第30話:戻って来ました




「────」

 マリーズは、7年振りに宝石を握りしめ、魔女の名前を呼んだ。

 今日はジスランとの結婚式である。

 前回よりも1年遅いので、マリーズが出産した年齢と同じである。

 ジスランとコレットの間に既に肉体関係がある事は、親切なメイドが教えてくれた。

 残念な事に、妊娠はしていないようだ。


「まぁ!久しぶりね」

 クストー伯爵家のマリーズの部屋に現れたのは、あの魔女だった。

「お久しぶりです、ここまで戻って来ましたわ」

 マリーズが微笑むと、魔女も笑みを返す。

「随分と雰囲気が変わったわね」

 満足そうに言う魔女。

 それはそうだろう。

 魔女が知っているマリーズは、不幸のどん底にいた時の姿だ。



「私の心は幸せに打ち震えておりますわ」

 マリーズの口元がを描く。

「今日は結婚式ですの。魔女様には、私の代わりに初夜を迎えてもらう方を連れて来ていただきたくて」

 サラリととんでもない事を口にする。


 しかし魔女は驚いた様子もなく、笑う。

「あの魔法使いだね?」

 魔女の問いに、マリーズは頷いた。

「でも、男性なのですよね。何とかなりますか?」

 ここ数年ですっかり板に付いた仕草で、マリーズは可愛く首を傾げる。

「外見を変えるのは、私の得意魔法だよ」

 魔女は暗に、マリーズそっくりに変えられると告げる。



「子宮は?コレットの子供を臨月まで育てさせたいのです」

 マリーズの言葉に、魔女は目をぱちくりと見開いた。

「そして臨月まで育った子供をコレットのはらに戻し、出産させます」

 光の無い暗い目をして、マリーズが笑った。




 マリーズの復讐は、まず愛の無い性交の屈辱を味わわせる事。

 これはコレットは済んでいるので、次は魔法使いだった。

 次に、無理矢理子宮を広げられた痛みを、魔法使いとコレットに身をもって知って貰う事。


 魔法使いには、前回のマリーズと同じように妊娠4ヶ月まで無理矢理子宮を広げる痛みと、自分には要らないものを胎で育てさせられる屈辱を味わって貰う。

 そしてコレットには、臨月まで無理矢理子宮が広げられる痛みを味わって貰う。

 そして、出産の痛みと苦しみを、しっかりと自分で責任を持ってもらうのだ。

 良いとこ取りなど許さない。



「あら、旦那は?」

 魔女が不思議そうに首を傾げる。

 1番の元凶に、何も仕返しをしないからだろう。


「愛されていると思っていた女に、嫌われていたと知ったら、どんな気分でしょうか」

 それは確かに辛そうだ。

 しかも自分は相手を愛しており、尽くしていたなら尚更。


「アルドワン公爵家は、コレットが産む子に継いでもらいます。そして私は、白い結婚を理由に離婚します」

 なので魔法使いが妊娠中は、コレットを私の姿にしてくださいね、とマリーズは笑って魔女にお願いをした。


 おそらくそれで、マリーズとして抱かれたコレットは、今までの性交との違いを知るのだ。

 そこまでがコレットに対する愛の無い性交の屈辱、なのだろう。


 何と残酷な復讐だろうか。


 しかし、それらは全て、彼等がマリーズに行った事ばかりなのだ。



 そして最後の仕上げである、白い結婚を理由にした離婚。

 白い結婚の判定は、魔法で行われるので誤魔化しが出来ない。

 マリーズとの白い結婚が認められ離縁になった場合、ジスランは何を思うのだろう。


 マリーズは3年後の未来を思い、幸せそうに微笑む。

 それは、今日結婚する花嫁にとても相応しい、最高の笑顔だった。




────────────────

短編として読み終わりたい方は、こちらで終了です。

(ここまでが当初から考えていたお話です)


この後は、実行した時の様子やその後になるので、読後感が悪くなる可能性があります。

自衛をお願いします。


※ここから先は、カクヨムでの公開は自粛させていただきます。

年齢制限の壁が……

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愛されなかった妻の逆行復讐物語 仲村 嘉高 @y_nakamura

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