第12話 森の化け物を倒す様ですよ①(改)

「メア……アイツが何か分かる……?」

「すいませんジン様……私も見たことがありません……」


 だよなぁ……だってこの世界を多分1番知っているはずの俺が知らないんだもんなぁ。

 この森で現れるボスは狼型の魔物なのだが、目の前の魔物は……何かゾワゾワと鳥肌が立つほどの気持ち悪い姿をしていた。

 皮膚らしいものはドロドロに溶けており、骨が見え隠れしれいる。

 正直言って物凄く戦いたくない。

 だが―――


「この森を荒らすものは何であろうとも許しはしません――ッ!」


 ―――メアが短剣を構えて物凄くやる気なので、オタクとして推しを置いて逃げるわけには行かないんだよ。


「アアアアアアアアアアアア!!」


 化け物が気持ちの悪い奇声を発しながら、その体に見合わない速度で体当りしてきた。

 俺は即座に【身体強化】を発動させて素早くその場を飛び退く。

 メアは俺よりも早く動いており、既に奴の後ろに移動していた。

 

 ……やっぱりメアって強いよな。


「はああああ!!」


 メアが短剣に魔力を纏わせて見切れないほどの速度で剣を振るう。

 しかし化け物の体に触れた途端に魔力で保護していたはずの短剣が腐り落ちた。


「!?」

「うそぉ……物理攻撃無理系ですか? なら―――彼の者を切り飛ばせ―――【風刃】✕5!!」


 俺はメアが攻撃される前に風中級魔法である【風刃】を5つ飛ばす。

 不可視の刃が時速200キロで奴に飛来し、素早く体を斬り刻む。

 

「これでどう―――ッッ!? これでもダメか」


 しかし5つに分かれたはずの体が一瞬にしてくっつき、何事もなかったかの様に動き始める。

 どうやら物凄い再生能力を保有しているようだ。


「ジン様……申し訳ございません……こんな危険な戦いに巻き込んでしまって……」

「別にいいって。最近生き物に魔法を試したくて堪らなかったんだ。今回は丁度いい機会だったんだよ。だって再生能力あるから幾らでも魔法を撃てる……!!」


 俺は落ち込んでいるメアを慰める……と言うよりは俺の願望しか言っていないな。

 だがどうやら慰めるのに成功したようで、メアは少し顔を綻ばせる。

 

「……ありがとうございますジン様。ですが、見た所これと言って弱点が無いように感じるのですが……」

「―――いや倒すだけなら幾らでも方法はあるんだ」

「はい?」


 メアが驚愕に目を見開いた。

 しかし別に嘘を言っているわけではない。

 

 相手が吸血鬼の真祖とかだったらマジで詰んでいたが、コイツは再生能力があるだけ・・

 前世で数多のファンタジーラノベを読み、様々なゲームをクリアした俺からしたらこの程度の相手などどうって事無い。


 ただ―――この森はメアの大切な故郷だ。

 そんな聖域を汚すわけにはいかない!!


「―――メア、少しだけ時間を稼いでくれるか?」


 俺はメアに最悪なことをやらさないといけない自分を憎らしく思う。

 もっと俺が強ければと。

 しかしそれは今後悔した所で、俺は主人公ではなく悪役貴族なので女神が微笑んでくれる事などあり得ない。


 自分でチャンスを掴み取らないといけない!!


「……勿論出来ますが、本当に何か方法があるのですか?」


 不安そうなメアに俺は自身を込めて強く頷く。


「ああ、全く問題ない。だから30秒ほど時間稼ぎを頼む」

「……分かりました」


 何度か考える素振りをした後で頷いた。

 そして直ぐに何処から取り出したのか分からないが、いつの間にか短剣を手に握っており、再び敵に接近する。

 俺は気休めにしかならないが、一度だけメアを守れる結界を発動させた。


 それにしても……やっぱりはえぇ……じゃねぇ!!

 俺も自分のすべき事をしなければ!


 俺はついこの前一度だけ成功した魔法を発動させるために疑似魔力器官から魔力をごっそり8割ほど取り出す。

 そしてその魔力を魔法へと変換していく。


「―――それは絶対的な力―――」


 俺の詠唱(自作なので適当)と共に魔力が体内で目まぐるしく動き回る。


「―――それなしにして、世が成立すること絶対になし―――」


 この世に絶対に必要な物は何か?

 そう聞かれると沢山の物が出てくるだろう。

 

 例えば炎、水、土、空気。

 確かに全てこの世に必要な物だ。

 しかしそれはこの世があるために必要なものか?


 ―――否!!


 別にそれがなくとも、生き物が居なくとも、世界としては成立する。

 しかし絶対に必要なものが2つある。


 「―――それは時空。全ての祖となる不変の理。神をも縛る絶対の呪縛を捻じ曲げ、新たに顕現せよ―――」


 これで準備は整った。

 

「メア―――離れろ!!」

「!? ―――はい!!」


 メアがその場から一瞬にして飛び退くと同時に、俺と化け物の足元に巨大な魔法陣が現れる。


「アアアアアアアアアアアア!!」

「残念だが逃げられると思うなよ!! 行くぞ―――【自空間転移門】ッッ!!」


 さぁ……第2ラウンドと行こうじゃないか!


 その瞬間に俺と化け物の足元の魔法陣が輝き、地面に扉が現れたかと思うと、俺達は吸い込まれる様にしてこの世界から・・・・・・姿を消した。



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 今日も毎日投稿&2話投稿出来たぜ!

 ……なんか生存確認みたい。

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