第2話私はこの街の王女だ
私は魔王だ。
全ての街を壊滅し、全世界に私だけの土地を持つことを目的とするために日々攻め続けている。
とはいえなんだったんだ。
今日の朝のあの少女は。
炎の翼を放ち、電気の衝撃波を放つだと。
ありえん。一人一つの属性しか扱えないはずだ。
私を除いてな。
私こそが唯一無二の全属性を操る者だと思っていたが、二人目が出てくるとは。
にしてもあいつすぐに逃げやがったなぁ。
私の仲間を攻撃した罰だ。
いつかやつも殺してくれるわ。
そう思いながら、ワインを飲み一息ついているとそこに私の家来が入ってくる。
「あの、魔王様。少しご報告が」
「どうした?」
その家来は少し焦っているようで私は気になった。
「一昨日壊滅したはずの街が全て直っているのを確認しました」
「そんなはずは無い。あの街の
だが、そんな私に一つの回答が導かれた。
「いや、可能性ならある。あの少女がそこにはいる」
「少女とは」
私はその家来に今日起きた出来事を全て話した。
「なるほど、そいつがその街にいる可能性があると言うことですね」
「あぁ。大群を引き連れてあの街をもう一回壊滅させてこい」
「あの、魔王様はどうされますか?」
「私は今日は休む。だから、お前に今日は全てを任せたぞ」
「ははっ」
そう言って家来は私の部屋から出て行った。
っていうか、あの少女は何者なんだ一体。
私は朝を迎えた。
周りにはあの犬が数匹で寝ていた。
やっぱり私の体質のせいかなとか思いながら身支度をする。
私はこの街を直した。
もうこの街には用はないだろう。
そう思っていると、犬たちが一斉に起きた。
何だろうと思っていると、昨日の人たちが私たちの所に来た。
そうすると、私は拘束されてしまった。
なんでか全く分からない。
私を拘束したことに犬たち吠えたが、しっしっと追い払われてしまう。
「なんでこの犬がここにいるんだよ」
そんなことを愚痴りながら、私の手首には拘束器具をつけられる。
「おい、歩け」
そう言いながら、私は連れて行かれてしまった。
その拘束器具には魔力を封じる力があったのか魔力を出すことが出来ない。
そうして私がたどり着いたのは昨日少年とそのお姉さんが言っていた地下壕だった。
昨日私は家を全て直したというのにまだそこには数十人残っている。
移動しているのは多分、女の人や子供だけだろう。
ここにはもう男の人の影しか無い。
「おい、お前らこいつだぞ。魔王軍の手先だ」
私は驚愕してしまう。
「どういうこと?」
そう言うと男が言う。
「お前はあれだろ。魔王の手先の
そんな馬鹿なことをするはずがない。
私は身体だけひねっていると男たちは声を出す。
「おいおい、何をしても無駄だよ。だがな、殺されるか身体を売るか選べばいいぞぉ」
そう言って高笑いをする。
そう言うと、とある男は大きな声で言う。
「いや、そんな小さな身体じゃ俺らは満足できねぇ。殺してしまえ」
そう言い出してから、男たちは「殺せ、殺せ」とコールする。
でも、私は一瞬を見逃さなかった。
私を殺すように言ったやつの腕に魔王軍の証が掘られていることが分かった。
でも、今の私にはそれをいう権利が無い。
「分かった。その代わり器具を解いてくれ。ちゃんと言うことを聞くから」
私はそう泣き叫んで懇願した。
私の右側に立っている人は鋭く舌打ちをして、器具を解いた。
私はそのままサンダーの魔力を足に込める。
そして、私を殺せと言ったやつを捕まえる。
それから腕にかかっている服の部分を切り、魔王軍の証を露わにする。
それを近くで見ていた男の人が叫んだ。
「おい、こいつが魔王軍の手先だ」
みんながその言葉を聞いた途端にざわつく。
でも、その声を黙らすように男が叫んだ。
「今更分かってなんだよ。おれは
やっぱり、そうか。
私を魔王の手先と言って、この場を混乱させその間に狼煙で魔王と合図をとっていたとは。
そして、ここにはその男の高笑いが聞こえる。
これは最強キャラならとっておきのもの。
さすがに使えるだろうと思い、やつの服を掴んで叫んだ。
