第12話 ダンジョンへ
僕とリユは、馬車に揺られていた。ヘニーを連れてダンジョンへ向かう。のだが……。
「ああ、のんびりハクスラがしたい」
ぶっちゃけ領地のことより、僕は装備品の強化や自分のビルドを考えたい。
「潜るのも、小さいダンジョンでいいんだよぉ」
ドワーフが掘るダンジョンなんて、大規模だろうし。
「ガマンせいよ、ディータ。一大事じゃ。ハクスラなんぞ、ドワーフを開放してから、いくらでも付き合ってあげますけん」
「ホント?」
「おう。ホンマよ」
僕の問いかけに、リユはめんどくさがらずにうなずく。
ワガママに、付き合わせてしまったな。
「じゃあ、がんばろうか」
「その意気じゃ」
意識を高めていたそのとき、ヘニーが馬車を止めた。
「あちらです。あの砦の向こうが、ダンジョンになっています」
「遺跡を改造したのか」
シンクレーグを根城にしていた、魔族たちの砦である。もはや遺跡と化している。
「ダンジョンのモンスターを討伐していたら、冒険者がたまたまドワーフを救い出したそうで」
現在は治療中で、まともに話せない状態だそうだ。
「拠点を作る。回復役はここで待機。ドワーフを数名救い出し次第、ここに連れてくる」
「承知」
数名の冒険者を残して、僕たちだけで探索へ向かう。
「敵襲!」「ウガアア!」
敵はオウルベアと、監視用の目玉型小悪魔だ。
「ヘニー、新スキルで目玉を潰せ。僕たちはオウルベアを」
「はい。お願い、【ファミリア】!」
ベルトにつけていた無機質な使い魔を、ヘニーが起動させる。八角形の小型使い魔が浮遊して、氷の矢を放つ。無数の目玉たちを氷の矢で破壊していった。
「ウガアア!」
「アタシらはこっちじゃ!」
自慢の剛腕で剣を振り回し、リユがオウルベアを一瞬で灰にする。
「新手だ。オークが、五〇匹は向かってくるぞ」
あとはミノタウロスが五匹くらいいる。
「物の数ではないわい。ディータ、アンタの出番じゃ」
「そうだな。【サンダーストーム】!」
集団で襲ってくる相手に、剣を構えた。刀身に、雷のエンチャントを施す。剣のリーチを伸ばすだけではなく、雷の竜巻を起こした。
感電死したオークが、他の魔物たちにぶつかっていく。帯電した状態で激突したせいで、周りも巻き込んで感電を連鎖させた。
黒焦げになったモンスターたちが、ボトボトと地面に落ちる。
「ああ、もうっ。何も落とさない!」
「ガマンせいて、ディータ。ポーションくらいは落としたろうが」
リユがなぐさめてくれるが、僕は納得できない。
「やっぱり、弱いモンスターはダメだな。奥へ突っ込むぞ」
「そういかねばのう」
肩に剣を担いで、リユが僕についてくる。
ヘニーも、後ろからパタパタと追いかけてきた。
「これも、南東の仕業かのう?」
「わからない。でも、カイムーン国境の補修が終わってないそうだよ」
北東にあるカイムーン国は、南東国との間に国境用の壁を作っている。
「カイムーンは、ソラドロア王国の自治権を巡って、南東諸国と戦闘状態にあるのは知っているよね?」
「おう。ソラドロアいうたら、お前さんに婚約破棄を突きつけた姫様のおる国じゃったのう」
そうだね……。嫌なことを思い出したよ。
「でも、まだあきらめきれていないらしい。で、実力行使に出たというわけだけど、近隣のドワーフに頼んで国境線にある壁の補修を依頼していたんだ」
「壁くらいで、戦争がなんとかなるんかのう?」
「関連はあるよ。攻めても無駄だと思わせるには、壁の修繕は有効だ。攻め込まれたときに、大変だからね」
戦いのときに、攻めることだけ考えるのは愚策だ。ちゃんと攻撃をされたときも考えねば。カイムーンの王子は、そこまで考えている。
壁は、未だにできあがっていない。このままでは、突破されてしまうのも時間の問題だろう。
何者かが、ドワーフをさらっていったと見ていい。
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