第3話 おやすみ期間

零の仕事が終わり合流した。

「お疲れ様。3つに候補絞ったよ!串揚げか韓国料理かイタリアン…さぁどれにする?お疲れの零が決めて。」

「えー、優柔不断なの知ってるくせに。しかも全部わたしの好きなものばかり…」

零はスマホと睨めっこしながらすごく真剣に悩んでる。悩んだ末に私達は韓国料理に決めた。

零は韓国料理好きだし、結局いつも通り韓国料理になるんだよな。私も好きだからいいんだけどね。一駅先のお店だったので、私達は美味しく食べるために歩いて行くことにした。

「じゃあ、行こうか。零は最近恋愛の方はどうなの?なんか前にマッチングアプリの人と何回かあってるって言ってたじゃない。」

「うーん、やっぱりマッチングアプリ私には合わないのかな。実際会ってみないと分からないっていうのも分かるんだけど、会ってみると会ってなんか違うなとかいろいろ見定めてしまうというか。そもそも、年収とか職業とか色々な項目みて決めちゃう自分がいけないんだろうけど、仕事終わってアプリ開くのも面倒だと思ってしまってる…。それなら、家でダラダラしながらリラックスしてたいよ。」

「そっか。職場の人でアプリやってる人の話聞いてても彼氏できたとかいろいろ聞いてたからすぐに彼氏できるものだと思ってた。」

「そんなすぐ出来たら苦労しないよー。朋花の職場の人ってどうせ看護師でしょ。看護師は引く手数多でしょーよ。それに、すぐ彼氏できるのはその人達が私よりよっぽど本気度が高いのと面倒だと思わないからよ。」

「確かに零は面倒に思いそう。私すら話聞いてるだけでそう思うもん。」

「朋花は彼氏作る気さえあればすぐに出来るって。けど、今はお休みしたいんでしょ。無理に恋愛しなくてもいいんだし、休みたい時は休んでいいと思うよ。私なんてもう2.3年お休み中だし。1人も案外楽しいしね。結婚していく友達とは向こうが忙しいから疎遠になったりしていくこともあるけど、こうやって今は朋花と沢山遊べるし。」

「そうだね。おやすみしててもいいよね。恋愛や結婚だけが全てではないし。」


そうやって話しているうちにあっという間に目的地に到着した。少し並んでいるが、15分もしないうちにお店に入ることができた。

私達はメニューと睨めっこし、食べたいものが多すぎて悩んだ。

結局、悩んだ末に辛めのスンドゥブとキンパ、チヂミを注文した。零はお酒好きなのでマッコリ、私はあまり飲まないのでアップルジュースを注文してマッコリは一口もらうことにした。料理が揃って、私達は食べながら最近の同級生事情やテレビのことや他愛のないことを沢山話した。私は話しながら時折目に入る自分のネイルされた爪を見て、「やっぱり、ネイルしてよかった。零天才!」と話の間に何度も言っていた。私にとって、思ってた以上にネイルが嬉しかったみたい。

「次は朋花の家でお泊まりね!」

「了解!楽しみにしてるね。零がくるなら料理頑張らないと!」

沢山食べて満足した私達はその場で解散した。

沢山食べたから最寄り駅までは結構あるけど、2駅分くらい歩こうかな。そう思い、イヤホンをして音楽を聴きながらまだ暑いけど、昼間より少し涼しくなった夜道を歩き出した。

やっぱり都会は便利だな。私の実家なんて地下鉄なんてなかったから、車は必須だし夜遅くにこんなにお店がやってることもなかったもんな。地元も地元でいいところは沢山あるから好きなんだけど、虫さえ出なければ星も綺麗だし好きなんだけどな。

私はもう名古屋に住んでだいぶ経つと言うのに、ナビが手放せない。二駅って音楽を聴いているとあっという間だ。そうやって考えていたうちに目的地に到着ですとナビが終わり、駅に着いた。じゃあ、電車に乗りますかとナビを閉じホームに入って行った。


今日は営業先の先生に捕まって、もう20時を回っている。いつもあの先生話し出すと長いんだよな。僕は報告書を書かないといけなかったが、この時間から会社に戻る気にもなれず明日は午前はアポもないから会社で報告書を書くことも出来るし、明日報告書を提出する旨を上司に連絡して直帰することにした。今の上司はこういうところは寛容で「あの先生に捕まったら長いもんな。帰ってしっかり休めよ。」と言ってくれた。僕は駅のホームで電車を待っている間に奈菜にメールした。

ー昨日はごめん。最近忙しくてさ。奈菜もいつも気を遣ってくれてありがたいけどもう立派な社会人なんだし、そんなに世話焼かなくても大丈夫だよ。ー

すぐに既読がつき、

ーどうせ昨日も疲れてて寝ちゃったんでしょ。奏佑はそんなこと言ったって私からしたらずっと子どもなんだよー‼︎おばさんからもちゃんと奏佑のこと頼まれてるしさ。ー

ーでも、元気ならよかった。私も無理して奏佑のこと心配してるわけではないから。やりたくてしてるだけだからやめてあげないよー‼︎ー

奈菜は頑固だから、やめないって言ったらきっとやめないんだろうな。これ以上やり取りしてても結局奈菜の強さには負けちゃうのは目に見えてるので、

ーそっか。無理してないならいいんだ。けど、奈菜もいい大人なんだし彼氏でも作って彼氏の面倒みなよ。ー

ーじゃあ、もうそろそろ僕も家でのんびりするから。お疲れ様。ー

そう送って、メールを終了した。いつもメールを終わらせたい時に最後にお疲れ様と送るのが奈菜との恒例になっているのでこれで連絡はしばらく来ないだろう。全くお母さんも心配しすぎなんだよな。ちょうどメールが終わったタイミングで電車が来た。僕はまだ少し人の多い電車の中に乗り込んだ。


その頃、奈菜はカフェでの仕事が終わり、家で夕食を作っていた。昨日奏佑にメールしたのに既読無視ってなんなのよと少しイライラしてたので、今日は奮発してA5ランクのお肉を買ってきた。奏佑は昔から私がどんなに奏佑が好きなのか気付いてくれない。周囲にはバレバレなのに、本人は私に対して鈍感で全く気付くような素振りなし。夕食作ってる時に奏佑からメールが来たが、そっけないし挙句早く彼氏作りなよって。もうなんで気づいてくれないのよ。彼氏がいないのも全部奏佑のせいだ。もう、今日はとことん食べてやる。奈菜はさらに山盛りの千切りキャベツの上にステーキを並べ、その華奢な身体のどこにこの量を収めるのか分からないが怒りに任せ食べていた。


奏佑は電車に乗ってしばらくすると席が空いてきたので、座った。あと、3駅か。スマホで今日のニュースを見ながら過ごしていると次の駅で今日公園で初めて話した彼女が電車に乗ってきた。まさか夜に会えるなんて。僕は咄嗟に「あっ!」と声を出してしまった。それに気づいた彼女も目を丸くした。彼女が僕の方に近づいて来てくれて、「こんばんは。」と声をかけてくれた。僕も挨拶を返し、丁度隣の席が空いてたので「よかったらどうぞ。」と席を勧めた。今日お昼あった時名前聞いておけばよかったと後悔してたから思いの外今会えたことが嬉しい。

「こんな偶然ってあるんですね。お仕事の帰りですか?」

「僕もびっくりしちゃいました。仕事帰りですよ。」

こうして、二人はのんびり話し始めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不透明な日々の中で 星丘あやな @ayana_uru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