が俺の体から吹き出す。

 

「―――それは光すらも呑み込む深淵。空の頂にて光り輝く星をも壊す破壊の象徴。その名は―――」


 吹き出た魔力がどんどんと小さく凝縮していく。


 この魔法は前世の地球で有名なとある1つの現象をイメージした。

 それは生物では絶対に逆らえない絶対的な力。



「―――【黒穴ブラックホール】」



 万物を呑み込む最強の魔法が発動した。

 しかし効果が出るのには少し時間がかかる。


 俺はまだこの魔法が不完全なのと普通に自分も危ないので、その魔法の発動と共に空間転移を発動させた。





 ジンが居なくなった事で魔法が解けたそれ・・は、自分にトドメを刺さずに逃げた人間に復讐してやると誓う。

 そして直様此処を出ようとした所で……それ・・はふと空間の中心にある黒い穴を見つけ―――


 ―――ズッ――――ッッ!!


 その瞬間にそれ・・を含めた全て――この空間さえも呑み込まれた。








 


 


 









《―――第1章ボス、寄生獣パラサイトの討伐を確認。ストーリーが変化します》


 少しずつ―――ジンの意図しない所で未来ストーリーが変化してゆく。



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