珊瑚と東洋のプリンセス
折り鶴手紙と人形師
十番街 石端通り
ここは世界に打ち捨てられた屑石どもの街
人通りが少なく入り組んだ通りを抜け、どん詰まりに辿り着く
蔦や植物によって隠され、ひっそりと佇む煙突付きの一軒家が見えてくる
さっぱりとした装飾扉を開けるとドアベルのカラリとした音が響く、そこには希少な人形の修復を行う人形師がひっそりと店を構えていた
さて、今日のお客様は…………
「なんだこれ?新しい魔性生物か」
パタパタと羽ばたきながら飛んでくる紙でできた折り鶴が出窓をくちばしで突いてくる。
紙の鶴に害意がないことが家の防御システムからわかり窓を開けてやると、人形師の指の先にピタリと止まった。
その様子はまるで小鳥が止まり木で休むようで、人形師はこれを鳥から変異した魔性生物ではないかと思った。
新たな神魔性を帯びた生物の発見は神性生物は教会へ魔性生物は魔女教会へ報告する義務があるが、人形師は面倒事が増えたと思い始めていると鶴がひとりでに話し始めた。
「明日の宵星、我が国の貴人が御国宝石人形師へお目通り願いたい。お忍び故内密に頼む」
野太い圧のある声でそれだけ言うと、くたりと動きを止めて鶴は床に落ちた。
「……なんだこれ」
人形師は取り合えず新しい生物ではないことだけはわかり、とりあえず人形師は安堵した。
人形師は紙を拾い上げしげしげと観察し始めた。
「届けたのはハトでもフクロウでも魔性生物でもなく紙自身か?紙は神魔性を通しやすい一般的な羊皮紙ではなく、柔らかく鮮やかな模様が描かれている紙らしい。模様に意味があるのだろうか?紙質は一般流通している釜で作る植物性の紙に近いな……これでいて神魔性扱いやすいのなら作り方を教えて欲しいものだ」
人形師はこの国にはない折り鶴型音声手紙の仕組みについて思考を巡らせていると、助手であるダイヤモンドの宝石人形が物言いたげにこちらを見ているのに人形師は気が付く。
「なんだ?」
こういうときに言語を認識できない宝石人形は扱いづらい。
人形師はダイヤモンドの宝石人形の言いたいことを思考を巡らせていると、ダイヤモンドの宝石人形は神魔性を測る卓上測量計についた日付を指差して心なしか焦った表情をしている。
「…………明日アリさんとルビーの宝石人形の定期メンテナンス日だ」
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