10. #VRChat始めました
翌日、目が覚めた。
夜のかなり遅い時間までVRChatをしていたせいで、起きた時間はとっくに昼を過ぎていた。
スマホを開くとタイムラインであるニュースが話題になっていた。
VRChat再放送局の閉鎖――ではない。
いろんなアカウントがあるツイートを引用RTして取り上げていた。
引用元はVRChat公式のツイート。
僕は『ツイートを翻訳』を押してそのツイートを読んだ。
"Virtual DiffusionはVRChat外での互換性に乏しく投資家向けのマネタイズに苦戦したため、我々は運用コストの観点からAIモデルの運用を中止した"
Virtual Diffusionはサービスを停止していた。
その日からVRChatを自由に歩き回るあのAIはいなくなった。
Twitterを閉じて布団を出た僕は、数年ぶりにBlenderを起動した。
夜、僕はVRChatに入った。
Socialを選択して、Favoriteのリストを開く。
そして僕はそこにあるユーザーの名前を選択した。
VRChatを始めたあの日からずっとFavoriteに登録していたユーザー。
ずっと一緒に仲良くしてくれたユーザー。
なのにいつからか会わなくなってしまったユーザー。
僕はそのユーザーにjoinした。
joinすると、驚いた声が聞こえてきた。フレンドの声だ。
そしてフレンドは声を出しながら入り口まで走ってきてくれた。
「わ~~~ひさしぶり!最近ずっと会えなくてずっと心配してたよ!大丈夫?」
金髪のカリンちゃんが顔を近づけて話しかけてくる。
「ひさしぶりだね」
僕は慣れないジェスチャー操作で表情を笑顔にしながら答えた。
「あ!ねぇそのペンダントどうしたの?前は確かつけてなかったよね~?」
フレンドは僕のペンダントに気づくと、さらに近づいて覗き込んだ。
「わぁ、中に入ってる文字、綺麗なピンク色だね~!」
そう言うと、フレンドはジャンプしながら僕のアバターの周りをぐるぐると回り続ける。
「あ、ありがとう」
僕はぐるぐる回るフレンドを追いかけながら答えた。
そのうちフレンドは回転を止め、再び僕の顔を見て言った。
「ねぇねぇ、もしかしてなにか最近いいことあったの?」
フレンドと疎遠になったこの数年間、そしてこの数ヶ月間。いろんなことがあった。
良いことも悪いことも、VRChatのいろんなものが変わって、僕はずっと取り残されたと思っていた。
でもそれは僕が勝手に思い込んでいただけで、何も変わっていなかったのかもしれない。
「んーそうだなぁ、いろいろあったけど強いて言うなら……」
「なになに~教えて〜?」
僕は照れながら答えた。
「……VRChat始めました」
VRChatでタイムリープに成功して、失敗した感想 @taken_0114
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