関所にて

わたくし

それは白馬に乗ってやってきた・・・

 それは白馬に乗ってやってきた… 

 男は所用の為にある街へ、白馬に乗ってやって来たのだ。


 ここは街へ入る城門にある関所である。

 城内に入るには関所に通行料を払わなければいけない。


 関所の役人は男に言った。

「通行料に男一人5ギルダンと馬一匹15ギルダンを払え。」

 言われた男は役人に5ギルダンだけ払うと、こう言った。

「コレは『馬』ではありません。『白馬』です。」

「関所の看板には『白馬』の料金は書いてないので、無料です。」


 役人は腹を立てて、言った。

「これはどう見ても『馬』だろう!」

「勿体ぶらないで、早く払え!」

 男は怯まずに答えた。

「これは『白い色の馬』であって、『普通の馬』ではありません!」

「市場へ行ってみなさい、『白馬』と『馬』では値段が違うでしょう!」

「『馬』に『白』と言う文字が付いた時点で違う物なのです。」

「そして『白馬』の料金は設定されていないので、無料です。」


 役人は少し考えると、部下に何事かを言い付けた。

 部下は白く大きい布とかがり火を持って来た。

 役人は男と白馬の間に布を張り、馬の後ろにかがり火を置いた。

 布には馬のシルエットが浮かび上がっていた。


 役人は問う。

「この影の形は何だ?」

 男は答える。

「この影は私の連れてきた『白馬』ではないか。」

 役人はまた問う。

「なぜ影だけで馬の色が分かるのか?」

「分かるのは馬の形だけではないのか?」

 男は面倒くさそうに答える。

「確かに布に映っているのは、『馬』の影です。」

 役人はニッコリと笑いこう言った。

「では、通行料15ギルダン払え!」

 男は渋々通行料を払い、城内へ入っていった・・・




 所用を終えて、街から出るために男は白馬と共に関所へやって来た。

 当然、関所を通過するには通行料を払わなければいけない。

 男は今度は素直に通行料を準備していた。


 関所にはさっきの役人がいた。

 役人は男を見つけると、話しかけた。

「あれから上司と相談して、通行料を改定する事にした。」

「確かに、市場で調べると白馬と馬では売値が全然違っていた。」

「やっぱり君の言う通り、『白馬』と『馬』は違う物だった。」


 通行料の看板には新しく、

「白馬20ギルダン」

 と書いてあった。


 役人は言う。

「白馬の方が馬より値段が高かったからな・・・」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

関所にて わたくし @watakushi-bun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説