第3話 裏の彼女 影な現人神 要するに彼は病みにすくわれた

第3話


「い、嫌に決まってるだろ!?」


勇気を振り絞り、言葉を捻り出す。


だが、彼女は………


「ふふ、ウ・ソ・つ・き♪君、凄く欲しそうな顔してるよ?」


えっ────


そ、そんな訳────


「駄目だよ、自分に嘘をついちゃ。」


や、やめろ!


「自らの恋心を誤魔化す様に、他者への愛に目を背ける様に、自分にしかない欲望に嘘をつくのは悪い事だ。」


そ、それ以上は────


「ほら、美味しそうでしょう?」


ち、違う!!!


「涎、そんなに垂らしてるのに?」


う、嘘をつくな!


「自覚無しで可哀想♪だったら、尚更解放してあげなきゃね♪」


そう微笑み、動けない俺に無理矢理に臓物を押し付けてくる。


俺は抵抗できず、そのまま口の中に臓物を放り込まれた。


「────────────────ッ!?」


う、嘘だろ!?


な、何で………


「ふふ、美味しいでしょう?」


ち、違う!!!


お、美味しいなんて………


「当然だよ。君はもうなんだから。」


て、手遅れ?


「そうだよ。だって、君は愛する家族の心臓を食べたんだろう?」


えっ、何でそれを………


「識ってるからさ。」


す、ストーカー?


「失礼だね、君!!まぁ、良いよ。でね、君は家族の心臓を味わった。飲み込み、噛み砕いて味わったのさ。それなのに………」


い、嫌だ。


そ、それ以上言わないでくれ!!!!


「何で君、?」


────あれ?


────確かにそうだ。


「普通の人なら、そんなのトラウマ物だよ?何処ぞの団体みたいに菜食主義になるか、自縛自罰的になって自殺か引きこもりだよ?」


何もかもその通りだ。


彼女の言う事には筋が通っている様に感じてしまう。


先程まで、あれ程聞きたくなかった彼女の言葉が、だ。


「それなのに君は何で生きてるの?何で君はその罪を感じてないの?」


いや、悪い事をしたとは思ってる。


でも、考えてみれば罪悪感は薄い気がする。


あれだ、明日は学校があるのに、何か夜更かししてしまった感じだ。


何でだろう?


「うんうん、これでやっとだ。」


ありがとう、と言うべきなのか?


まぁ、どうやら居るべき場所に立てた様だ。


「感謝は必要ないよ。自覚無き可哀想な子を救うのも、私の仕事さ。」


変な仕事もある物だ。


でも、良い気分だ。


まるで、楽しみにしていたクリスマスプレゼントを貰った時と同じだ。


「ありがとうございます、えっと、そういえば名前を………」


よくよく思い返せば、彼女は初対面だ。


しかも、何か惨殺現場の犯人(多分)だ。


でも、何かもう通報云々はどうでもよくなってるしな………


「私?私は裏表うらおもて あか、この世界じゃそう呼ばれてる。」

「裏表さんですね、本当にありがとうございます。」

「どういたしまして。」


しかし、『この世界じゃ』とか、メンヘラ電波さんなのかな?


☆☆☆☆☆


「さり気なく毒吐くわね。誰がメンヘラ電波さんよ。」


そう呟きながら、私の前から去っていく彼を見送る。


久々の逸材だったんだけど………


「質の悪い女に唾付けられてるのが本当に残念だよ。」


私の足元に倒れてる彼は先程、ちゃんと自らの純愛を解放して、彼女と幸せになったばかりだから、手間が省けたと思ったのに………


「────やっぱり、一番怖いのは人間だよね。いや、というべきかな?」


あのクソ女がそうだった様に………


「せいぜい頑張ってね、少年。」


多分、これから色々あるだろうけど、君は君の在り方を貫けば良い。


その先に、君だけの幸せが待っているだろうから。


「さて、じゃあ私は帰ろうっと。」


私の愛しいの元にね。


続く

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