第19話 嫌な話を聞いたら


 「そうだデバスさん」

 皆を見やすい位置に動こうとしていた彼がこちらを向く。

 「あんだい?」

 「ゾルダンさん何か言ってませんでした」

 昨日覗いたら変になってて話が通じなかった。


 「さんは要らねえ、最後まで卑怯な野郎だ」

 「同感です、でもほら家の襲撃も似た時期ですし」

 「そうか、うーん、何か取っ掛かりはないかぁ」

 「恨み言みたいな?」

 「恨み言ばっかだったぞ、とられたせいで、とか、女を入れるから、とか、散らばる意味も知らんのか、が一番長い言葉だったな。」

 「他は」

 「ひと、魔人、悪い、遅い、みたいな犯罪者が普通に言うことばっかだな」

 「分かりました有難うございます、伝声塔を見つけたら送っておきます」

 「お!、褒美出るか」

 「全員に出しますよ」

 「おっふぉ、やったね」

 そういいながらシーソー待ちの列に歩いて行った。ゴリラか。


 自分も乗るのか、おお、喜んでる喜んでるミレイヤ、ブリシア、ドーラン君三人乗せて振り回している、リリカが羨ましそうだ。


 さてそろそろおやつを作ろうかマンネリパンケーキだけどリリカも未だに飽きていない、夜食に茶わん蒸しぐらいだそうか、和食は現地で食べたくなった時のために練習した。


 伝声塔センサーに反応、いや日本語が聞こえた確かに。


 この大地は首都である町、その周りに副都市として村がありその周りに数多の集落がある、これがひと固まりで大きな国に相当する領地になる、一人の伯爵が2~3町管理し副管理に違う伯爵が五~六人いる、これらを管理する西都、大都、東都に十八人の侯爵が居て伯爵の管理をしている。

 直接管理している伯爵が住む街を都と呼ぶことがある。

 町は西都、大都、東都を中心としてエックス状に並ぶセレガは東都の東側に位置しているので伝声塔センサーを北のユーラ、南のマルイル、西の東都に置いた、ユーラと東都に大き目の声が聞こえる、これが同じ大きさに聞こえたので北西都市ではないことになり唯一大都の真北にあるコルトバ領地が怪しいことになる。


 ソーサル・レイ・コルトバ伯爵の領地で東西南を山に北を北極圏に挟まれた領土だけは一番大きな土地、えげつない名前の伯爵が居てよく覚えている家名はアジカナムだが名前がウジルノウだって初めて聞いたとき鳥肌が立った。


 声が止まったので今日はここまでかな一応最北端の村にウインドウを置いておこうなんて村だろう。


 「ちょっと遅いが、おやつ作るぞうー、手伝いたい人おいでー」


 カレー肉炒めたりエビフライ作るのが遅れたので一寸腹持たせ。


 サイカちゃん姉妹とシンシアちゃんが来た。小麦粉といてもらおう。リサがストーブの準備をしてくれる。リリカはゴリラの相手をやめて皿の準備、ガラリアさんが薪を拾って来てヤカンを火に掛けてくれる。


 マミルちゃんが目を輝かせてストーブを見ている、熱的には危ないと思ったから七輪にしたけど見えないガスがより安全にできるので変えた、煙突を立てて下にシャッター付きの吸気口を付けてガードと茶わん置きを兼ねた網を付けて屋台にも積めるようにした、火は吸気口から確認できる。


 パンテさんに生地を分けてこちらも焼き始める、ふと気になってテーブルを見るとリリカとクリームさんがキラーンという目をしてテーブルについている姉妹じゃ無いよね。


 さて皆が幸せそうに会談をしながらお茶をしている中、奴隷の話の裏付をする、話はこうだ。


 話の発端は北西都市シラジムで嵐の明けた朝、橋の橋脚に少女奴隷の遺体が引っ掛かっていた、お腹がすっぱり切れていたので調べることになった、まさかと思った身元があっさりわかる同都市の高級旅館の娘で顔見知りが何人もいた。


 西都観光に行ったはずの娘だった、当時サランラム・オレジム子爵の管轄の街で宰相ディノアが子爵の目の前で判別師に掛けた。

 思えば遺体を見た時から様子がおかしかったらしい、少女の最後は絶望一色だと判別師が告げ貴族名を繰り返しつぶやいた。

 この時に霊安室に異音が木魂し始めたが次に奴隷の扱いの基本、最後の食事を確認したところで子爵が吠えた、スキルだったのだろう付き添いや従者護衛十数人が耳を抑え、あるものは嘔吐し有る者は泡を吹いて倒れた。

 それからはまさに電光石火、鬼神のごとき進軍で件の子爵家に乗り込み男の徹底処刑をその場で行い関係した奴隷商など二十名近くを二日で斬首刑にした。

 当然これが許されるわけはないのだが既に正気を失っていたのだろう過去に成功したことのない娯楽に植えた貴族が思いつきそうな法案、唯一と言える個人による法の改変手段、気魂呪縛を上告、簡単に言えば大都経由で自信を売り飛ばす行為で否やを一度でも声に出すと白紙にされる。


 善良な貴族ほど陰湿な妬みを買い執拗な、拷問と言える処刑をされ成功した者は居なかった。


 正気を失っていたと皆は言うしかし私はそうは思わ無いと最後に子爵と会った宰上はいう。


 最後の食事を報告したときに鬼を見たと彼は言う、足の先から徐々につぶされ二時間も生き永らえた元子爵を見ながら。

 最後まで否を引き出せなかった処刑を実施した貴族はこの後破産し首を吊っている。


 サランと言う名の幸薄い彼女の最後の食事は自身の腸だった、シッカリと歯跡もあった、どのような絶望があったものか。


 以後奴隷は絶対禁止となった、時の侯爵全十九名総意の承諾である。


 これは合わない人には徹底的に合わない話だ鎮魂碑も確認した、私が今本当の子供だったらどうなっただろうか。


 後ろに視線を感じる、見るとリリカとクリームさんがこちらを伺っている雰囲気は、真逆なのに行動は似てるな。手を軽く振ってからエビの下処理を確認をする。


        ★


 ローデルさんをみなに紹介すると約束したことを忘れていたので覗いてみるとまだお風呂にいたエッチはしていない良かった。


 「ローデルさんローデルさん今大丈夫ですか?」

 「はいはい良いですよどぞー」

 「どぞーって何?」

 「話し終わったから続きを”どうぞ”って意味」

 「へ~」

 「今晩うちの家族と挨拶したいんだけどいい?」

 「いつ頃?」

 「食事を一緒にしましょう」

 「いいねー何気にゆっくり話したこと無いね」

 「もう三時間後位ですけどね」

 「OK、あ、お湯足してもらえる?」

 「はいどうぞ」

 「ありがとう、それと相談なんだが」

 「はい」

 「いやこの格好で相談は無いなあとで」

 「はいそれじゃ三時間後にお茶とパンケーキ置いときますね」

 「わ~いありがとう」

 「おい変に動くなよ」

 「はは、それじゃ後で」


 なかなかいい物をお持ちで。


 わあっリサ何時からそこに!!。

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