第16話 悪役貴族とメイドは甘々です
「―――ジン様、決して本気を出してはいけませんよ」
学園の前で馬車を降りた俺にメアが忠告する。
ディヴァインソード領から馬車に揺られること5時間……やっと学園に到着した。
まぁこれでも速いほうだけどな。
何なら男爵家にもなると、何週間も掛けて学園に来る。
ほんとこれだけは俺が公爵家で良かったと思うよ。
「モチのロ―――勿論だ。俺の目標は全生徒の中間、平均を取って楽しい学園生活を送る事だからな」
「別に中間を取られなくても良いのですが……分かっているのならもう言いません」
俺が外向けの口調に変えて貴族らしく言うと、メアは不承不承と言った感じで引き下がった。
相変わらず心配性だなぁ……と思っていると、周りが騒ついている事に気づいた。
周りの民衆が俺をゴミを見る様な目で見ている。
「見て! あの馬車……ディヴァインソード家の家紋じゃない?」
「……ってことはあれが公爵家の落ちこぼれか……」
「どうやら家族に見放されてるらしいぞ。まぁクズらしいししょうがないけど」
「お兄さんはあんなに良い人なのにねぇ」
「こんな所に来なければ良いのに……こっちまで不幸になるわ」
「ほんとほんと。早くくたばれば良いのに」
「しかも女の敵らしいじゃない。これからは迂闊に娘を外に出さないわ」
「迷惑ったらありゃしない」
民衆が口々に俺の陰口を囁き合う。
どうやら俺の噂は王都にまで轟いている様だ。
と言うか俺の顔知ってるのかな?
幾ら俺が悪役貴族とは言え、一応貴族なのに、民衆がその貴族の前でよく悪口が言えるよね。
罰せられるとは思わないのか?
まぁ俺は罰さないけどさ。
俺が不思議に思っていると、メアがいきなり俺を馬車の中に連れ戻して手を握ってきた。
もう何度もされた行為だと分かっていても俺の心臓が体ごと跳ねるが、メアはそんな事気にしないと言った風に手を握り続けている。
「ど、どうしたんだ……?」
俺がメアの考えている事が分からず困っていると、メアが覚悟を決めた様な表情で言葉を紡ぐ。
「……今の様に正直言ってジン様の評判は決して良くありません。寧ろ最悪と言って良いでしょう」
「……ああ」
それは俺もよく分かってるよ……何もしてないのにな。
「……ですが、私は……私だけはジン様が評判や噂の様な人ではないと知っています。貴方が優しい人だと知っています」
「ほ、本当にどうしたんだ……? めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……」
多分今の俺の顔はめちゃくちゃ真っ赤になっていると思う。
だって顔が熱湯に浸かっている様に熱いもん。
しかしメアはそれでも俺の手を離さない。
それどころか更にギュッと握ってくる。
「め、メア!?」
「これだけは覚えておいて下さい。―――例え、全世界の人が貴方を非難しようと、
メアが最後にそう言うと、ゆっくり俺の手を離し、馬車と共に街の中に消えていった。
馬車が見えなくなると、俺はその場でしゃがみ込む。
周りから奇妙な目を向けられるが、そんな事を気にする事も、いつもの様に発狂して喜ぶ様な余裕も今の俺にはなかった。
俺は見てしまったのだ。
最後に俺の手を離す時、今までとは違う恥じらいの籠った笑みを浮かべ、綺麗な碧眼が少し潤み、頬だけでなく長い耳の先端まで真っ赤に染まっていた事を。
俺はそのゲームでも見たことの無い表情を思い出して呟く。
「……あれは反則だろ……」
結局試験ギリギリまで頬の熱が冷めることは無かった。
ゲームの本編となる学園―――王立魔法剣術学園の入学試験は、筆記と実技の2つだけだ。
試験会場は武と魔法の2つに分かれており、どうやら俺は主人公たちとは違うらしい。
もうこのまま一生会わなかったらいいのに。
そしたら俺も気にせず本当の楽しい学園生活を送れるかもしれない。
まぁ悪役貴族だからそんなことなど絶対にできないのだが。
因みに試験は筆記からだった。
この学園の筆記試験は、中学入学程度の学力があれば余裕で受かるため、前世での知識がある俺には、1時間のところがものの10分程度で終わってしまう。
実際―――
「えーなになに……『1本X円の下級回復ポーションを5本買った時の代金はYです。XとYの関係を式にしてください』。うわぁ……簡単すぎでしょ。皆15歳にもなって一体何の勉強してんだよ」
―――と言った様なクソ簡単な問題しか出ない。
これだと逆にどうやって間違えようか悩んでしまうほどだ。
しかし俺は、
「よし終わりだ!! 今から何か書いたらカンニングとみなすからな」
「ふぅ……疲れた……(上手く間違えるのに)」
直ぐに終わって目立ってはいけないので、ギリギリまでゆっくり解いて終わらせた。
周りが付かれたかのように伸びをしていたので、俺も真似をして伸びをする。
ほんと普通を演じるのも楽じゃない。
だが、先ほどの事を思い出せば疲れなど一瞬にして消滅してしまう。
俺がニヤニヤとしていると、試験監督が声を上げた。
「次は実技試験だ。皆外の練習場に集まるように。それでは、解散!!」
試験監督の合図と共に、生徒たちが生気を取り戻したかのように意気込みながら教室を飛び出していった。
俺も周りの生徒達に続いて教室を出る。
廊下には有望な受験生を見に来た上級生が沢山おり、品定めするような鬱陶しい目が所々から発せられていた。
まぁ俺は魔力の隠蔽を完璧にしているので、絶対にバレないと思うが。
剣はそもそも使えないしな。
練習場に俺が着いたときには、既に大勢の受験生が集まっていた。
さすが名門学園なだけあり、半分に分けられているのにざっと500人以上居る。
合計1000人くらいの中から僅か200人なので、如何に受かりにくいかが分かるだろう。
だが俺は此処で落ちればマジで殺されかねないし、仮に家と敵対してもメアを守りきれないので絶対に受かりはするが。
殆ど全員が集まったと思われる頃、軍服を来ためちゃくちゃエロボディーの女が現れた。
髪は軍服によく似合う紅色で、瞳は髪より少し濃い赤色、体は男の憧れのボン・キュッ・ボンだ。
まぁ俺はメア一筋なので心底興味ないのだが、前世のファン投票ではぶっちぎりの男子票を手に入れていた。
その時に、男子はなんて性欲に忠実なんだ……と嘆いたのは言うまでもない。
そんな人気キャラの彼女―――ルシアがマイクを片手に声を上げる。
「―――諸君!! まずこの学園に来てくれた事を嬉しく思う! しかし、受かるのは半数以下だ! 皆、心して掛かるように! では最初の受験生から―――」
あーやっぱりいるんだなあの軍隊女。
出来れば会いたくなかったんだよなぁ……勘がめちゃくちゃ強いからうっかりバレてしまうかもしれない。
ならべく近づかないようにしなければ。
何故、俺が彼女を知っているのかと言うと―――ルシアは何を隠そう、この世界のメインヒロインの1人だからである。
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……こんなに甘くするわけじゃなかったの。
何かジンが俺を勝手に動かしたの……って何言ってんだろ。
……ふぅ……書くか。
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