第2章 ストーリー開始(学園入学)

第15話 7年後ですよ(改)

「ふぅ……【思考強化】」


 俺の頭がクリアになり、物凄い速度で思考が進んでいく。

 よし、これなら使える。


「【多重発動マルチタスク】———【神魔結界】【身体強化】【武術模倣トレース】【武術人形】」


 俺はまず自分が使える中で最も強い結界を張って、周りに被害が出ない様にする。

 自分の部屋がボロボロになったらいけないからな。

 

 俺は結界の中で身体強化を発動し、その身体の力を最大限引き出せる様に、【模倣魔法】で自分の体を自動オートで動かす。

 そして自分よりもスペックが高い相手を5体創造する。

 

 するとすぐに自立して俺に襲い掛かってきた人形を俺は結界魔法を器用に使いながら身体を魔法に身を任せる。

 すると身体スペックの高い人形の攻撃を最小限の動きでいなすいなすいなす。

 更には人形の隙を見逃さずに蹴飛ばした。


 しかし相手は5体。


 後ろから木剣を持った人形が剣を振り下ろしてくるが、結界魔法で防ぐとともに、人形の顔面目掛けて腕を振り抜く。


 シュ———スパンッッ!!


 俺の拳が人形の頭を吹き飛ばし、風圧だけで結界を揺るがす。

 

 ふぅ……そろそろ体も温まってきたな。

 

「よし! まだまだ行く———」

「―――ジン様、そろそろ魔法は止めてください」


 部屋の扉が開く音と俺を呼ぶ声が聞こえてきたので、いい所だったが全ての魔法を中断して、凝った体を解すように伸びをしながら愛しのメイドの方へ向く。

 そこには、俺のメイドであるメアが呆れ顔を浮かべて立っていた。


「んー……メアー? うーん……はぁ……俺が修練始めてどれくらい経った?」

「およそ6時間です」

「大分やってるな……流石にこれ以上したらまずい?」

「勿論です。ジン様は15歳にもなって、自分で時間の管理もできないのですか?」


 的確に痛い所を突いてくるメア。

 でも俺のことを知ってくれているみたいで、こう言うやり取りも嬉しいと感じる俺はおかしいのだろうか?

 いや、おかしくない!(異常です)


「これからは学園に通わないと行けないというのに……」

「でもメアもついてきてくれるんだろ? なら大丈夫だって」


 俺が笑いながらそう言うと、メアが少しだけ口角を上げた。

 その姿は大変お美しいが……なんだろう、何か物凄く嫌な予感がする。


「なぁメア、その後のことは何も言わな―――」

「これから入学試験です」

「―――それは大事なことだねええええええ!? あれぇ!? それって今日だっけ!?」

「勿論です。なので早めに私がこうして来たのではないですか」

「ありがとうございますメア様!! 非常に感謝致します!!」


 俺は汗を洗い流すために急いで風呂に向かった。



「……相変わらず忙しなくて可愛らしいお方ですね」


 ―――メアが、何処か愛おしいものを見るような瞳を向けていることに気付かないまま。








 俺が精霊の森に行ってから7年が経過した。

 その間に変わったことと言えば……まず見た目が大分変わったな。


 今までふっくらとして可愛かった顔はシュッとして、自分で言うのも何だがめちゃくちゃイケメンになってた。

 それも前世では見たこともないような絶世の美男子に。

 身長も15歳ながら175センチを超え、まだ後10センチは伸びる気がする。

 体格も細マッチョと呼ばれる域に達しており、腹筋もバキバキだ。


 正直めちゃくちゃ嬉しい。

 前世では自分がどんな姿をしていたのかは分からないが、此処まで恵まれた容姿はしていなかっただろう。

 もうね、俺がパーティーに参加したら数多の可憐な令嬢が他の子息を無視して囲むレベル。

 まぁそのせいで全男の嫉妬を買って俺はパーティー出禁になったんだけど。


 ひどいよね?

