第30話 異なる世界の今
ミネルバ大陸の聖エグゼリア王国、王城の一室には魔王軍残党の対策を引き受けた者たちが集まっている。そこには国王の姿もあった。
「騎士団長、時の占い師がなにやらイサールの旅立った世界で動きがあると申しておるようだが、それは誠なのか?」
「はい。幾人かの占い師が同じような予言を申しております」
騎士団長は、ひとつ咳ばらいをしてから占い師たちが話した予言の内容をまとめて報告した。
「勇者イサールが異世界へと行ったことで運命が変わろうとしているようです。どうやらそれは『ホーリー・メイデン』の覚醒の時期に関わるものだと」
「聖女様の覚醒は、魔王封印の根幹を揺るがす問題だ。それで時期に関わる、とは具体的にどうなのだ? 早まるのか、遅くなるのか?」
「それが……不安定、と言いましょうか、『不確定』のようなのです。なにかをきっかけに突如覚醒してもおかしくないと占い師は申しておりました」
「勇者イサールと聖女様が出会ったことで運命が変わろうとしているわけだな?」
「恐らくはそういうことかと。彼が異世界へ出てから占い師の聖女様に関する予言に乱れがあるのです」
「時期が早くなるのか、遠のくのか、いずれにせよイサールに託すしかないのか……」
「残された我々は、残党狩りに全力であたりましょう。そして、最悪の場合にも備えるようにしなければ」
最悪の場合、それは「魔王の復活」を意味していた。
◆◆◆
ここは次元の異なる世界、通称「レジスタンス」の本部である。彼らはかつて栄華を誇り、今は見捨てられ廃墟と化した街にある大きな倉庫の中を拠点としていた。
「コンキスタドールの情報を少し盗めたけど、どうやら
「たしか普通の高等学校でしたよね? たしかにエネルギーを奪うにはちょうどいい年齢の子が揃っているだろうけど、あえてそこに標的を絞る理由があるのかな?」
「どうやらそこの学生にひとり、爆発的なエネルギーをもった子が見つかったようでして……」
「たしかあの学校ですでに灯さんは交戦してましたよね?」
「はい、報告は上がってます。ですが、今後はより強力な部隊が送り込まれる可能性もあります。こちらからも援軍を送った方がいいのではないですか?」
「うむ、最悪の場合『金のカメオ』が動き出すことも考えられる……」
その場にいたすべての者が息をのんだ。
通称「金のカメオ」、その名の通り、首から金色のカメオブローチをぶら下げたコンキスタドールの隊員である。異常なほど戦闘力が高い男であり、レジスタンスの隊員の幾人もが彼によって倒されていた。
「やつが動き出せば、灯さんの力では到底太刀打ちできないだろう。こちらにも人員の余裕はないが、そうも言ってられんかもしれんな」
レジスタンス隊員は皆で顔を合わせて、小さく頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます