第23話 乙女の勘
高校に入学しておおよそ2か月過ぎました。今は6月、暑さと湿気が気になる季節です。学校での生活にようやく慣れ始め、授業によって教室移動が多々あるのですが、自然と指定の教室に足が向くようになってきました。
慣れていないのは、勉強のレベルくらいのものです。もっとも、これが一番の難題ではありますが……。
この頃になるとクラス内では、中のいい人同士のグループが形成されていました。授業の合間の休憩やお昼休みは自然と、誰かの席に輪ができています。私はこうした空きの時間、無意識にホメ子さんの席へ行ってそこにできる輪に加わっていました。
クラス内で人気者になっているホメ子さんの席にはいつも何人かの生徒の輪ができています。その時によって人は入れ替わりもありますが、ほぼ固定でそこにいる人もいます。
それは「イサミん」こと、滝本 勇くん。クラスの女子の話題でも頻繁に名前の上がる男子です。中性的な甘い顔立ちと抜群の運動神経、気配りができて穏やかな性格と完璧に近い人のようですが、最近になって以外にも勉強は苦手なのだと知りました。
彼はいつもホメ子さんを囲む輪の中にいました。
『ひょっとして滝本くんはホメ子さんが気になっているのかしら?』
私も年頃の女子です。色恋沙汰には興味津々。ホメ子さんと滝本くんはどちらもクラスの人気者でした。それに加えて、共に基本スペックが高すぎる人たちです。あの2人がくっつくとなれば涙を流す人こそ多くなりそうですが、血生臭い争いは起こらなそうです。
ですが、もし滝本くんがそういう気持ちで近くにいるのなら、逆にホメ子さんはどうなのでしょうか。
乙女の勘が正しければ、ホメ子さんはきっと……。
だって、どんなにすごいことがあっても「彼」だけは絶対に褒めないんですから。意識しているに決まっているわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます