遊び

「いた!坊や!」


 坊やに出会ってもう何週間が過ぎた、川の土手で出会うことはもう日課の一つである。


 たまり釣りして、昼寝して、我ながら何という妖怪らしくない。


 とは言っても、坊やはいつも通りあの死んだ魚の目をしており、今でも生きる気が湧かないみたいだ。


「私と……え?」


 彼と勝負したいとこ、彼は全く私のことを気ついていない。


 どうやら彼は手にある何かに夢中である。


「何、この光ってる箱?」


 近ついて見ると、彼は見知らぬ箱を持っている。


「スマホだけど、知らないの?」


「うわ!?」


 私が考えてるとこで、彼は急に返事しにきた。


 最初から私のことが気ついたら返事くらいしなさいよ!


「電話だよ、知ってるかおばさん?」


「何よ! 電話くらい知ってるよ! 人と話す機械でしょう!」


 自分で使ったことはないけど、村の人がこれで人と話すとこは見たことある。


 でもそれにしたもおかしい。


「でも君は話してないじゃない」


「……ふっ!」


「何よあなた! 笑うんじゃないよ!」


「やはりババアじゃないか、スマホのこと全く知らないってよ」


「本当に失礼ねあなた……! 呪い殺すわよ!」


「悪い悪い、許して~」


「坊やめ……!」


「でも今の電話は通話だけじゃなく、いろんなことができるんだ、見せてあげるから怒らないで」


 そう言いながら、彼は電話の画面を私の方へ向く。


 ……なるほど、これは見るに今の電話はテレビみたいなことができるのね。


「へえ、まるでテレビじゃない」


「まっ、そんなとこか、でもテレビが通じるとはびっくりだ」


「あなた、一体どれ程私をバカにしたいわけ?」


 イライラしつつも、スマホに感心すぎて怒る気になれない。


 なかなか面白いじゃないか、スマホというもの……


「そうだ、これを見てみ」


 坊やがスマホを操作すると、先と違う動画が再生された。


 そこには神主みたいな服を着ている人と、でかい何かが……


「何これ!? 私にそっくりじゃないか!? それにこの忌々しお札は!!?」


 その神主らしき人は、私みたいな人に向かって、札を撃っている。


 うわ!? 見ているだけのこっちでも痛々しく感じる!?


「妖怪を祓うゲームだからね、八尺さんと札が出るのも当たり前だろ」


「げーむ? どういうこと? どうして私が?」


 すると坊やは私にげーむについて解説する。

 

 なるほど、面白いじゃないか、人間め……!


「ぽっぽぽ、ぽっぽぽ、作ったのは誰かしら、教えてくれないかな?」


「知っててどうするつもり?」


「殺しに行くに決まってるじゃない……!」


 ぽっぽぽ、よくもこの八尺様を侮辱しやがって……! このままで済むと思うなよ!


「あっそう、頑張ってね」


「何よ坊や、そのあっさりした態度? 心配しないの?」


「だってあいつ、日本にいないもん」


「はっ?」


「このゲームを作ったの、アメリカ人だから」


「……」


「……」


「もういい、今日は疲れた、やる気もない。 今度は見逃してあげるから、感謝しなさい」


 そうよ、私にはこんなくだらないことのためり使う気力なんてないわ! だから別に……


「ひよった」


「ビビってなんてない!」


「それもそうよね~ 日本の妖怪がアメリカに行けるわけないじゃん~」


「別にできないじゃないし! アメリカに行きたいなら今でも行けるし!」


「本当か~ あーやーしーいー」


「ぽっぽ・・・! それより釣りよ! たくさん練習したから! 今度は負けないよ!」


「逃げた」


「うるさい!」





「おはよう坊や」


「おっ」


「今日は……何も持ってないじゃないか」


「人間を飽きやすいものなの、なんかやる気が出ないんだ」


「あっそう」


 坊やの口癖を言いながら、私は彼の隣に座る。


「……」


「……」


「遊びを教えろ」


「はっ? 何で私が?」


「教えたくないなら別りいいけど」


そう言いながら、坊やは倒れ、私に背を向く。


「おやすみ」


「寝るなっ! 分かったよ! 教えるから!」


 別にここで寝てもいいけど、でもここで寝させたらなんか負けた気がする。


 ……何で私はこの坊やのためにドタバタしなきゃならないんだ。


 とりあえず私は立ち上がり、隣にいる石を持ち上がる。


「水切りって知ってる?」


「水切り?」


 すると、坊やは「何言ってだ」と言いたい顔で私を見つめる。


 あら~


「知らないの? あらあら~ 子供なら誰でも知ってると思うんだけど~ 坊やはバカだね~」


「う……うるさい! とうぜ古くさい遊び何だろ、僕は現代人だからわからないもん!」


「まぁまぁそんなこと言わずに~ お姉さんが教えてあげようか~」


 私は石の角度を定め、そして思い切り投げ出す。


「こんな感じで、石を投げると…… ほら、水の上で飛んでるわ」


 石は水面で五回跳ねた、今日は結構いい感じみたい。


「坊やはできるから~?」


「僕を舐めんるなし! これくらい簡単にできる!」


 坊やはそのまま石を投げたが、二回しか跳ねなっかた。


「……」


「あらあら、全然飛べないじゃないの。 下手だね、坊やは~」


「むむむ……!」


 うわ~ 気持ちいい~


 いつも私をバカにする坊やがバカにされる側に回るなんて、なかなかいい光景だ。


 ムッとする彼を見て、私のイタズラ心がどんどん沸いてくる。


「お姉さんが~ 水切りのやり方を~ 教えげあげるね~」


「えっ、嫌だよ」


「そんなこと言わずに~ ほらほら」


 私は坊やの手を取り、水切りのやり方を教える。


 それも、少し近い距離で、彼の体を包むように、きっちりと密着する。


「ちょっと!? 近い!?」


「そうでもしないと教えられないでしょう~」


「でも……でも……」


「何? 言いたいことがあればはっきり言いなさい~」


「その……胸が、当たって……」


「当たってるんだよ坊や~ なに? お姉さんのムチムチボディにドキドキしてるの?」


「な訳ないだろう! ただ……その……」


「強がりしない~ 普段の生意気の坊やが、この私にドキドキするなんて、気持ちいいね~」


「うるさい!」


「ぽっぽぽ、いいわ、やっと私が上ってことが分かったわね坊や~」


「もう離せ! やり方わかったから!」


「痛い! 足を蹴るな!」


「知らない! ベーだ!」


こうして、私たちは水切りを楽しんだ。

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