第2話 通り魔な女

第2話


弟と妹の心臓をよく噛んで食べる事を強制され、それを見届けた女は嬉しそうに微笑んでいた。


「良い子、良い子。美味しかった?」

「う、うぅ………」

「良かった、泣くほど美味しかったんだね♪でも、おかわりはないんだよね………」


少し残念そうにしながら、俺の頬を撫でてくる彼女。


そして、全身が寒気に襲われる位に怖く、普通の状況なら見惚れてしまう位に美しい顔でこう言ってきた。


「また会えると良いね、可愛い貴方♪今度会えたなら、また美味しい物をいっぱい食べようね♪」


☆☆☆☆☆


その後の事は覚えていない。


色々あった気がする。


いや、実際に色々あったのだと思う。


でも、あの時、あの場所で起きた事が衝撃的過ぎて、殆どの出来事が記憶の彼方へ飛んでいった。


簡潔に纏めると、俺は父子家庭の一人っ子となったという事実が残るだけだ。


「────彼女は今何処で何をしてるのだろうか?」


────俺は今何を考えた!?


どうして、あんな彼女の事を………


「学校、行こう………」


色々あって行けなかった学校も、今日から行く事になった。


まぁ、行ったとしても良い事はない。


だが、卒業しなければもっと碌な事にはならないだろう。


「はぁ………」


思わず、溜息が出る。


本当にどうした物か────


「嫌っ、助けて!!」


なっ、この声は!?


誰かの悲鳴?助けを求めてる?


なら、早く行かなきゃ────


☆☆☆☆☆


「此処か!!」


声が聞こえてきた方に急いで走り、やっと辿り着く。


だが、其処には………


「あ〜あ、誰か来ちゃった。」


其処には女が一人たっていた。


そして、その足元には二人の男女が血塗れで倒れていた。


俺の母さん達を殺した女とは違った意味で美しい女だった。


でも、その美しいは………


「う゛っ、おえ゛っ………」


吐き気がする位に気持ち悪い物だった。


綺麗なのに醜く、淡白な肌をしている様に見えるのにドス黒い醜悪な物に見えてしまう。


わ、訳が理解わからない!?


な、何なんだコイツは!?


あ、あの彼女よりも怖い!!??


「酷いね、君。どうして死体より、私を見て吐きそうになってるんだい?」


く、来るな!


「しかも怯えてるね。まるで、私が化け物みたいじゃあないか。」


ば、化け物だろ、お前は!?


どう見ても、お前は人間なんかじゃ────


「ふふ、私は人間さ。ただ一人を愛し続け、愛を永遠に絶やす事なく継ぎ繋げようとする純愛の奴隷さ♪」


く、狂ってる。


同じ日本語を喋ってる筈なのに、言葉を言葉として受け入れられない!!


本当にコイツは………


「失礼だね、君。でも、良いね君。」


──────────────────は?


「うんうん、君には素質があるよ。自覚が無いみたいのが残念だ。」


一体、何を言ってるんだ?


俺に何の自覚が無いと………


「君は君の純愛を持ってるね。良い、実に良いよ、最高だ♪」


クソが、宗教の狂信者みたいな事を言いやがって………


「狂信者、そう私は狂信者さ!私の愛しい人への純愛に狂い、純愛を信じ続ける者なのだから、これ程明確に私を指し示す言葉は無いよ!」


駄目だ、全てにおいて理解できない。


早く、逃げなければ。逃げて、通報────


「それはだ。凄く困る。」 

「なっ!?」


あ、足が動かない!?


い、いや、これは俺の身体全体が動かなくなってる!!??


「可哀想で見込みある君を目覚めさてあげる使命が私にはあるんだ。それをやる前に逃す訳にはいかないよ。本当なら私と同じにするんだけどね、もうみたいだからね。」


彼女はそう言いながら、何かをしているみたいだった。


逃げようとしていたので、何をしているかは全く理解わかなかった。


「ふぅ、上手く解体できたよ。」


そう良いながら、動けない俺に何かを見せてきた。


こ、コレは………


「ほら、君の好きな臓物さ。採れたて新鮮でかなり美味しい物だよ?」


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る