「
そう言うと、私とその男だけを地上に出すことに成功した。
「ほう、それも使えるのか」
そうすると、そいつが煙を盛大に出し身に纏う。
「俺は魔王様の創った位の中でも二番目に強いんだ。あんたなんかに負ける訳ねえ」
その時の街の様子はというと。
「くっそ、なんてことをあの人に言ってしまったのだろう」
そう嘆く者もいれば。
慌てふためき、転けてしまう人や人の波に飲まれ押しつぶされてしまった人もいる。
そんな中一人の女性が叫んだ。
「私はあの方に家を直してもらった者です。彼女は私たちの家を見るなりすぐに直してくれました。私たちも彼女に恩を返すときです。私たち女性は子供たちやご老人を助けることを優先します。男の人たちで頑張れる人はこの街を守るために戦ってください。お願いします」
そう叫ぶ後ろにもうそこまで援軍が迫っている。
小鳥の群れは飛び交い、動物たちも住処に避難している。
そうして、弾丸の魔法が今まさに街の人たちに発射された。
――――――。
もう撃たれたと思ってしまった人たちが顔をあげるとそこには犬たちがいた。
デビルドッグたちが魔力で盾を創って防いだのだ。
「我らも人とともに闘いましょう」
そして、魔王軍の援軍の姿勢が揺れる。
その目の先には翼竜が何匹もいる。
「すまん、デビルドッグそして、翼竜よ。我ら人間に力を貸してくれ」
「狼煙の共鳴」
そう言って、相手は煙でできた狼になった。
でも、微かに感じた。
相手の魔力の根源。
そこを突けば、私の勝ちだ。
「無駄だ。今までだれも突破できなかったのだから。お前も無残に散れ」
そう叫んで私に襲ってくる。
「いいや、私がお前を倒す。
それで相手の風圧や煙の効果に押されながらも相手の魔力の根源に向かって長槍を打ち込む。
そこにこちらに気づいた翼竜が風を吹かせてくれる。
やはりこの体質もいいものだな。
「なぜ、こんなやつなんかに倒されなくてはならない。いいや、私が絶t」
そう言いかけた時に、私は相手の魔力の根源を突いた。
その瞬間相手の身体は光の粒子となり散っていく。
「ありがとう。翼竜のみんなぁ~」
そう言って翼竜に手を振る。
「なぜ、こんなやつにやられなくてはならないのだ。魔王様、魔王様お助けを……」
そう言って消滅した。
そうして、向こうの助太刀に向かう。
「あの、今の戦況はどう?」
そう聞くと、犬が答える。
「少々押されてしまっています。お助けください」
「わかった」
そう言って、私は雷の翼をはやして空へ飛ぶ。
「
そう言って、私は雷属性の長槍を雨のごとく敵の頭に打ち込んだ。
それで相手は倒れ、光の粒子となって消えてしまった。
「やっぱり、そうか」
「どうした?」
そう犬は聞いてくる。
「あいつら、魔王の下部になったことで魔王の呪いにかかってしまっている」
「そうなのか」
「多分、倒したら消滅する呪いに」
「そうか。精進するのみだな」
そう犬は私に言う。
それよりもまた街の復興からか。
でも、それでみんなが笑顔になればそれでいい。
「あの、すいません。この街を二度も救済してくれた方にあんなご無礼を働いてしまって」
「別にいいんですよ。誤解が解けて」
「あの、あなたさえよければなんですがこの街の王女に本当になってほしいのですが」
私は深く頷いた。
人を導くのはいいことだ。
でも、偽善の心なんて持つことはないが捨てないといけない。
これ以上の力に溺れてはいけない。
私はチート能力を省けばただの人間。
チート能力は神から授かった力だ。
それ以外の何物でもない。
「私がこの街の王女か」
「はい、その通りです」
だが、ここまできて大事なことを忘れている気がする。
そうだ。名前を名乗っていない。
「私はハルカ。みんなよろしく」
「はい。これからはよろしくお願いします。ハルカ王女」
そう言って、みんなは私に向かって崇拝するふりをする。
そして、それをみんなで笑うのだった。
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