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唐突だけど、この僕、七星剣 蓮こと白石純太は久保さんのことが気になっている。
だがLikeでもloveでもない。
彼女と出会ってまだ1か月と少ししか経っていない。
けど、彼女は僕の存在に普通に気がついた。
忘れもしない、あれは入学してすぐにあった中学の復習テストが返ってきたときだ。
入学してからも死んだ鯖の目をした存在感ほぼゼロの僕が注目を集ることなど到底ない。
当然、同級生の女子生徒はおろか、男子生徒にすら声をかけられることはない。
これは一種の異能とも言えるかもしれないが、先生ですらたまに欠席と勘違いしてプリントを飛ばしたりする。
別に悪い気はしない、幼い時からずっとそうだったからだ。
小学校のクラス替えでも、中学校に入学しても、塾に通っても……人の目を引くことは皆無だった、それどころか自動ドアすら滅多に反応しないのだ。
けど、いつ、どんな時でも存在感無し、は僕の代名詞となっていた。
「異能力」なんていう才能が私にはあるとすれば、この力に酔いしれて、磨きに磨きをかけ、自分が「特別」になれるのが嬉しかった。
この力は決してこちらの次元の誰かの目に留まることはないというものだ。
それはそれでいいと思っていた。誰かに認められたり、褒められたりしなくても僕はなんとも思わなかったからだ。
けど、ホントに時々だけど、誰かに見てもらいたいと思うときもあった。
僕が久保さんを知ったとき、彼女はすでにうちのクラスの中で有名だった。
かなり独特の価値観をもっているみたいで、なんでもかんでも突っ込む人だった。
生物の授業でミドリムシは植物でもあると突っ込んだエピソードはクラス中で話題になっていた。
そんな彼女が普通に話しかけてきたとき、僕は驚愕した。
「白石クンは数学が得意なんですか!? 最後の文章問題を解けた生徒は2人しかいないようですよ!」
僕は返却された数学の答案用紙を見た。最後の問題に〇が付いていた。
「べっ……別にたまたまだよ。それに点数は久保さんの方がずっと上じゃないか!その点数なら学園トップに近いんじゃないの?」
僕は80点そこそこの点数だったが、久保さんは96点、最終問題以外は全問正解だった。
自分より点数の高い人に褒められるとなんかバカにされているような気分になる。
「点数は確かに私の方が上ですが、最後のはひっかけ問題になっています、先生も言っていましたが、『数学的な思考』をきちんと持っていないと解けない問題みたいです、つまり、白石クンは数学を根本からしっかり理解されているということです!」
「しっ……知らないよ、数学とか好きじゃないし」
「でも、通学のときとか授業前にいつも勉強してますよね! それが実ってこの問題を正解したんだと思いますよ!」
普段から極限まで存在感を抑えていると言うのになぜそんな細かいところまで観察されているんだ。?
謎は深まるばかりだ。
たしかに僕は通学の電車でいつも数学を勉強している。
授業前の休み時間もだ。
これは数学が好きなんじゃなくて、一番苦手な科目だからだ。
実は80点を超えただけでも内心喜んでいた。
苦手な科目でここまでやれた自分を褒めてやりたかった。
それをまさか、知り合って間もない同級生に褒められるとは思っていなかった。
「実は私、通学の電車が白石くんと一緒なんです! いつも熱心に勉強していてすごいなぁ、と思っていたんです!」
このとき僕はとても満たされた気持ちになっていた。
初めて存在を普通に認めてくれた上に、その「過程」を認めてもらえたからだ。
それに、久保さんは私の無存在感についてまったく触れてこない。
こんな人初めてだ。
僕を見てくれている人がいるなんて……。
この瞬間、僕の心は警戒心共に何か別の感情も入り混じって久保さんにもっていかれた。
「白石クン、『ジュンクン』て呼んでもいいですか!?」
「それは断る!」
「そっかー残念。」
久保さんは、チワワのような大きなクリクリした黒目で僕を真っすぐ見つめてくる。
――なんと恐ろしい女性だ。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
ついにスピンオフからパロディ化!
ウララさんもカワイイ。
ミトコンドリアに褒めるところって……ちっちゃいとか?
作者からの返信
コメントありがとうございます!
謎に包まれたミトコンドリアエピソード……。