2.悪女、未来を知る。②
事故に遭い、暫く風邪だなんだと寝込んでいたらしい、ユーティディア・フィン・オデルバイドが目を覚ますと……そこで待ち受けていたのは、とても快適な病床ライフだった。
どうやらユーティディアは、小生意気な六歳の弟、テルノア・フィン・オデルバイドのいたずらで冬の湖に落とされたらしい。
これを聞いたユーティディアが、なんともまあ傍迷惑な話だ。と零すと、侍女達は苦笑いを浮かべた。
だが当のテルノアは、実の姉が生死の境をさ迷った割に一度もお見舞いに来なかった。
(謝罪のひとつぐらいは欲しかったのだけど、別に無理強いしてまで謝らせたい訳ではない。寧ろ、ノアには感謝したいぐらいだ)
眠っている間に見たあの夢。あれはきっと、私の未来の姿なのだろう。
そう考えた方が納得がいくぐらい、登場人物が知り合いばかりだった。
ユーティディアは早くもそれが己の未来だと受け入れ、その上で枕を力強く抱き締めた。
「……許すまじ、バカ王子。どう見たってあれはそっち有責の婚約破棄じゃないの、私が慰謝料を貰って円満に婚約破棄するならまだしも、なんで私有責で婚約破棄して私が国外追放されるの? あまりにも理不尽だわ……というか、そもそもあの女誰なのよ」
侍女達を下がらせ、一人でぶつぶつと虚空に向かって呟き続ける。
あまりにも状況の飲み込みが早い。そして、あまりにも婚約者への愛情というものを感じられない。
それもそのはず。何故なら彼女は──、
「というか、私の婚約者ってあんな顔だったのか」
婚約者の事を、全く覚えていないのだ。
「夢では初対面がどうとか言ってたか、あのバカ王子……この前の顔合わせした時の事か?」
そして思い返される、先日行われたばかりの婚約者同士の顔合わせの記憶────。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます