第6話:今日は何の日
マリーズはベッドへと戻り、目を閉じた。
もうすぐメイドが起こしに来るはずだからだ。
今日は何月何日だろうか。
結婚した日は解っているが、自分が死んだ日が何月何日なのかが判らないので、今日の日付が判らないのだ。
結婚して落ち着いたら呼ぶはずだったメイドは、ほぼ毎日起こしに来ていた。
結婚式の朝、笑顔で別れたのが最後になるなどとは、夢にも思わなかった。
彼女が居れば、公爵家での生活がもう少し楽だったかもしれない。
しかし、マリーズの実家のクストー伯爵家に、マリーズへの待遇がばれてしまう可能性が高くなる。
ジスランが許すはずが無かった。
そういえば、子供が生まれた後は、クストー伯爵家との関係はどうなったのだろうか。
家族とは、一度も連絡を取らせて貰えなかった。
それは
マリーズは、ギリッと奥歯を噛み締めた。
控えめなノックの音が、部屋に響いた。
返事が無いと想定していたのだろう。
返事を待たずに扉が開けられる。
「おはよう、レリア」
マリーズは入室して来た人物を確認し、声を掛けた。
予想通りの人物に、胸も目頭も熱くなる。
「まぁ!おはようございます。いつもこうなら楽ですのに。入園式だからと緊張して、早く起きてしまいましたの?」
マリーズ付のメイド、レリアは手に持った
「入園式……」
偶然か、魔女の
マリーズより5歳上のレリアは、何も知らずにニコニコとマリーズの世話を焼く。
マリーズは大人しく顔を洗い、夜着を脱いで清拭をし、綺麗な肌着を身に着ける。
制服はまだ着ずに、室内用ローブを羽織ってドレッサーの前に座らされる。
「髪型は、いつものハーフアップでよろしいでしょうか?」
髪を
「いえ。こう、緩く巻いてフワッとさせた可愛い感じが良いの」
今まできっちりとした服装や髪型を好んでいたマリーズの突然の申し出に、レリアは戸惑いながらも頷く。
それに対して「流行りらしいの」と誤魔化し、マリーズは微笑んだ。
ゆるふわの髪型に、頬の赤みを少し濃くした化粧。
前回の髪をキッチリとハーフアップに結い上げ、キリリと見えるように目元を強調した化粧とは正反対である。
当時は『出来る女』と言うものに憧れていたのだ。
実際に成績が良かった為に、男子生徒からは敬遠され、女子からは「お高くとまって」と嫉妬され、親しい友人が出来なかったのだ。
そこをジスランに付け込まれたのだ。
「本当の君が優しく寂しがり屋だと知っている」などと甘い言葉を囁かれ、「勉強も出来るなんて、完璧な淑女だ」などと褒められ、すっかり有頂天になった。
後で「勉強ばかりの頭でっかち」とか「つまらない女」だと、新婚初夜に全否定されるのだ。
「スタイルだけは良いからもう少し遊びたかったが、コレットとの子供の方が大切だからな」
部屋になだれ込んで来たコレットや魔術師に驚くマリーズを前に、ジスランは組み敷いたマリーズの胸を揉んだ。
足を開いてジスランを受け入れた状態のまま、魔術師に魔法を掛けられた。
その後、痛みにベッド上でのたうち回るマリーズを、三人は笑って見ていた。
この屈辱は、何度死んでも忘れないだろう。
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