第5章 異世界転移の勇者イサミん
第17話 聖エグゼリア王国の勇者イサール
ここはミネルバ大陸の聖エグゼリア王国。かつて魔界から魔王軍の侵攻を受けた国だ。しかし、それは当時の勇者の力により魔王が封印されたことで終結を見た。今は平和を取り戻している。
「魔王軍の残党ですか?」
ここは聖エグゼリア王国の軍議室、国王や騎士団長、それに何人かの辺境伯の姿もあった。僕の名前はイサール、王国に仕える剣士のひとりだ。今、この会議室の中で、かつて倒された魔王軍の残党の動きが活発になっているという報告を聞いている。
「各地でそれらしい報告を多数受けております。長い歳月により、魔王の封印は弱まっております。恐らくそれを察知して、復活を目論んでいるのではないと思われます」
「魔王の復活……。それだけはなんとしても阻止しなければならん。そのためには今一度『ホーリー・メイデン』の力が必要なのではないか?」
騎士団長がそう言った。
「ホーリー・メイデン」、かつて魔王を封印した勇者にその「封印の力」を授けた聖女と言われている。伝説によると、彼女はこことは異なる世界から転移してきた女性だったという。
「実はその『ホーリー・メイデン』についてのなのですが、伝説と同様に異世界にてその力を持つ者が誕生した、とかの占い師から報告を受けております」
辺境伯のひとりが報告していた。この世界には、異世界に干渉できる特別な力を持った占い師が存在する。彼らは王国から特別な待遇を受けて囲われているのだ。
「おお、ホーリー・メイデンがいるのであれば、封印をより強固にできるではないか。早速、占い師に頼んでこちらに召喚させよう!」
国王は嬉しそうにそう言った。だが、辺境伯の口ぶりだとそう簡単な話ではない、と予想できた。
「それが、異世界にいるホーリー・メイデンは、まだその力が覚醒していないようでして、目覚めるまでにあと4年ほどかかると占い師は申しておりました」
「なんじゃと!? あと4年もかかるのか、うむむ……」
国王は先ほどの表情とは打って変わって、難しい顔になった。
「下手に覚醒前に召喚すれば魔王の残党が嗅ぎ付けて襲ってくる可能性もあります。もう4年の間は、異世界にいてもらった方が彼女も安全なのではないでしょうか?」
騎士団長がそう言った。異世界がどういった場所か知らないが、伝え聞く噂によるとこちらの世界よりもずっと安全なところらしい。
「それはそうかもしれん。しかし、その異世界での4年の間に万が一の事態が起これば、この世界の存亡にかかわることになる」
僕は話の流れから自分がどうしてここに呼ばれたのかを察した。騎士団長も最初からこういう展開になるのはわかっていたのだろう。
「失礼致します! ご提案ですが、逆にこちらからその4年の間、ホーリー・メイデンを護衛する人間を送り込んではいかがでしょうか?」
僕は手を上げて進言した。
「おお、なるほど。しかし、それならお主こそがもっとも適任ではないのか? 勇者イサールよ?」
国王がそう言った。どうやら僕は最初からその役目でここに呼ばれていたのだろう。それなら回りくどいやりとりは不要だ。そう……僕は今、この世界で「勇者」を受け継いだ者と言われている。
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