壊れた俺は完璧な彼女と惹かれ合う

クロスディアⅡ

第1話 血塗られた綺麗な君

第1話


いじめ。


この世界に意外とありふれた概念だ。


この世界で、必ず誰かが誰かにいじめられている。


そう、俺もそんな一人だった。


始まりはなんだったか………


ああ、確か………


「おい、やめろよ!!」

「ああ?俺達にさからうのか?」


そうそう、いじめられている奴が居て、それを助けたら、俺が今度はいじめられる番になったんだ。


色々やられたな………


「おい、パン買ってこいよ。」

「嫌に決まってるだハッ!?」

「口答えするなよ、ゴミが。」


パシリにさせられそうになった(絶対に行かなかったが)。


「おい、金はどうした?持って来いって命令しただろうが。」

「お前に渡す金なんてない。」

「はぁ?ナメた口聞いてんじゃねぇよ!!!」

「ぐっ、が、がはっ………」

「このゴミが、何で人間様の言う事を聞けねぇんだよ!!」


何度も蹴られたり、殴られた。


悪知恵は働くのか、証拠が残らない様にしながら、俺を痛めつけてきた。



その度、血の味を知っていく。


多分、此処からだ。


「おい、コッチ見てるぞ………」

「しっ、関わらない様にしましょう。」


勿論、俺を助ける奴なんて居なかった。


誰もが見て見ぬふりだ。


─────俺が助けた奴もだ。


「はぁ、何を言ってるんだお前。アイツ等はお前と仲良くしてるだけと言ってたぞ。それなのに、いじめられるだと?そんな酷い事を言う奴は良い大人になれんぞ?」


先生を頼ろうとしても無駄だった。


アイツ等は猫を被って、表向きには優等生の鑑だったしな。


「はぁ、クソが────」


今日も殴られた。


その時に口の中を思い切り噛んでしまい、口の中で血が止まらない。


「美味しい………」


あれ?


今、俺────


「ただいま。」


多分、疲れてるんだ。


はぁ、早くベッドに寝転がりたい………


「あれ?ただいま。ただいま!おーい、聞こえてないの!?」


何時もなら返事が返ってくるのに、全く返ってこない。


靴もあるし、ちゃんと居る筈なんだ。


それなのに………


「母さん、何かあっ────」


扉を開いた瞬間、ツンと鼻を刺激する様な臭いを感じた。


そして、目の前には………


め、目の前には………


「か、母さん───」


目の前には惨劇が起きていた。


母さんが血塗れで倒れていた。


よく見ると、俺の弟や小さい妹もだ。


どうして、どうして───


「あれ?まだ居たんだ。」

「ひっ!?」


奥の方から声が聞こえてきた。


其処には綺麗な女の人が立っていた。


両手に刃物を持っていなければ、惚れていたかもしれない位に綺麗な人だった。


「君、この家のお兄ちゃん?」

「あ、ああ………」


俺はそう答えた、そう答えるしかなかった。


そんな俺をマジマジと見つめた彼女は、ふと考え込む様な顔をし………


「可哀想、君は損な子だね。」

「えっ………」

「本当は全員殺すつもりだったんだけどさ、君に免じて止めてあげるよ。」


えっ、という事は………


「良かったね、君は助かったよ。後、母子家庭じゃなかったら、君のお父さんもだ。」


やっ、やった………


俺は彼女に殺されないんだ………


は、はは、ははははははははははははは!!!!!


母さんや弟、妹が殺されたのに、俺、俺喜んじゃってるよ!!


これじゃあ、俺はあのいじめっ子達と同じ最悪な奴じゃねぇか………


「ふふ、じゃあ、運が良い君にはプレゼントだよ♪」

「えっ、もがっ!!??」


こ、コイツ、口に何を入れて!?


「ふっふっふ、採れたて新鮮な君のお母さんの心臓だよ♪ほら、た〜んとお食べ♪」

「────!!!!????」


思わず吐きそうになった。


いや、当然の反応だ。


そんなの食べれる訳………


「あれ、食べられないの?酷い子。そんな子にはお仕置きだよ♪」

「ぐっ!?」


あ、脚が、脚がぁぁぁぁぁぁ………


い、痛い。


一体、何が起きてるんだ!?


「女の子が必死に作った料理を食べない男の子なんて刺されて当然なんだよ?万死に値するんだよ?ほら、早く。早くお食べ?」

「う、うぅ………」


食べた、食べるしかなかった………


噛む気になれなかったので、一口で飲み込んだ。


吐きそうになる気持ちを必死に抑え、奥へ奥へと流し込む。


ああ、俺は母さんの、母さんの心臓を………


「ほら、次は弟と妹のだよ。今度はちゃんとよく噛んで食べてね♪」

「あ、ああ、あああああああああああ!!!!」


誰か、助けて───


続く

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