一方その頃、勇者たちは 4

 森林へやって来た勇者は俺を含めて十二人だった。

 あの後、山田たちが全員に二人が生きていることを教えて回ったことで、女子を狙っていそうなオタクが三人増え、シューベルに強引な勧誘を受けたという女子が六人増えたのである。

 そしてそれ以外の人員は三十人の騎士と十人の魔術師、そして雑用係が三人の計四十三人で、まあまあな規模の遠征隊となっている。

 

 チラと女子に目を向ければ男連中から人気の高い女子三人組が目に入り、これから死地として恐れられる森林に入ると言うのに、明るく笑い合っている。

 こっちに来る前は委員長を務めていた渡邊香織に、チビなくせして胸はデカい山崎真美がじゃれつき、中々エロい光景が広がる。

 そんな二人をおかしそうに笑う仁尾におあずさもまたエロい体付きをしていて、三人ともセフレにしてやりたい欲求が湧き上がる。


「お前、狙うなら誰よ?」


 いつの間にか横へ来ていた新山がニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべて問いかけて来る。

 狙うなら三人だが、一人しか無理となれば、一番エロい体付きをしている渡辺だろうか。


「渡辺だな。性格良いし、エロいしよ」


「良いセンスしてんな、おい。でもライバルだから隙見て殺してやっからな」


「お前もあいつ狙ってんのかよ」

 

 まあ、渡辺は精々セフレに欲しいだけで、彼女や嫁として欲しいわけでは無い。俺が本当に狙ってるのは夏月だけだ。

 バカな会話をして笑い合っていると、オタク三人が女子三人に近付き、何やら話しかけ始めた。

 渡辺はにこやかな表情を作っているが、それ以外の二人はあまり関わりたくなさそうな雰囲気を漂わせている。

 それもそのはず、オタク共は彼女たち三人が行くと知った途端に行きたいと騒ぎ始めただけでなく、話している今も三人の体をジロジロ見ている始末だ。

 俺たちのようにある程度見た目が揃っているとか、単純に強いとか、そんな要素が無ければ嫌われて当然である。


「きっしょいな、あいつら」


「マージできめえ。デブの体臭移ったらどうすんだよ……」


 いつもなら殴りに行く新山だが、これから危険地帯に入ると言う時に喧嘩なんてしていられないことを理解しているのか、睨み付けるだけに留めた。

 と、そんなオタク共に性悪な女子三人が後ろから近付き、鼻息荒く会話する浅野の股間を蹴り上げた。

 脂肪は股間を守ってくれなかったらしく、彼はうめき声を上げながらその場に崩れ落ち、それを横で見ていた二人が顔を真っ青にする。


「きっしょ。身の程弁えたら?」


 相手が誰であろうと関係無く暴力的に振舞うことで知られる円谷萌希。

 女子とは思えないゴリラのような体格と顔面は中々恐ろしく、似たような気性をしたゴリラ女以外は近付こうともしない。

 あんなのに玉を蹴り上げられた浅野に少しだけ同情していると、話し合いをしていた騎士とシューベルたちがこちらにやって来た。


「それでは、探索を開始します。未知の魔物が現れても取り乱すことなく、訓練通り落ち着いて行動してください」


 彼が俺たちにそう呼びかけている間に騎士たちが森に向かって歩き出し、その後に俺たちや魔術師たちが付いて歩く。

 浅い場所はそれなりに冒険者が探索しに来るとだけあって道が出来上がっていて、焚火の跡やポイ捨てされたゴミなんかも時々見える。

 シューベル曰く、二人が送り込まれた位置は森の外端から歩いて四日から七日は掛かる位置だと話していた。

 ずんずんと進んで行く騎士たちの様子から道は分かっているようであるが、一週間もこんなに変わり映えしない森を歩くと思うと憂鬱だ。


「あーあ、めんどくせえ。転移で行けりゃ良いのに」


「だよなあ。まあ、木にめり込んで死ぬよりかはマシだけどよ」


 そう、俺たちがわざわざ転移で行かないのは、木や魔物などと位置が被った時に融合して死ぬ可能性があるからだ。

 森のすぐ近くまでは転移でやって来れただけマシなのかもしれないが、それでも面倒な事に変わりは無い。

 夏月が俺のペットにでもならない限り、割の合わない話だ。

 

 そんなことを考えながら無言のまま歩きにくい道を進んでいると、三匹のオークがこちらに近付いて来るのが見え、遅れて気付いた渡邊が弓を構えた。

 赤く輝く矢が放たれたが微妙に狙いがそれてすぐ近くの木に命中し、三匹の豚は小馬鹿にするような笑みを浮かべる。


「えい」


 間抜けな掛け声と共に彼女が指パッチンをすると、ドンッと音を立てて爆発四散し、豚の丸焼きが三つ出来上がった。

 山崎と仁尾がおーっと歓声を上げながら拍手をするとシューベルが呆れたような顔をして。


「あまり音を立てないで下さい。魔物が寄って来て面倒になります」


「ごめんなさい……」


 三人組がしゅんとしてしまったが彼は気にする素振りも見せずに前を向き、休憩に入ったら慰める振りしてハーレム要因にでもしてやろうとほくそ笑む。

 良いデカさの尻と胸を揉みしだき、ついでに仁尾と山崎も犯す妄想をしていると――遠くで爆発音が聞こえて来た。


「今の聞こえたか?」


「おう、聞こえたな」


 五メートル程度距離を取って隣を歩く鳴海の問いかけに返事をしながら、よくある事なのかと騎士たちを見やる。

 すると、明らかに聞き慣れない音を聞いた時の反応をしていて、あのシューベルでさえ何の音だと部下の魔術師に問いかけている。

 嫌な予感がして一番近くを歩く騎士に問いかけてみる事にした。


「今の音、ここだとよく聞くものなんすか?」


「いや、初めてです。大砲の音のようにも聞こえましたし、もしかしたら魔王軍が新兵器の実験でもやっているのかもしれないです……」


「ヤバいっすねー」


 心底面倒くさそうに言う彼に適当な返事をして持ち場に戻る。

 魔王軍が蔓延っているとは聞いていたが、それが事実なら夏月を探し出すのは難易度が高そうだ。

 しかし、魔族を蹴散らして助け出してやることができれば、ころっと落ちるに違いない。

 

 夏月をペットにしたら、次は渡邊たちと王女もセフレにしてやるか。

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