 自分の息子より俺がモテたからって何も悪い事してないのに出禁にするなんて。

 ん? 噂はどうなのかって?


 俺の噂は、『剣術名家の落ちこぼれ』は相変わらずとして、新たに『女に守られる雑魚』『権力で令嬢を手籠めにする屑』などとモテたせいで余計増えた。

 勿論その噂を消そうと家族が動くわけないので、すっかりその噂が定着してしまったよ。


 いやぁ噂って怖いね。

 根も葉もないことでも皆が信じればそう言う印象になるんだから。

 最初から好感度マイナスって……悪役貴族は辛いですなぁ。

 まぁ俺は全く気にしないけど。


 その他に変わったことは……疑似魔力器官が更に3つ増えて、世界唯一合計5つもの魔力器官を保持していることかな。

 その全てに魔力を溜めているため、もう俺の魔力量は人間を超越しているらしい。

 これは俺が契約した精霊に言われたことだ。

 

 俺はこの7年で精霊魔法は勿論のこと、重力魔法や模倣魔法トレース、神聖魔法などなど……色々な魔法を死ぬ気で努力して習得した。

 その全てがメアとの平穏な生活を送るためだ。

 

 俺はストーリーが終わり次第、家を出て2人で生活しようと考えている。

 その旨をメアにはまだ話していないが、その内話そうと思っているので。受け入れてくれるその時まで俺は永遠にガクブル状態が続くだろう。

 

 なので、ストーリーが終わる学園卒業までに、俺1人で国1つ相手に出来るくらいの力は欲しい。

 そうすれば我が家の追手など幾らいようとボコボコに出来るし、家を潰すことも出来るしな。


 俺が結構真面目に将来のことを考えていると、メアが不思議そうな顔をしているのに気づく。


「どうした?」

「いえ、何をお考えになっているのでしょうと思っただけです。何時も『馬車は尻が痛くなるから絶対に乗りたくないんだよ!!』と、貴族らしからぬ態度でギャーギャー騒いでいますのに」

「そこまで言わなくてもいいよね絶対。それに痛いのは事実だし。……いやこれからの学園生活について考えてたんだよ」


 本当に色々と面倒だからな学園。


 これから遂に【ブリリアント・プルーフ】の本編が始まる。

 残念ながら俺の立ち位置は未だ悪役のままだ。

 まぁ全く改善しようとしなかった俺が悪いのだが。


 原作ではかっこ良すぎる容姿と圧倒的な力、更にはカリスマでクラスの生徒の心を掴んだ主人公を妬んだジンが、決闘を家の権力を使って無理やり挑ませる。

 そしてそこであっさり負けたジンはそれでも諦めず、様々な方法で主人公を抹殺しようとするが、結局最後には主人公とヒロインに一度殺される運命だ。


 ジンとの決闘はもはや絶対に負けることはないので、巷ではチュートリアルとも呼ばれていたな。

 まぁゲームでのジンは何故か顔が醜くかったので、顔が良くて自分が欲しくてやまなかった剣の才能まで持っている主人公に、物凄く嫉妬してしまうのはよく分かる。


 だが、俺はそもそも主人公にも周りにも全く興味がないので、ゲームのモブとしてひっそりと生活を送る所存である。

 一度大事を起こして追放されるのもいいが、それだとメアが悲しみそうなのと、学園を卒業しないと冒険者にすらなれないので却下した。


「既に入学できる前提で話が進んでいますが……試験には合格出来る自信があるのですか?」


 目の前に座るメアがそう聞きながらも既に結果を確信している様な笑みを浮かべいた。

 俺はそれに答えるように余裕の笑みを浮かべて断言する。


「当たり前だ。あの程度―――全く問題ない」


 問題大有りなのはその後からなんだけど。



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 ふぅ……今日も何とか乗り切ったぜ。

 ……明日分書くか。


 明日は2話投稿出来るかは不明です。

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