第11話 精霊の森の精霊達らしいですよ
どうも、何時魔物に会うか、ストーリーに影響が出ないようにするにはどうしたら良いか……を考えながら戦々恐々している悪役貴族ことジンです。
そんな俺ですが、現在精霊の森の中に居ます。
「ねぇメアってこんな迷路みたいなのに迷わないの?」
俺は木々が生い茂り、太陽の代わりに光る植物によって照らされた道なき道を征くメアに問いかける。
始めはゲームよりも鮮明で綺麗だなぁと呑気に考えていたのだが、森が入り組み過ぎていて、僅か5分ほどで既にいま来た道を帰れない状態となってしまったのだ。
そこからはメアからはぐれまいと手を握っている。
メアは自信ありげに進むのだが、俺には迷っているようにしか見えないのは、俺の目が節穴だからなのだろうか?
「大丈夫ですよ。幾ら私が長いあいだ来ていないからと言って、精霊たちが道案内をしてくれるので問題ありません」
「え、精霊達が? でも周りには一匹も……」
俺は辺りを隈無く探してみるが、それと言って何か居るようには見えない。
結局見つけられなくて分からず唸っていると、
「魔力視を発動させてみてください。多分そうすれば見えると思います。精霊は魔力の塊みたいなものですから」
俺は言われた通りに魔力視を使ってみると―――確かに居た。
大きさは20センチ程だろうか。
キラキラな自然の魔力が物凄くギュッと凝縮されたようなものがある。
それに
「おおおお!! これが精霊か!! それにしても……凄い魔力量だな」
「そうですね。一応これでも下級の精霊ですが、魔力量はそこらの貴族子息や令嬢などでは遠く及ばないでしょう」
成程なぁ……じゃあ大方上級くらいの精霊になれば人にも見えるようになるってとこか。
是非とも精霊魔法は使って見たいけど……俺ってエルフじゃないしなぁ。
エルフじゃなくても使えるとか無いのかな?
主人公は全くの別物……あれは人間じゃないだろ。だからノーカン。
「でもやっぱり俺も精霊魔法使いたいなぁ……」
「ならいつかお教えしましょうか?」
「―――え”?」
驚きすぎて汚い声が出た。
「お、俺も使えるの?」
「勿論ですよ。そもそも精霊魔法はエルフの専売特許ではありません。精霊に愛されており、ある程度の魔力があれば誰でも使えます。見た所ジン様は非常に精霊に愛されているようですよ」
メアにそう言われて周りを見ると、下級の精霊は勿論のこと、丸い光の様で声の聞こえる中級精霊、50センチ程の妖精のような上級精霊までもが俺に注目していた。
あれぇ? 精霊って確か清い心を持っているものじゃないといけないんじゃなかったっけ?
俺って悪役貴族なんですが?
あっ、でも今の俺は
まぁ細かいことは良いとして、精霊魔法が使えるのなら、得こそしても損はしないはず。
それにメアとお揃いって言うのもポイント高い。
「へー、なら今度教えてもらおうかな」
「はい。ではそれまでにどんな精霊が良いか考えておいてくださいね」
「うん!!」
楽しみだなぁ……また今度もう一つ魔力器官作るかなぁ―――ってうわっ!?
俺が将来に向けてホクホク顔を晒していると、突然俺の周りに多種多様な精霊が集まってきた。
『ねぇねぇ僕と契約しようよ〜』
『私の方がいいよ〜』
『一緒に遊ぼ!』
中級の精霊たちは精神的に子供のようで、ふわふわとした話し方だった。
正直言ってめちゃくちゃ可愛い。
近くにいると温かいし。
『ふむ……あの少年は随分才能を持っておるの』
『そうですねぇ……とても人間とは思えない魔力量です』
『魔力器官が2つもあるのは初めて見るな』
『面白い人間だ』
上級の精霊たちからは物凄い値踏みの視線を感じたが、直ぐに好意的な視線に変わる。
どうやら俺が頑張って作った魔力器官に気付いたようで、それがお気に召したようだ。
「……メア、普通はこんなに精霊って集まらないんだよね?」
「そう……ですね。精霊は大抵が自由気ままが性分ですので」
ならそれほど俺が気になるわけか……いや俺の才能か。
流石人外級の魔法の才能だな。
俺が中級の精霊達と体を寄せ合って温めあっていると、突然中級精霊達が怯え始めた。
【魔力視】を使って下級精霊達の様子を見ると、既に逃げ出している。
『き、きた……』
『ばけものが来ちゃった……』
『どうしよう……怖いよ』
ばけもの……?
何だよ化け物って―――ッッ!?
「ジン様!!」
「分かってるよ! ―――我を守る盾となれ―――【魔防結界】」
メアと俺は咄嗟に足止め用に結界を張る。
しかし
これには少し驚きを隠せない。
おいおい……即席だったにしてもまぁまぁ魔力込めてたはずなんだけどなぁ。
しかも俺だけでなくメアも張ったはずだけど……それも壊されてるな。
と言うかこんな魔物見たこと無いんですが?
俺は目の前に現れた魔物を睨みつけながら新たな魔法を発動させるために魔力を操作し始めた。
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